進め、サブクラスへの道!
本格的にがんばっていくぞと、神楽坂ダンジョンを攻めて攻めて攻めまくる。
第二十階層からスタートした私たちは、甲府ダンジョンで特訓した成果もあって、思った以上にスムーズに進むことができた。
ただこれは普通に考えたら、決して簡単ではないと私でもわかっている。
骸骨系のモンスターは中途半端な攻撃をしても、すぐに再生してしまう厄介者だ。弱点っぽい頭か胸を確実に狙って、威力の高い攻撃で一撃で仕留めないと倒せない。
これって当然、めちゃ難易度が高い。慣れまくって、将来有望な私ならともかくね。
モンスターはほかにどんな未知の能力を持っているか知れたもんじゃないし、やっぱりかなりハードだよ。
各階層ではメンバーそれぞれの攻撃やスキルが、モンスターに通用するか確認しながら進んでいく。効果的なものもあれば、ダメなものもある。
前からそうだけど、私のスキルでも骸骨だからって理由で効かないものがある。毒攻撃とか、威嚇とかね。こういうのを活かすなら、神楽坂ダンジョンだとダメってことだよね。
それに勢いだけで先に進んでしまえば、強い新モンスターに囲まれて苦戦するかもしれない。勝てないまでも、逃げられないことだけは避けなきゃいけない。普段は割とテキトーに生きている私でも、ダンジョンの中ではちゃんとしているつもりだ。
マドカや銀ちゃんたちの真剣なアドバイスをしっかり聞き入れて、一致団結して階層攻略を進める。これぞパーティーだよね。とってもいい感じだわ。
ウルトラハードなダンジョンを、レベルの数字的に本来なら格上のモンスターをバシバシ倒しながら進む。
基本的に単体でうろつくモンスターに怖さは感じない。パーティーで戦うなら、いまのところ余裕だ。
私たち7人はそれぞれのよさがいい感じにかみ合っていると思うけど、やっぱりマドカのスキル『グランドリンクⅡ』が反則級に強い。いくつかの制限はあっても、そんなのは関係ないくらいに。
なにより、5つものスキルをパーティーメンバー全員が共有できることの強さはハンパじゃないと実感できる。これはちょっとやばいくらいだね。
必要に応じてリンクするスキルを変えられることも便利で強い。応用力がハンパないわ。さすが私のマブダチ。
まず私の『ソロダンジョン』は基本として、『武魂共鳴』もほぼ必須のスキルになっている。みんなの武具が強くなると思えば、これを発動しない手はない。戦っていれば、私たち自身と一緒に武具まで強くなる! なんじゃこりゃ! 私ったらすごい!
そしてツバキの『魔力の大源泉Ⅱ』は、体力も魔力も継続的に回復してくれる強いスキル。これのお陰で普通に探索するよりも、ずっと楽ができるし余裕も生まれる。余裕があるっていいことだからね。地味にすごいよ。
銀ちゃんの『魔力倹約』も強い。ツバキの継続回復と合わせれば、魔法を使い惜しむ必要がなくなって、魔法メインのまゆまゆとツバキが積極的に戦いに加われる。
さらにマドカの『受動効果増強』で、回復効果が強まったあげくに魔力消費の軽減まで強化される。とんでもないわ。
もう私たちは魔力の消費に関しては、気にする必要がほぼない状況になってしまった!
