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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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最新の超稼ぎスポット!

 気合を新たにして労働に邁進する、新進気鋭の女子パーティー!

 それが私たちなのである。

 誰がなんと言おうと、私たちは若手の有望株、その筆頭なのだよ。ほかの奴らのことなんか、まったく知らんけど。


 そういう心意気とか心構え、精神的な話だからね。誰にもケチはつけられない。

 神楽坂ダンジョン第二十五階層にまたやってきた私たちは、改めてその地獄のような江戸の町を見下ろしていた。


 これまでと変わらずマグマの川はあっても、ここからはだいぶ遠くてカッパくんが襲ってくることはなさそう。でも暑いのは理不尽に思う。夏? このダンジョンって夏なの?

 逆に冬みたいな階層もあるのかな? まあどうでもいいか。


 とにかく、地獄っぽさをかもしだす針山がいくつもあるし、真っ赤な池もそこらにある。

 吊るされたり串刺しになっている骸骨くんもいっぱいいるし、骸骨同士で戦っている妙なパターンもあるっぽい。全体的にホラー感がすごいね。

 でもこの階層で一番の特徴は、なんといってもモンスターの数だよ。ハンパないわ。


「うおー、やっぱりめちゃいる。すっごいね」

「スケルトン、何匹いるんやろ」

「前回の時は何か特別な状態かと思ったけど、あれが普通なのね」


 もう、うじゃうじゃいる。お祭りだよ。

 数字だけ稼ぐなら、私の『剛弓破魔矢の指輪』から魔法の矢を撃ちまくるだけで、経験値もお金もじゃんじゃん巻き上げられそう。でもそれだと技術面で強くはなれないから、禁じ手みたいなもの。


 レベルの数字だけが高い、弱っちい奴!

 そんなことになってしまうね。上を目指す私たちには相応しくないわ。


 ダンジョン下層はもっと難易度が上がると思えば、ちゃんと数字にならない面でも強くなっておかないと、どこかでつまずく。もう絶対。だから私たちは手を抜かずにやるのだよ。


 でもまあ、あれだけいるとね。遠くからの乱射だけで、かなりザクザクぶっ倒せて気持ちよさそうではあるわ。

 ちょっとやってみたいね……あとで少しやっちゃうか。なんか今日は調子がいい気がするし。


「もはやどれだけいるのか、具体的な数はわからんな。見える範囲のモンスターだけで、ざっと数万規模ではないか?」

「銀子ちゃん、渋谷のスクランブル交差点ありますよね?」

「私はあまり行かないが、それがなんだ?」

「あの交差点は、1回の青信号で多い時には約3,000人が行きかうと聞いたことがあります。あそこの大通りの交差点を見てください。すごい数ですよねえ」


 リカちゃんが言っている場所は、遠くからでもよくわかる。広々とした道が交差する地点で、特に骸骨くんがたくさんいる場所だ。


「つまり、あそこのモンスターを倒しきるだけで、数千規模の討伐報酬が手に入るということですか。普通に考えて正気の沙汰ではありませんね」

「あれだけ倒すのはひと苦労どころじゃねえ。棒立ちのモンスターが相手でも、とても体力も魔力も持たねえな。だがそもそも、あそこにたどり着くのが簡単じゃねえぞ」

「わざわざあんな所にまで行く必要ないわ。作戦通り、引き寄せるわよ」


 私は突っ込んでみたい気持ちがちょっとある。余裕ができたら、お祭りに参加したいわ。

 あ、でも骸骨くんって意外と静かなんだよね。骨がぶつかってカチャカチャ音がしそうなわりには、全然そんなことないし。あれだけいっぱいいるのに、超静かと思うとやっぱ不気味だわ。


