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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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山梨の地、上陸!

 お金のにおいがするとなれば、借金持ちの決断と行動は早い。

 それぞれ準備を済ませて、さっそくその日の夜から山梨に向かうことになった。

 レアな宝石をゲットだよ!


 普段の私なら夜の労働はお断り。でも朝からの出発は、今回ばかりは都合が悪い。

 実際にやってみないとわからんけど、スキルを使って宝石をザクザク集める場面をほかの奴らに見られたくない。

 今後もどこかで使えるかもしれない方法と思えば、人が少ない夜にやったほうがいい。お宝はこっそり手に入れるのが相場ってもんだよ。


 4人が乗ってきたミニバンを使い、まゆまゆの運転で出発した。

 やっぱ自家用車っていいわ。便利だし、なんか気分がいい。



 浮ついた気持ちでわいわいしながら移動すれば、2時間ちょっとの道のりはあっという間だ。

 市の中心部から、だいぶ外れた場所にある甲府のダンジョン管理所は、年季が入ったおんぼろだった。もう見るからにぼろい。でも気にせずテンション高いままに突入する。


「たのもー!」


 うん、入る前からわかっていたけどね。全然、人がいねーわ。過疎ってるわ。

 この時点だとまったく、欠片もお宝のにおいなんかしない。


「なんだ、君たち。こんな時間に」


 ラーメンどんぶりを手に持ったおっさんが横手の部屋から現れた。たぶん管理所の職員だと思う。さすがに無関係なおっさんではないよね?

 そんなことより、いまはまだ夜の9時くらいだ。こんな時間というほどではないよ。


「ダンジョン探索に決まってるじゃん。おっさんはいまから晩メシ?」

「小腹が空いちゃってね。暇でやることがないと、腹が減るんだよ」


 あっそう。


「職員の人だよね? とりあえず受付してよ」

「君たち、紫翠変石を狙って来たんだろ?」

「そうだね」

「かなり根気よくモンスター倒さないとドロップしないし、ドロップしても水晶に紛れてわからなくなっちゃうんだよ。しかもモンスターの数が少ない! おまけに風が強くてさ、結構大変だから頑張ってな」

「まあ、そんな話は聞いてるね」

「あ、からあげ忘れた! ちょっと待って」


 いいから早く受付しろよ。

 ラーメンどんぶりをテーブルに置くと、小走りで隣の部屋に消えたおっさん。すると今度はお皿に乗ったからあげを手に戻ってきた。めっちゃ美味そうなんだけど。


「悪い悪い。それじゃ身分証、出して」

「あー、ほい。地図もちょうだい」

「はいよ。しかし、珍しいね。最近じゃあ、どっかの企業に頼まれたハンターがたまに来るくらいなんだよ。もう夜は管理所を閉めたいって言ってるんだけどね。本部が聞き入れてくれなくて」

「へー」


 からあげ美味そう。


「おっさん、あんたひとりでこの管理所やってんのか?」

「夫婦で住み込みでやってるよ。どうせ誰も来ないから、いつも暇だけど。まあ田舎の寂れた管理所なんて、どこもこんなもんだよ。ここも昔はもっと活気があったんだけどね」


 思った以上に過疎った不人気ダンジョンだったわ。

 珍しい宝石がドロップするはずなのに、よっぽど実入りが悪いんだろうね。普通にやったら、だけど。


「あ、てことは、いまダンジョンに誰もいないの? もしかして」

「いないね。こんな時間に人が来たのは、少なくともここ1年はなかったと思うよ。はい、これ地図ね。君ら初めてだろ? 紫翠変石は第十階層まで行かないとドロップしないから、がんばってな」

「ほーい」


 身分証を返してもらい、準備は整った。あとは第十階層まで駆け抜けてからが本番だ。

 誰もいない更衣室で着替えを済ませたら、建物奥のダンジョンに向かう。いよいよお宝探しの時間だよ。

 まったく、からあげのせいでお腹減ってきたわ。労働が終わったらいっぱい食うぞ!



 私と並んで歩いていたマドカが、ダンジョンの手前で立ち止まった。

 くるりと振り返って、みんなの顔を見る。わざとらしい仕草だけど、なんだろうね?