気になるのは精神的な疲労感くらいだろうね。
マドカと銀ちゃんは威力の高い銃を使う影響で、以前は魔力消費を常に気にする必要があった。初期の頃のマドカは特にそうだったし。
でもいまとなっては、なにも気にせずバンバン撃ちまくることができる。
遠くでもモンスターを見かけたら、銀ちゃんが撃つだけで終わらせることができてしまう。魔石の回収もリカちゃんがさくっとやってくれる。
銀ちゃんの銃だけでは、なかなか倒せないモンスターが登場するようになってからが、私たちの本番だ。骸骨くんでも防御力が高いのはそのうちに出そうな気がしている。どこまでもこのまま行けるはずはないからね。
不気味な夜の江戸っぽい町を、銀色のたくましい骸骨くんを次々と倒しながら進む。
流れるマグマの川から、たまにカッパの骸骨みたいな変なモンスターも出てくる。深い階層に行けば行くほど、骸骨のバリエーションも増えそうだわ。
いまのところは出ないけど、イレギュラーモンスターへの警戒だって忘れちゃいけない。急に出てくるからね、あいつ。
「進めば進むほど思うがよ、こいつは話に聞いた以上に不気味だな」
「ああ、まるで地獄だ」
第十七階層からの神楽坂ダンジョンは、ホラー感マシマシの影響でみんなにはかなり不評だ。私としては、モンスターの骸骨くんが戦いやすいから、そういう意味でやりやすいのだけど。
それに山賊系のサブクラスになりそうにない感じが特にいいと思っている。これはとっても大事なポイントだからね。
まったく、みんな私よりお姉さんのくせに怖がりだよね。ちょっとホラー感が強くなったくらいでさ。
「暑さも相当ですよ、ここ。ダンジョン下層に近づくほど、気温が上がっている気がします」
「マグマの川の影響はものすごいですよね。つばきちゃんと瑠璃ちゃんのお陰で、楽ができていますけど」
ツバキのスキル『たしなみの結界』は、防御結界的なものを展開できる。これは結界内部に進入した敵の動きを鈍くする効果があって、範囲を広げればかなり頼りになる強いスキル。
スキルリンクで魔力の回復と軽減が効いているお陰もあって、範囲は広めにとれるし持続もずっとさせられる。
おまけに結界は強い光や熱気をやわらげる効果があるのに、視界だって悪くはならない。ちょっとどころではなく便利すぎて、もうツバキなしではいられないわ。
そして沖ちゃんが蒼龍からもらった刀『迅雷・村雨丸』もまたすごい。こいつは少し刀を抜くだけで霧と冷気を発生させて、周囲の視界を奪いつつ温度を下げる能力がある。
刀の扱いに慣れると霧と冷気の操作が思ったようにできるらしく、いまではツバキの結界内で作用するクーラーとして、大変重宝している武器というか道具と化している。ありがたや。
過酷な環境でも意外なほど楽に進めちゃう!
モンスターにもサクッと勝てちゃう!
私たちったら、すごすぎるわ。
「順調、順調!」
「アオイ、油断しないで」
「大丈夫だって。この第二十四階層だと、私の出番はなさそうだし」
出るモンスターはちょっと強めの骸骨くんとカッパくん。こいつらに関してはもうどうとでも対処できるから、銀ちゃんが見かけ次第に倒してしまう。あれこれと試す必要はもうないし。
私の役割はみんなを引き連れて、次の階層に進むこと。
地図が読める女子の私は、前衛の戦士であることもあって常に先頭を歩く。
なにか異変があれば気づきやすいし、本当に油断はしていない。常になんでもかかってこいやの精神でいるからね。
調子こいて雑談していると、戦士としての私のセンサーに引っかかるものがあった。むむっ!
「ああーっ、言ってるそばから!」
「どうしたの?」
「もう、マドカが余計なこと言うから。変な奴、出てきちゃったじゃん」
「あたしのせい?」
「そういうもんじゃない? とにかく、ほら」
足を止めたみんなにもわかるように、左手を進行方向のやや左、流れる川のずっと上流を指差してやる。
「どこだ? アタシには全然見えねえ」
「マグマの光もあってか見えにくい。葵、なにがいる?」
私はずっとぼっちで戦ってきた経験があるからね。ちょっとの異常でもすぐにわかる。
それにイレギュラーモンスターって独特な気配があるから、わかりやすいわ。なんかすごい力を感じるんだよね。
「たぶん、でっかいカッパくんだよ。あ、潜った!」
「こっちに来るってことよね?」
頼れるハンマーを構えることで、マドカの疑問に答える。
いいね。ちょうど退屈していたところだ。
謎のカッパくん、私たちの経験値にしてくれるわ!




