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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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パーティーの有望な未来

 沖田ちゃんたちと仮のパーティーを組んでからも、私にとってはほぼ変わりない毎日が続く。

 元々、週に1度の休みを除いて毎日ダンジョンに入っていた。


 最近は富山に遠征したり、仲間探しのほうに力を入れていたことはあったけど、普通の日常に戻った感じかな。

 素晴らしくも退屈な日常かと思いきや、私の意識としては案外そうでもない。

 お金を稼ぐことも経験値を稼ぐことも、地味だけど目標に少しずつ近づくことを意味している。


 じりじりとサブクラスをゲットできるレベル20は迫っているし、クランハウスを手に入れたからには、これを私たちらしい拠点にもしていきたい。

 あれだよ、もう絵とか壷とかたくさんほしい。タワマンはもういらないかなと思えば、別の物があれこれほしくなるよね。なんかいろいろ無駄遣いしたい!


 そんな妄想をするだけでも結構楽しい。人間、余裕があるってやっぱいいことだわ。


 ずっと同じダンジョンの同じ階層にいれば飽きるけど、仲間と一緒にやれること自体が私にとっては嬉しいし。

 もっと仲間が増えれば、きっともっと楽しくなる。


「新しいメンバーとは上手くいってるの?」

「うん。まだ実力の差はあるけどね、いい感じだと思うよ。明日もまたダンジョン行くし」


 夕歌さんには仲間探しであれこれ協力してもらったから、ちゃんとお礼をしないといけないね。

 今日は久しぶりの銭湯に行ったついでに、ダンジョン管理所に寄ってみた。ただ、お土産のコンビニスイーツがお礼ではね。立派な成人女性の私としては、これではいけないと理解している。次はもっといいやつ買ってこよう。


「それはよかった。これでやっと葵ちゃんも、まともにパーティー組めたわねえ」

「人数もそうだけど、たぶん夕歌さんが思ってる以上にいい感じだよ。私たちったら、めっちゃ将来有望かも。ただ本格的に活動できるのは、まだ先っぽいけどね」

「あー、借金のことね?」

「そうそう。大変そうだわ。仕方ないけどさ」


 借りたもんは返さないといけないからね。

 本当なら7人で毎日一緒にダンジョンに行くぞ! としたいところだったけど、沖田ちゃんたちはそうもいかない。

 なにやら借金の返済絡みでいろいろあるらしく、別の仕事もやらないといけないのだとか。


 マドカの考えもあって、私たちはダンジョンには一緒に行っても、借金のあれこれには関わらないようにしている。

 正式な仲間になったならともかく、まあ普通に関わりたくねーわ。


「すんなりとは行きそうにないわねえ。あ、そういえば葵ちゃんたちって、いつからクランハウスに住むんだっけ?」

「年明けからの予定だよ。あと1か月くらい」


 蒼龍のおっさんも気を使って準備してくれるらしいから、住み心地は抜群にいいはず。楽しみだね。


「雪乃も一緒なのよね? 何人で住むの?」

「いまのところは、雪乃さん入れて4人で住む感じだよ。雪乃さんの手伝いの人たちはいるけど、いまのところどうすんのか知らないわ」

「新しいメンバーは一緒じゃないの?」

「うん、沖田ちゃんたちはいまの場所から移動できないんだって。正式にパーティー組んだら、ちょっと考えるみたいなことは言ってたけど」

「そうなの? 当分の間は大きなクランハウスを持て余しそうね」


 まさに、がらーんとした感じになりそう。

 だからこそ、絵とか壷とか彫像が必要なんだよ。うん、やっぱそうだよね。

 近い未来の想像をふくらませながら、夕歌さんとしばらくだべってしまった。



 そして翌日は朝からダンジョンアタック!

