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足元の秘密を教えよう!

 レベルを上げる。とてもシンプルな目標です。


 元から上級クラスを目指すためにレベルはどんどん上げたかったけど、クランを作るには設立の五条件とやらをクリアしないといけないらしい。

 拠点と資金と人数はすでにクリアできているから、残るはレベルとクラン規約。


 難しそうなクラン規約は雪乃さんにお任せだから、私としてはレベルのことだけを気にしていればいい。

 集中できるのはとってもいい環境だよ。雪乃さんとみんなのお陰だね。


「それで葵、レベル上げはいいがまた神楽坂ダンジョンか? 前に飽きたと言っていた気がするが」

「まあ特に第十七階層はね。モンスターがいっぱいで、あそこは効率がいいんだよ」


 あんなすごい稼ぎスポットは、いまのところほかにない。でも飽きた!


「もっと先の階層に進んでみない? 連携確認は甲府で十分にやったし、あの調子なら神楽坂の中層以降でもやっていけると思うわ」

「そうだね。じゃあ、第二十階層から始めてみる? あそこは特に効率よくはなさそうだから、行けるところまで行く感じで。その前にみんな装備は更新してもらうけど」


 マドカとツバキが余裕なことはわかっているけど、これからは7人で上手くやれるかが大事になる。様子を見ながら先に進むとしよう。


「神楽坂ダンジョンにこだわる理由はなにかあるんですか? たしか、このクランハウスから最も近いのは江古田ダンジョンだったはずです」

「瑠璃、江古田ダンジョンは人気がねえんだよ。あそこはモンスターが妙に強い割に、特別な旨味がねえ。中層以降は虫系のモンスターが多いしな」


 虫系モンスターは私も嫌。気持ち悪いからね。避けられるものなら、そりゃあ避けるよ。

 それに一番近いダンジョンというなら、この実はクランハウスにある。あるんだよね、これが。新入りにはまだ話していないけど、正式に仲間になって引っ越しも済んだことだし、教えるにはちょうどいい機会かも。


 事情を知るマドカ、ツバキ、雪乃さんと目が合った。同じことを思ったんだろうね。

 よし、いまが絶好のタイミングだ。言っちゃおう。


「ちょっと聞いておくれ! 実は4人には、まだ隠していたことがありまーす!」


 銀ちゃん、沖ちゃん、まゆまゆ、リカちゃんを順に見る。これ見よがしに!


「なんだよ、葵。もったいぶりやがって」

「すっごい隠された事実がありまーす! すっごいから!」

「だから、なんなんだよ」


 ふふふ、聞いて驚け。

 実際に見てもらいたいところだけど、扉が開けられないからね。あ、でも扉のところまでは行こうかな。


「カモン! こっちこっち!」


 仮のクランハウスの応接室から、真のクランハウスに移動だ。

 うきうきと歩いて、シュイーンと未来的な扉を開く。


 開放感のあるロビーを抜けて、奥の扉の前に立った。

 ここから先の扉を開くには、蒼龍のおっさんが設定したレベルや人数をクリアしないといけない。


「そういえば、この扉の向こうはまだ見ていなかったな」

「引っ越しの直後に甲府に行ったので、まだこのクランハウスのことはわかっていないことだらけですけど」

「葵ちゃん、この扉の向こうが隠していた事実ということ?」


 リカちゃんは察しがいいね。


「隠してた?」

「まゆまゆ、そういうことだよ。この扉の向こうに、すっごい秘密があるんだけど、扉は開けられないのです!」

「なんだそりゃ」


 見れば一発なんだけど、開かないものは仕方ない。


「実はね、この扉の向こうには、ダンジョンがあるんだよ! すっごくない?」

「はあ? こんなことありえねえだろ」


 みんな全然、信じていない様子だよ。まあそんなもんかな?


「皆さん、葵さんの言っていることは本当です。この扉の向こう側には、練馬ダンジョンがあります。葵さんが蒼龍から管理者を引き継ぎました」

「管理者?」

「一般には開放されない、特別に危険なダンジョンということです。現在は東京都によって、葵さんが管理者として登録されています」


 雪乃さんの言葉に、ようやくまゆまゆも冗談とは思わなくなったようだね。


「マジか。信じられねえが、雪乃がそう言うならな」

「特別に危険……入ってみたのですか?」

「まだだよ。蒼龍のおっさんから、めっちゃレベル上げて、仲間をいっぱい集めてからじゃないと挑戦すんなって言われてるからさ」

「見てみたい気持ちはあったのだけど、あの蒼龍の忠告だから。あたしたちも中には入っていないのよ」


 真剣な感じで注意されたし、あの時には入れてもらえなかった。

 その後、あれこれと意味のわからん話を聞いたり、資料をもらったりもしている。難しいこと言うなよと思っていたら、目安としては上級クラスのハンターでパーティーを組めるようになってから、挑戦を始めろということらしい。


 あまりにずっと先のことで、忘れてしまいそうだけど、それだけ危ないってことなんだろうね。


「ちなみに蒼龍のおっさんたちが現役の頃でも、全然攻略できなかったって。すごくない? やばくない?」

「あの蒼龍が? そこまで危険なダンジョンということか」

「気にはなるけど、まだ入れないからね。挑戦するのは、もっと先だよ」


 ダンジョンの中がどうなっているかは、先々のお楽しみだ。

 私はほかに知らないダンジョンがまだまだたくさんあるし、それらを楽しんでからでいい。


「わかってると思うけど、このことは秘密にしてね。絶対秘密ってわけじゃないらしいけど、ほかのハンターに知られると面倒くさそうだからさ」


 神妙な顔で4人ともうなずいてくれた。


「それで葵姉はん、結局レベル上げは神楽坂でやるん?」

「うん。とりあえず、第二十五階層を目指していこう!」


 レベルを上げて、強くなって、クランを作る。

 クランランキングに殴り込みをかけて、特典をいっぱい受けまくろう。

 受けられる恩恵は、これ以上ないほどにしゃぶりつくすぞ。

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