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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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マグマの川のモンスター

 マグマの川をものすごいスピードで移動するモンスターがいる。

 水しぶきならぬ、赤く光るマグマをぶっ飛ばしながらの高速移動は、遠目で見てもちょっと迫力がすごい。


 そういやマグマってなんなん? 水とはサラサラ具合が違うよね? マグマを泳ぐって、ふざけすぎだろ。まったくもう、これだからモンスターは。


 戦いに備えつつ見守っていると、ちょっと遠くを流れる川から怪物が飛び出した。

 マグマを吹き飛ばし、煙を上げながらのご到着だよ。

 やっぱりでっかい。普通のカッパくんは人間サイズだけど、あれは倍以上ある。しかもだよ。


「骨にマグマをまとってる? なによあれ、アオイは見たことあるの?」

「いーや、あれは初めて見るわ」


 骸骨のカッパくんのでっかいバージョンかと思ったら、骨の間をマグマがゆっくりと流れているような感じに見える。マグマの体みたいだね。不思議なことに、地面に流れ落ちたりしないらしい。

 ただ、ほそっこい体に対して大きくて平べったい顔と、明らかにお皿っぽいものが頭のてっぺんにあるから、カッパくんであることは間違いないと思う。ということは弱点はお皿だよね。わかりやすいのは助かるわ。


 それにぱっと見た感じ動きがのろい。マグマの川からは、だいぶ距離を取っていた私たちのほうに歩いてくるけど、あれなら余裕で逃げられそう。倒すけど。


「明らかに普通のモンスターじゃねえな……やべえ、あんなの初めて見たぞ」

「話に聞くイレギュラーモンスターというものか。しかし、あれは葵と瑠璃にとって厄介そうだ。私からやってみよう」


 マグマの体をハンマーや刀で直接攻撃するのは嫌だからね。近づくだけで熱そうだし、お任せしたいところだよ。銀ちゃんの攻撃だけで終わってくれるならそれでいい。

 迫力のある発射音を轟かせながら、ドカンとぶっ放してくれた。銀ちゃんなら、あんなのろい的は外さない。


「……なんだ? 命中したはずだが、効いたようには見えないな」

「ギンコ、もっと撃って!」


 マドカも拳銃型の武器で撃ちながら言う。言われた銀ちゃんは、ドンッと重い音を響かせながら連続で撃つも、どうやら魔法の弾丸はマグマに呑まれてしまって、ダメージになっていないように思える。あれは一発一発が、ものすごい威力のはずなのに。


「ツバキ、人形のスキルはどう?」

「あら大きすぎて無理や。それにあの体じゃ、呪符もだめ。燃えてまう。もうちょい近づいたら、うちは弓で弱らす」


 強力な呪いのスキルは、通用する敵やら範囲やらが限られているみたい。イレギュラーモンスターが相手だと、ツバキの攻撃は通りにくいかも。その代わりに邪気を払うとかいう梓弓が立てる音で、モンスターの弱体化はできるかもね。


「そうだな。あれが近づけば、アタシの『耐性喰い』も届く。二重にやりゃあ、イレギュラーだろうが少しは効くだろ」


 のろのろと進む巨大カッパくんに好き放題できるのかと思っていたら、そんなことはなかった。かぱっと大口を開けたあれは、絶対なにかやってくる。


「あぶないよ!」


 私の警告の前には、みんな身構えていた。

 すると大口から飛ばされた真っ赤に光るものが、山なりの軌道でいくつもいくつも向かってくる。バラまくように、広がって飛んでくる。

 あんなのちょこっと当たっただけでも、大やけどするわ。


「マグマを飛ばしたのか!?」

「途切れなくきますよ!」


 連射するようにいっぱい飛ばしてくる。これはヘタに避けられないね。


「アオイ、リリカ!」

「わたしの後ろに集まってください、葵ちゃんは上を!」

「ほいよー!」


 大丈夫。こういう時にどうするかは、すでにあれこれ考えていたからね。

 みんなでリカちゃんの背後に回り、私はスキル『カチカチアーマー』を展開して上の守りを固めた。私の防御スキルは強い代わりに範囲が狭いから、大人数を守るには向かない。ぎゅっと集まってもらわないと。


