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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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高みの見物と見物料

 ごつい白い鎧に身を包んだお姉さんが、盾を構えてパーティーの先頭に陣取った。そのすぐ近くに沖田ちゃんが控えている。

 少し間を空けてキャバ嬢スタイルの女、そして狙撃銃をバンバン撃っている銀ぶちメガネが一番後ろの配置だ。


 沖田ちゃんたちは、すでに私たちが周辺のモンスターを全部倒した結果を見て、かなりびっくりしている。

 それでも目の前に迫る敵への注意は怠っていない。年上のお姉さんたちだけあって、ハンターとしての経験は私たちよりはずっと上っぽい感じだね。


「私の銃ではダメージにならん、引き寄せて倒すぞ。梨々花がおとりになって、瑠璃が順に始末しろ」


 撃つ手を止めて、銀ぶちメガネが新たな指示をしている。次の手が見られそうだね。


「仕留められない場合はどうします?」

「逃げるより助力を頼もう。彼女たちはあの実力だ、なんの心配もない。しかし、この分では我々のスキルもどこまで通用するか、やってみなければわからんな」


 赤いワン公たちはこれまでに浴びせられた銃撃で怒っているのか、モンスターらしい獰猛な顔で走り寄っている。

 もうすぐ飛びかかってきそうな距離になるけど、どうするんだろうね。


 見守っていると先頭に立つフェミニンお姉さんに向かって、ワン公たちが一斉に飛びかかった。

 ごっつい大きな盾を構えていても、虎みたいなワン公に襲われたら耐えられない、と思いきやだ。あのお姉さんは一歩も動かずに涼しい顔ではね返したよ。


「まゆ、合わせろ……『止まれ』!」


 銀ぶちメガネが叫んだ。どうやらスキルを使ったらしいね。

 続いて派手なお姉さんが力をふり絞るように、無言でスキルを使ったみたい。モンスターが怖いのか、必死の形相だ。


 ほんの数秒くらいの時が止まったような、不思議な時間。

 モンスターの群れは動けないみたいで、そこを急に出てきた真っ白い霧が包み込んでいる。

 ちょっとの時間で霧が晴れると同時に、今度は沖田ちゃんが動きだした。


 滑るような動きで、赤いワン公に近づく。

 ワン公どもは銀ぶちメガネと派手女のスキルの影響か、なにやらふらついていて無防備にしか見えない。

 そこを蒼龍からもらった強そうな刀を突き出して、沖田ちゃんがさっくりと倒してしまった。やるもんだね。


 特別な武器と沖田ちゃんの技術が合わさり、さらに無防備な敵が相手だからね。あのくらいのモンスターなら問題なさそう。


「敵の防御スキル、切れてます!」


 沖田ちゃんが続けざまにワン公を光の粒子に変えながら言う。

 ワン公を守っていた魔法障壁がはがれているらしい。


「このまま瑠璃に任せる、全部倒せ! まゆ、あのスキルはどういうことだ。いつもと違っていたな?」

「……アタシのスキル、強化されてるな。魔力の消耗が予想以上だった」

「ちょうどレベルが上がって、強化でもされたか?」

「いや、アタシは先月上がったばかりだ。当分は上がらねえ」


 雑談とは余裕があるねえと言いたいところだけど、沖田ちゃんが手際よく全部のモンスターを倒してしまった。

 これで周辺にいるモンスターはいなくなったね。


 それにしても、いろいろ気になることをやっていた。

 沖田ちゃんだけでなく、ほかの3人もなかなか面白いわ。


「片付きました」

「瑠璃、よくやった。梨々花、頼む」

「はい」


 戦闘後に何をするのかと思ったら、ドロップした魔石が宙を飛んでごつい鎧のお姉さんの元に集まってきた。

 手に持ったポーチの中へと、勝手に魔石が入って消えていく。

 マジかよ、なんて便利なスキルだよ。めちゃうらやましいわ。



 いったん落ち着いたところで、みんなで集まることにした。

 気になることがいろいろありますな。こっちもそうだし、向こうもそうだよね。


「永倉さん、まずはあのモンスターが何だったのか、教えてくれないか? 我々の知っている亀有ダンジョンのモンスターとはあまりに違う」


