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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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112/214

新しい年に新しい始まり

 お引越しイベントが終わって数日もすると、やっとお正月気分が抜けた気がする。

 そろそろ新たな目標に向かって、新鮮な気持ちで取り組もう。


 まったく慣れない気がしたお屋敷でも、2日、3日と過ごせば、だんだんと普通に感じるようになってしまう。1週間も過ごせば、だいぶ馴染みもする。

 人間の慣れってすごいわ。もうこのお屋敷ったら、普通に我が家ですわ。


「ういー、あちー」


 いま私たちは、4人でサウナに入っている。雪乃さんとの仲を深める目的の交流イベントだ。

 超豪華クランハウスには、大浴場もあれば当然のようにサウナもあった。蒼龍のおっさんもきっと、昔は仲間とこうしていたのだろうね。わかるよ、うんうん。


 全身から汗をだらだらとかき、我慢比べをしながら同じ時を過ごす。

 それによって育まれる絆! サウナ兄弟、サウナ姉妹のできあがりだ!

 忘れ得ぬ絆が、ここによって培われるのだよ。すごい。


「もう無理!」


 早々にギブアップした私はサウナから退散した。

 我慢は体によくないわ。水風呂にざぶんと飛び込んでひと息ついたら、ちょっとぬるめの湯にのんびり浸かることにした。

 サウナは気持ちいいけど、無理をするもんじゃないよ。自分のペースで入るべき。みんな、やせ我慢しちゃって。まったくもう。


 やがて我慢比べの虚しさに気づいたのか、みんなも水風呂に入った後でぬるい湯に一緒に浸かり始めた。

 私たちったら、仲良しだねえ。

 なんだか旅行に来た気分だ。これが日常になるとしても大切にしたい時間だね。


 さてと、みんないるし決断を下すには、グッドなタイミングかもしれない。

 よし、言うぞ。


「というわけで、みんな。私は決めたよ」

「なによ、突然」

「葵姉はん?」

「葵さん、なにを決めたのですか?」


 言わずともわかってほしいわねえ。サウナ姉妹の絆でさ、まったくもう。


「沖田ちゃんたちだよ。みんなが嫌じゃなければ、もう仮じゃなくてちゃんとしたメンバーに入れちゃうわ」

「いいと思うわよ。この先のダンジョン探索を見据えると、彼女たち抜きは考えられなくなっているもの」

「うちも」

「私のほうでも独自に調査しましたが、反対する理由はありません。正式にお伝えするなら、このクランハウスにお呼びしましょうか?」


 え、独自に調査? マドカが調べていたのは聞いた気がするけど雪乃さんまで? マジかよ。

 まあとにかく、みんなも賛成してくれるなら全然オッケーだよね。あの4人は逃すべきじゃないよ。

 脛に傷を持っているとか、ダンジョン攻略に関係ないし。


「うん、雪乃さん。あっちの都合でいいからさ、来れる時に来てって連絡しといてよ」

「では早速、この後で連絡入れておきましょう」

「練馬ダンジョンには、7人でもまだ挑戦できないのよね?」

「たぶん? なんかレベルとか人数とか、ちゃんとしないと扉が開かないようになってるって言われたし」

「あの蒼龍でもほとんど攻略を進められず、断念したダンジョンですからね。いつか挑戦するにしても、十分以上に準備を重ねてからがよいでしょう」

「そうだよね。無理はしないよ」


 せっかくのダンジョン付きクランハウスなんだから、普通に入ってみたかった気持ちはある。

 でもめっちゃ警告されまくったし、入れないようにされたんじゃ仕方ないけどね。

 ヤバそうなダンジョンは未来のお楽しみとして、とりあえずは沖田ちゃんたちの歓迎会でも考えよう。



 サウナで絆イベントの2日後。

 沖田ちゃんたち4人が、クランハウスにやってきた。ようこそだよ!