「予定では二手にわかれるつもりだったけど、誰もいないなら全員で一緒に行かない?」


 他人がいることを考えると、私の強制的な『ウルトラハードモード』は危険すぎる。だから、いつも『ソロダンジョン』に入るんだけどね。最初はその自覚がなかったのが、いまとなってはちょっと怖いくらい。

 今回も普通にそうするつもりだったけど、誰もいないなら別にいいのかな。


「一緒に? 二手にわかれたほうが、稼ぎの効率よくねえか?」


 手筈としては、まず私がサンプルになる1個目を手に入れる。その後で借金持ちの4人が、リカちゃんのスキル『広域回収』でお宝集めをやる予定だった。

 それとは別に私とマドカとツバキの3人は、いつもの『ソロダンジョン』でドロップを狙えば、効率よく稼げるはず。


 問題は私のほうはドロップ率が普通より高いかもしれないけど、水中に落ちれば探すのに時間を食ってしまう。そもそもドロップに気づけない感じだと結構厳しい。そしてリカちゃんはサンプルがないと、スキルが上手く発動できない。


 やっぱり最初の1個が鍵になるよね。こればっかりは、やってみないとわからん。


「まだ言っていなかったのだけど。正式にパーティー組むからには、あたしのスキルの本領を見せてあげるわ」


 そういやそうだ。銀ちゃんたちには、マドカのリンクスキルは私の『ソロダンジョン』しか適用していなかったし、細かい説明もあえてしていなかった。


「本領だって? どういうことだよ」

「あたしの『グランドリンクⅡ』は、5つまでスキルをリンクできるのよ。アオイの『ソロダンジョン』をリンクしなければ、移動に特化したスキルだけを組み合わせて発動できるの」

「なんだと、5つのスキルをリンク……本当か? いや、まどかを疑うわけではないが、さすがにな」

「ああ、とんでもねえスキルだ。そりゃ仮のパーティーじゃあ、隠しもするわな」

「そのスキルって、なんでもリンク可能なのですか?」


 みんな驚いているね。マドカはすごいんだよ!


「詳細は帰り際にでも説明するけど、あたしたちには有効なスキルがそろっているわ。まずツバキの『魔力の大源泉Ⅱ』で継続回復、ギンコの『体力超人』と『魔力倹約』、そこにあたしの『受動効果増強』で先の3つのスキルを強化する」

「おい、それが全員に適用されんのか? 反則だろ、それ」

「リンクの枠が余っていますが、もしかして私の『春雷歩法』ですか?」


 沖ちゃんの移動スキルだ。あれは普段の移動に使うんじゃなく、戦いの中で使うイメージだけどね。

 まあ戦いで使うには慣れがいるけど、ただの移動だけなら問題ないのかな? いろいろリンクしまくれば、消耗が軽くなるし。


「そういうこと。これなら第十階層までの移動時間を大幅に短縮できるはずよ」


 具体的にどれくらいかかるかわからんけど、第十階層までは結構な距離があるはず。

 いっぱいスキルをリンクして急げば、普通に進むよりかなり短くなるよね。きっと。


「よっしゃ! 地図が読める女子の私が先に行くわ」

「葵、私も露払いを手伝います」

「うん、一緒にやろうよ」


 いやー、なんだか『ソロダンジョン』を発動しない状態で、ダンジョンに入るのは緊張しちゃうわ。

 さっそくマドカがスキルリンクを使って、これで準備万端だ。



 ダンジョン特有の長い階段を下れば、そこには別世界が広がっていた。


「うおー! 実際に見るとさ、思ったよりキラキラしてんねえ」

「ガラスの森ダンジョンほどではないけど、眩しいわね」


 水晶と水のダンジョンなんて呼ばれるだけのことはある。

 いかにも水晶って感じのでっかい塊が、そこら中にある感じだ。そして地面は水と小粒の水晶でびっしりだよ。

 トカゲっぽいモンスターがいっぱいいるけど、あれは無視しよう。それにしてもモンスター少ないって言われたけど、結構いっぱいいるわ。やっぱ『ウルトラハードモード』は違うね。


「なるほどな。モンスターの数を除けば、事前の情報どおりだ。葵と瑠璃、あまり飛ばし過ぎないように先行してくれ」

「オッケー」

「わかっています」


 そうだね。たぶん私と沖ちゃんが本気で走ったら、みんなついてこれないわ。

 調子に乗らず、みんなを気遣っていかないと。

 私ったら、未来のクランマスターなんだからね!

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