 当然の疑問には答えてあげようね。さすがに意味不明すぎるだろうし。


「私のスキルの効果だよ。モンスターが強くなるんだよね。魔石の質も上がるからお得だよ」

「なに? 梨々花、魔石を見せてくれ」


 スキルよりお金に反応かい。やっぱ借金あると、意識がお金に向くんだね。


「あ、本当。高品質魔石ですよ、これ。これもこれも、これも!」

「……凄まじいな。まさかすべてが高品質魔石になるのか?」

「全部が高品質!? すげえじゃねえか」

「そういうことですか。どおりで永倉さんたちが、なかなかパーティーを組まないはずです」


 理由のひとつだね。


「このスキル効果だけでも、やはり我々としては組みたいな。しかし、それ以上にあの実力はどういうことだ? とてもレベル相応とは思えん」

「私たちは強いモンスター相手に暴れまわってるからさ、そりゃ普通のハンターより強くもなるよ」


 マドカのリンクスキルの影響もバカでかい。


 私の『武魂共鳴』で武具を成長させて、『状態異常耐性』で守りと安心感もバツグンだしね。

 さらにツバキの『魔力の大源泉Ⅱ』で体力も魔力も常に回復し続けて、マドカの『受動効果増強』でリンクしたスキルの効果を高めている。

 おまけに専用のダンジョンで、モンスターも狩り放題。ほかのハンターと取り合いにならないのは、でっかい強みだと思う。


 長時間のダンジョン探索でも戦闘でもこなせるし、全力での戦闘もそこそこの時間やれちゃう。

 すごすぎるスキル効果の連係!

 そりゃあ私たちったら、めちゃ強いよ。


「大蔵さん、ステータスを確認してもらえませんか?」


 思案顔だったマドカが銀ぶちメガネに言った。なんだろうね。


「構わないが、何かあるのか?」

「そうだ、アタシのスキル、強くなってやがったな……」


 沖田ちゃんたちが身分証を取り出して確認し始めた。

 あー、そういや初めてマドカとツバキとダンジョンに入った時、ふたりのスキルが強化された気がするね。ひょっとしたら、この4人にも同じことが起こったとか?


「変わってやがる! アタシの『酩酊めいていの霧』が『酩酊の濃霧』になってんな」


 霧って、あのワン公たちを包み込んだ白い霧のスキルのことだよね。


「……本当だ。私も『体力強化』が『体力超人』に変化している。瑠璃と梨々花はどうだ?」

「こっちも変わってます。『芋刺し』が『疾風穿刀しっぷうせんとう』になってますね」

「私は『狭域小物回収』が『広域回収』に変わりました」


 なんと、全員のスキルが強化されているらしい。

 ずるいわ。私もスキル強化されたいよ。


「やっぱり、そうなっていましたか」

「どういうことか聞いていいか? こう言っては何だが、スキルの変更にはリスクが伴う。強化されたからよいというものではない」


 え、ダメなの?

 でも私は別に悪くないだろ。仕方ないじゃん。


「スキルの強化については、あたしたちにも確証はなく内容も内容です。仮に予想できたとして、軽々に話せることではなかったと理解いただきたいです」


 そうそう。気軽には話せないと思うよ。たぶん。


「この不思議なダンジョンの影響か? しかし、スキルの強化……これはまた、とんでもない能力であり、情報だ」

「銀子、スキルの強化だ。別に悪かねえよ。そんなことより、組めるかどうかだ。高品質魔石に、3人ともあの実力だぜ? つまんねえ文句つけてる場合じゃねえだろ」

「すまん、言えてるな。我々としては願ってもない相手だ。さて、永倉さん、九条さん。先ほどの我々の戦闘をどう評価する? 改めて、そちらが知りたいことには何でも答えよう」


 とりあえずそうだね、沖田ちゃんたちの戦いは思った以上によかったと思う。なんだかんだ、群れのひとつは倒したわけだしね。

 沖田ちゃん以外の人たちも、あれこれと気になるスキルを使っていた。思い返してみても、やっぱりなかなかだったわ。


 よっしゃ。教えてくれるなら、どんどこ聞いてみよう。

 私にとって大事なのは、一緒に上級クラスを目指せるかどうかだからね。根掘り葉掘り聞くぞ。

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