 ビュンビュンとおっかない風切り音を響かせながら、いくつもの火のかたまりが頭上を通過する。

 そして重そうなマグマの激突を、巨大な盾で受け止めるリカちゃん。スキル『不動防御』のお陰で、びくともしないのが頼もしい。

 連続で当たる激しい衝撃音はちょっと怖い感じだけど、横手のほうにボコボコ落ちるマグマのほうがもっと怖い。近くに落ちたら、これやばいね。


 当然、横が危ないことはわかっているから、リカちゃんの後ろに隠れた私たちは普段使わない盾をそれぞれ次元バッグから取り出して、横手の防御を固める。マグマ弾の直撃は防げなくても、破片くらいはなんとかなる。


「クソ、あのカッパ野郎! いつまで撃ってきやがんだ!」

「このままでは、わたしの盾も長くはもちません!」


 マズいね。砲撃の雨をかいくぐって、攻撃に出ないといけないかな。


「……敵の攻撃、徐々に薄くなってます。途切れますね」

「チャンス! じゃあ行くしかないね」

「攻撃が途切れたら、全員で仕掛けるぞ。梨々花は次に備えて態勢を立て直せ」

「アタシは『耐性喰い』のついでに、あのマグマの体を冷やせねえか試してやる」

「では私もあれの体を冷やせるか、刀の力を使ってみます」


 たしかに、マグマの防御が厄介だからね。冷やして固められたらいいのかも。


「あたしとギンコは後ろから援護するわ。アオイ、攻略の糸口が見えなかったら、一度撤退するつもりでやるわよ?」

「うん、もしダメそうだったら逃げてもいいよ。まゆまゆと沖ちゃん、どうせ冷やすなら頭を重点的にね。カッパはお皿が弱点だからさ」

「皆さん、攻撃がなくなりました!」


 リカちゃんが言った瞬間に走り出す。

 最初に飛び出して突っ走る私に、カッパくんが意識を向けたのがわかる。

 マグマの体の腕が私のほうを向いた。なにかやってきそう。そこにマドカと銀ちゃんの銃撃がバシバシ当たるも、やっぱりマグマの体には通用しないらしい。なんだあれ、ずるいわ。


 向けられた腕からは、やっぱり攻撃があった。小さな光の弾だ。口から出したやつの小さいバージョンかな。ま、当たらないけどね。


 ほかのみんなに攻撃が向かわないように、カッパくんには遠回りの軌道で避けながら接近する。

 するとカッパくんに異変が起こった。みんなの攻撃のお陰だ。


 たぶん、沖ちゃんの刀が発生させた冷気の霧、まゆまゆの『耐性喰い』と『酩酊の濃霧』、ツバキの梓弓の澄んだ音、それぞれの攻撃がカッパくんに襲いかかっている。頭のお皿どころか、全身とはサービス精神がいいね。

 真っ赤に焼けて光る体が、どんどん光を失いつつある。めっちゃ効果あるじゃん!


 あれならやれるかも。

 チャンスと思ったら即座に動くのが大事。ほんの一瞬を見逃さないから私は強いのだよ。

 猛ダッシュで一気に距離を詰めて霧の中に突っ込み、頭のお皿を叩くために跳び上がった。あっつ!? 熱気がやばすぎなんだけど!

 でもドロドロマグマの状態に近づくよりは、ずっとマシだよね。


「終わりだよ」


 必殺の『キラキラハンマー』をくら――

 いつの間にか開いていたカッパくんの口、その中が真っ赤に光って輝いている。

 吐き出されたそれが向かうのは、当然だけどこの私だ。

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