 洋館のほうの応接室で、私たち4人と沖田ちゃんたち4人で向かい合って座る。


「お、お招きありがとうございます」


 沖田ちゃんがやたらと緊張している。わかるよ、その気持ち。この金持ち屋敷の威圧感よ。


「話には聞いていたが、まさかこれほどとは思わなかった」

「蒼龍ってのは、こんなのをポンと他人にあげられんのかよ。やっぱ伝説のハンターってのは、とんでもねえな」

「お庭が素敵でした。あとで散歩してもいいですか?」


 みんなめっちゃ驚いている。

 とってもいい反応ですな。そういうリアクションを期待していたのだよ。

 沖田ちゃんたち4人は、とにかく感心しきりだ。ふはは、気持ちがいいね!


「まあまあ、これがみんなの日常になるわけだからさ。遠慮せずにくつろいでよ」

「日常、ですか? ということは……」


 察しがいいねえ、沖田ちゃん。

 そろそろお試し期間も終わりだったし、なんとなくわかっていた感じかな。


「そういうことだよ。正式にさ、一緒のパーティーになろうよ。だから私たちのクランハウス呼んだってわけ!」

「パーティーの結成、そしてクランの結成というわけだな。無論、我々に異存などない」

「じゃあ、改めて自己紹介! こっから私、包み隠さずにいくよ?」


 秘密を共有する仲間になる、ということだ。

 そういう意味を込めて見回せば、みんなちゃんとわかってくれている。うん、いい感じ。


「よし、言っちゃうね。まずは私、永倉葵スカーレット、16歳の新人ハンター。レベルは18で、クラスは『はぐれ山賊』だよ。よろしくね」

「……山賊?」

「そう。私ったら、山賊なんだよね。はい、次マドカね」


 いままで言わなかったけど、クラスは私たちにとって敏感な問題だ。私もそうだし、マドカもそう。むしろマドカのほうが、もっと敏感で繊細な問題だからね。

 もしまだ言いたくないなら、マドカは別に隠したままだっていい。だから任せる。そういう意味を込めて、マドカの目を見ながら肩をポンと叩いた。私の言いたいことは伝わっているね。


「改めまして九条まどか、17歳よ。レベルは17で、クラスは……『どん底アイドル崩れ』って信じられないクラスよ。実を言うとね」


 クラスのこと、言っちゃったか!

 沖田ちゃんたちもさすがに驚いたのか、信じられないような表情をしている。

 まあ、ここで時が止まったようになってはいたたまれない。こんな場面で嘘を吐く性格じゃないことはわかっているだろうし、疑問はそれぞれで勝手に解消しておくれ。聞き返されたり、確認されるのも嫌だろうしさ。


 先に進めてしまうよ。


「はい、次はツバキね」

「……うちは九条つばき。まどかおねえの従姉妹。レベル17、クラスは『箱入り怨念巫女』や」


 ツバキのクラスはひどいって言うより、ちょっと怖いよね。

 なかなかインパクトあると思うけど、マドカのあんまりなクラスを聞いた後だと、いまいち印象が薄くなってしまう気がする。


「次、雪乃さん。どうぞ」

「源雪乃です。私はダンジョンには入らないのでパーティーメンバーではありませんが、クランには参加予定になっています。事務や雑務の面で皆さんをサポートしていきます。ほかにも事務員が2名いますので、私共々どうぞよろしくお願いいたします」

「ちょっとだけ話したことあったと思うけど、この屋敷の管理とか面倒なことをいっぱい引き受けてくれるありがたい人だよ。感謝してね」


 超簡単だけど、私たちについてはこんなもんかな。個人的なことや細かいことは後にしよう。


「私は初対面ですし、そちらの自己紹介もしていただけますか?」


 雪乃さんからのリクエストは当然のものだよね。私も改めてちゃんと聞きたいしちょうどいい。


「そうだね、みんな改めて頼むよ。ババンと自己紹介しちゃって」


 新メンバーのみんなにも、この機会にいろいろぶっちゃけてほしいわ。

 どうせなら、そのほうが仲良くなれる。

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