 私にとっては慣れ親しんだ神楽坂ダンジョンで、沖田ちゃんたちとの連係を確認しつつ、ウルトラハードモードなモンスターに慣れてもらう。

 これが日常になっていくんだからね。


「九条さんから借りたこの対物魔導銃、威力が私の狙撃銃とは比較にならんな」

「実家の倉庫にあったものだから、気にせず使ってください」

「ありがたい。特に弾薬代がかからないのが素晴らしい。魔力弾は魔力の消耗が気になるものだが、私のスキル『魔力倹約』とは相性がいい」

「わたしも助かってます。前の盾は買い替えが必要なタイミングでしたから。でもお借りした盾が消耗するのは、気になってしまいますね」

「魔石で修復できるので、あまり気にしなくて大丈夫ですよ」


 マドカは実家から、倉庫に眠ったままの装備品をたくさん持ってきた。持つべきものは金持ちの実家だわ。

 九条の実家には、なにかお礼の贈り物でもしないといけないね。お世話になってます!


「おい、つばき。お前の『人形儀式』ってスキル、呪いが効かないやつには効果ないんだろ? でもよ、アタシの『耐性喰い』が効いちまえば、通用するんじゃねえか?」

「……そ、そうかも、しれへん」

「永倉さん、さっきのは何をヒントに先読みしました?」

「え、なんとなくわかるよね? ぴきーんとさ、感じるじゃん?」

「あの、具体的なところを教えてほしいのですが……」


 みんなやる気があっていい感じだよ。

 まだ全力でスキルリンクはやっていないのに、いまの状態でも私たちは強い組み合わせと思えた。正式にパーティー組むことに決まったら、その時にこそ本気でやってみよう。


 そんなこんなで私たちは週に2日から3日くらいのペースで、一緒にダンジョンに潜り続けた。

 慎重なマドカは、お試し期間中にあれこれと沖田ちゃんたちを探っているらしかったけど、前に蒼龍が沖田ちゃんの身辺調査をしていたとも聞いたことがある。変な問題はないと思うけどね。



 私としてはダンジョン攻略でどれだけ合うか、それだけを重視して考えた。

 また新しくメンバー探しをやるのは面倒だよねって気持ちを抜きにして、あの4人は私たちに合っていると思う。


 銀ぶちメガネは銃の腕前以外にも、全体を見て指示する力はパーティーとしての能力を底上げしてくれると思えた。

 私は細かいことを気にせずに戦いたいから、後ろから周りを見てくれる人がいるのはありがたい。マドカとツバキも含めて、私たちは割と自分のことに集中しがちという欠点も最近になってわかってきたし。


 派手で不良っぽいお姉さんと、フェミニンで優しいお姉さんは、性格は全然違うけど、どっちも面倒見のいい人だった。

 人見知りのツバキにいい意味で遠慮なく接しているし、疑り深いマドカに対しても、大人な接し方をしているのが見ていてわかる。

 私の買ってくるお菓子を、いつも美味しそうに食べてくれるのもいい。

 ダンジョンでのサポート能力は私たちにはないものだし、いてくれるとかなり便利なのもたしかだね。


 そして沖田ちゃんは強い上に向上心があって、性格的にも感じのいい奴。

 こんな奴らが前科モンで、おまけに借金を抱えているというのが信じられない。


 まあ、でも人にはそれぞれ事情があるからね。

 私だって、ちょっと前までは公園で寝泊りしていたわけだし。


 つまりもう私としては、あの4人でオッケーというか、もう別の人たちで組むことは考えにくいわ。

 レベルを上げつつ、もっと慣れていけば、たぶん理想のパーティーっぽい感じになれそうな気がする。

 ひょっとして私たちったら、最強になってしまうでは?


 いや、そんなのはどうでもいいか。

 お金をいっぱい稼ぎまくって、あとは超絶カッコいいサブクラスと上級クラスをゲットする!

 そのためにがんばってきたし、これからもやっていく。やっぱこれだよ。


 成し遂げたい目標!

 そいつに向かって、みんなでやれるのがとってもいい感じだね。


「あ、そうだよ」


 やる気をさらに高めるためには、文明レベルの上昇も欠かせない気がする。

 これはやっぱり、絵とか壷とか彫像とか必要だわ。

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― 新着の感想 ―
庭に薔薇が咲いてても当たり前と思えて、白いタイルの道が汚れるかもとか気にならない文明レベルになれると良いですね!
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