「そうですねえ、とりあえずは作戦を試してみましょうか」

「幸いこの針山の近くにモンスターは見当たらねえ。ふもとまで降りてから仕かけて、上手くいかねえなら次の手だ」


 突き出た邪魔な針の間を進んで、まずは山を下る。

 このぶっとい針が地味に怖いわ。転んだらマジでヤバそうなんだよね。しかも江戸の町まではざっと数百メートルって感じで、結構長いし。

 誰かこけたら、すぐにポーションを使うぞと心に決めた。


 あ、先頭を進む私がすっころんだ時には、沖ちゃんに助けてもらうように言っておこうかな。もうすぐに助け起こして、ささっとポーション使ってほしいわ。



 山を下りてから、町のほうに進みつつも町には入らず、適当なところで足を止めた。まだ結構、距離はあるけどこんなもんだろうね。

 常に先頭を歩く私にならって、みんなも立ち止まる。なにか意見があれば言ってくれるから、割と気楽だ。


「この辺でいいよね?」


 なにもない場所だから、隠れる場所もないけど戦いやすい。


「そうね、退路も確保できてるし問題ないと思うわ」

「ほいじゃあ、頼んだよ」

「上手く引っ張り出せるといいが……始める」


 遠くに見える骸骨くんを狙って、銀ちゃんが狙撃銃をぶっ放す。

 どでかい音が鳴り響き、これによっておびき寄せる作戦だ。銃声に反応した骸骨くんたちがぞろぞろ移動を始めたようだね。かかったわ。


 作戦は単純でわかりやすい。銀ちゃんの銃の騒音でモンスターを引き寄せるのが始まりで、この時点で上手くいかないなら次の手に出ればいいと思っていた。


「おいおい、こいつは逆に上手くいきすぎじゃねえか?」

「想定よりも多いな。葵、どうする?」


 ふーむ。見た感じ、こっちに来るのは100匹もいない気がする。後から後からいっぱい来る感じもないね。別に多くはないと思うけど。


「大丈夫じゃない? あのくらいなら、普通に全部倒せるよ。たぶん」

「葵ならそう言うか……梨々花はどうだ?」

「受けてみないとなんとも。でも葵ちゃんが張り切っているので、大丈夫じゃないですか?」


 そうそう、大丈夫大丈夫。まずはやってみないと。


「あれ? もしかしてこの階層の骸骨くん、結構走るの速いかも」

「もしかしなくても、本当に速いわね。リリカ、お願い」

「はい、厳しい場合には早めに言いますから」


 両手にそれぞれ大きな盾を持ったリカちゃんが、ドシンと構える。両手持ちはすごいし、まるで壁だ。

 その状態でリカちゃんはいつものスキル『不動防御』を使い、マドカがクラススキルの『残像のスポットライト』をリカちゃんに使う。これでモンスターは不動のリカちゃんを狙いやすくなったはず。


 スポットライトのスキルは、本当はマドカが自分に使うのが一番効果があるらしいけど、リカちゃんのほうがおとり役に向いているからね。


「うちは梓弓と『たしなみの結界』の維持、集中するな」

「アタシはひたすら『耐性喰い』で援護するからよ。攻撃は任せた」


 リカちゃんの鉄壁のおとりに、ツバキとまゆまゆのサポートが加われば、私たちは防御面でもかなり強い。しかも今回はそれに徹してもらうから、より盤石だと思う。

 残る私とマドカ、沖ちゃん、銀ちゃんで敵を倒す流れ。余裕でやれちゃう感じだわ。


「来るぞ!」

「銀ちゃん。余裕そうだったら、追加の骸骨くんも引っ張ってよ」

「もし余裕があればな!」


 大丈夫だと思うけどね。なんか緊迫感が出てきちゃってるけど。


 どんどこ近づく骸骨くんたちは、まもなくツバキが広げた『たしなみの結界』の領域に入る。『残像のスポットライト』に照らされたリカちゃん目指してまっしぐらだ。


 私のいまのレベルは19で、サブクラスにはあとたったひとつレベルアップすればいい。

 そのたったひとつが大変だけど、ゴールはそんなに遠くない。


 いっちょ暴れまくって、サクッとレベルアップしてやる。

 そんでもって、絶対に超絶カッコいいサブクラスをゲットだよ! これはもう私の心の中で決定事項だからね。

 よっしゃよっしゃ、いまからわくわくするわ。

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