表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/215

さよなら芋ジャージ

 スキル『ソロダンジョン』を発動してダンジョンアタックの開始だ。

 ハンマーとブーツを装備したら、第一階層はスキップしながら陽気にスルーし、いよいよ未知の第二階層に突入した。


「いちいち階段長いなー」


 ダンジョンはどんどん地下に向かって進んでいく構造だ。

 話によれば、このダンジョンは五階層毎に地上に戻れる転送陣、要するにワープできる魔法陣があって、一度身分証をそこに登録さえしてしまえば、お手軽に行き来することができるらしい。


 そこまで行けたら、やっと駆け出しのダンジョンハンターという感じがする。

 レベル10になってクラスをゲットできたら、いっぱしのハンターかな。早くクラスもほしいねえ。


「やっと到着っと」


 事前に聞いていたように、見た感じは第一階層と全然変わり映えしない。

 ダンゴムシの代わりにネズミがいること以外は。


「え、またでっかくない?」


 資料によれば、ネズミの大きさはダンゴムシと同じくらいだったはず。

 猫サイズのダンゴムシと同じはずが、遠くに見えるネズミは中型犬くらいはありそうに思える。気のせいかな。

 立ち止まっていても始まらない。

 ちょっとした緊張感を覚えつつも、ここは景気よくやったほうがいいと思った。


 ハンマーの柄を右手に握りしめ、小走りからダッシュへ。

 足音で早々に気づかれ、ネズミのモンスターはすぐに私のほうへ振り向いた。

 走って近づく私に恐れることなく、大きなネズミも走り寄る。接触まではあっという間だ。


 足元の装備さえ固めれば大丈夫という話はなんだったのか、ネズミは大きくジャンプして私の頭へと襲いかかってきた。

 めちゃ獰猛な感じがして怖い。攻撃力が低いとか、絶対に嘘だこれ。

 びっくりはしたものの、体は動く。

 振りかぶったハンマーは、ものの見事にネズミの顔面をかち割り、光の粒子と魔石に変えてくれた。


「お、おおー。なんか私、強いかも」


 武器の強さは当然あるけど、中型犬クラスのモンスターが飛びかかってきたのを、的確にハンマーで迎撃できるかといえば、そんなに簡単じゃないと思う。動きだって速かった気がするし、そんな攻撃に完璧に対応できてしまった。

 これもダンゴムシくんを叩きまくって、ハンマーの扱いに慣れたからかも。ありがたやダンゴムシくん。


 なんにしてもネズ公が単体相手なら、負けない自信はついた。


 問題は二匹以上の時と、攻撃を受けてしまった時かな。

 芋ジャージのままの私は、ブーツ以外の防御力なんてないようなもの。

 この第二階層のお宝で、都合よく防具が出てくれないかな。


「もう少しやって慣れたら、隠し部屋に行ってみるかー」


 そうしよう。その前に、落ちていた魔石を拾い上げる。

 また透き通った魔石な気がする。第一階層のしょぼしょぼビーズよりは、ちょい大きいくらいかな。たぶんビー玉の半分の半分、それよりちょっと小さいくらい。


 小さいね。でもこれが高品質の魔石なら、300円で売れる。でっかい!

 ネズミが10匹で3,000円。これは生活レベルが一気に変わる。とはいえ、調子に乗って怪我してはつまらない。

 気を張っていこう!



 第一階層への階段付近で、ネズ公を捜して動き回り、見つけたら即滅殺。

 群れで行動していそうなイメージのネズミだけど、いまのところは複数とは戦わずに済んでいる。

 倒すたびに300円が手に入ると思えば、テンションの高まりを抑えるのが難しい。

 もうネズ公が300円に見えてしまって、まったく怖いとは思わなくなった。


「隠し部屋って、そんな遠くないんだよなー。行ってみるかな」


 もし防具が手に入るなら、いまより安全に戦える。

 なかなかレベルが上がらないし、ネズミとの戦いにも結構慣れた。

 そろそろ行ってもいいよね。もしネズミがいっぱいいたら、さっさと逃げよう。もしくはスキル『ソロダンジョン』を解除すれば、ピンチは抜けられる気がする。


 焦ることはない。

 通路の先々と左右、後ろまで常に警戒し、見かけるたびにネズミを倒していく。そうすればモンスターはしばらく消えたままだ。倒せば倒すほど、私の身の安全性は高まっていく。


 まどろっこしいけど仕方ない。

 あー、早くすごい防具を手に入れて無双したいな。


「そういやスキルの『毒攻撃』って試せてないな。ネズ公、一撃で死んじゃうから使っても意味ないし」


 意味はないけど、使うだけ使ってみようかな。そんなことを思いながらもネズミ退治を続け通路を進んでいると、隠し部屋の前に到着した。

 第一階層と雰囲気が同じことから、同じように隠されたスイッチを探す。するとまた苦労なく扉を開けることができた。


「楽勝、楽勝。まーた、狭い部屋だね」


 これまでに発見した隠し部屋の大きさはどれも狭かったけど、今回のは最も狭い。部屋と言うよりは、短い通路のような構造だった。

 そして台座に乗っていたのは、待望の防具ではなく単眼鏡? 片メガネっぽいものだった。

 魔法のアクセサリーって感じかな? 防具とは違うと思う。


 ちょっとガッカリしながら、圧迫感のある狭い隠し部屋を出る。

 すると、そこには影があった。

 反射的に狭い隠し部屋に下がると同時に、たったいま私が立っていた空間を何かが通り抜けたのが気配でわかる。


 寝ぼけてはいない。まだまだ全然、私は元気だ。

 さっきのは明らかに攻撃だ。何度も何度もネズミの襲撃を撃退した経験が活きた。

 本当のホントにギリギリだった。アレの攻撃が芋ジャージをかすめたらしく、前面の生地が大幅になくなっている。

 私の一張羅いっちょうらなのに! あんのボケナス!


 でもいったい、どんなモンスターだろう。第二階層にはネズミしかいないはずなのに。


 どうするべ。

 逃げるのはたぶん無理。あのモンスターが移動しない限り、完全に通路の出口はふさがれている。


 スキルの『ソロダンジョン』解除する?

 それはアリ、なのかな。いま起こっている出来事は、私専用のダンジョンでのことと考えられる。たぶん。


 どうしよう。ちょっと粘って絶対に無理そうならスキルの解除、これでいこうか。

 そのちょっとのせいでやられたら、まさに死ぬほど後悔するのかな。

 でももし倒せたら、たくさん稼げるよね。きっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
えっっっ、それはそれとしてこれどうやって切り抜けるか楽しみ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