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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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これが実力の差!

 遠いからわかりにくいけど、モンスターはたぶん虎くらいの大きさの赤いワン公だ。それが、えっと、9匹集まっているのが向かって正面にいる。

 あんなのが一斉に襲いかかってくると思えば、普通の感覚なら結構怖いよね。


「チッ、周囲にいくつも群れがあるな。あれらが集まってくる前に、可能な限り数を減らすぞ。まゆ、お前は私の『声』と同時に仕かけろ」

「わかってる!」

「瑠璃はあまり離れず、近づいて来たのを倒せ。梨々花はあの正面以外の群れを見張れ、もしもの場合には引きつけて耐えろ」


 いつものやり方なのかな。一応の指示は出ているけど、慣れたやり取りでフォーメーションも自然とできている。

 沖田ちゃんが一番前で、指示役の銀ぶちメガネが一番後ろ、ほかのふたりはその間にいる。

 声と同時に仕かけるということは、何かそれっぽい合図があるんだろうね。


 私たちも適当にばらけて、いつでもフォローに入れるよう移動した。あとは見学だ。


 銀ぶちメガネが肩に担いだ次元バッグを足元に下ろすと、ぬるりと細長い武器を取り出した。

 黒に銀の模様が入った銃、あれは魔法の狙撃銃なのかな? そんな感じの武器を使うみたいだね。マドカの散弾銃は敵を引きつけて撃たないと効果が薄いけど、狙撃銃なら遠くからでもバンバン攻撃できそう。


「狙撃だけで仕留められればいいが……始める」


 地面に片膝をついた姿勢の銀ぶちメガネが、銃に弾を込めたりなんだりした後でさっそく撃った。

 魔法の弾丸じゃなくて実弾みたいだね。撃つ時にいちいち銃をガチャガチャいじる仕草がカッコいいわ。


 ちょっと、わくわくしてきた。

 なんだよあれ、ロマンを感じるわ!


 でも結構大きな銃声が鳴って、これだと周辺にいるモンスターがわらわら集まって来そうな気がする。大丈夫なのかな?

 とにかく、撃った弾は見事に命中したらしく、赤いワン公が横倒しになっていた。光になって消えないってことは、まだ倒せてないね。


「嘘だろ? ワイルドウルフなら、体の半分は吹っ飛んでるぞ」


 派手な女の感想で、普通の時との違いが少しわかる。

 銀ぶちメガネがもう一発撃ったけど、まだワン公は光に変わらない。


「……あの赤いウルフ、起き上がりましたね」


 沖田ちゃんが腰を落とした姿勢で警戒を強めながら言う。普段とはかなり違うっぽいね。


「魔法障壁のようなものか? いくら高レベルモンスターだとしても、無傷というのはおかしい。2発目は頭部に当てたが……ダメージはあるのか?」

「銀子さん、周辺のモンスターがこちらを向いています。集まってきますよ」


 ごつい鎧に、ごっつい盾で身を固めたフェミニンなお姉さんが、周りの様子に気づいたみたいだね。もたもたしていると大変なことになるよ。

 すると銀ぶちメガネがこっちを向いた。


「いざという時には頼ってもいいのか?」


 おうおう、任せておくれ。自信満々に答えてあげよう。


「そりゃ当然。だから思う存分、暴れてよ。最悪は転送陣に逃げ込めばいいし、ヤバいと思ったら下がっていいよ」

「わかった。瑠璃とまゆは正面の群れに集中しろ! 正直、我々ではいくつもの群れには対応できそうにない。私もあの群れに撃って撃って撃ちまくる。梨々花も前に出て防御態勢だ!」


 これは潔い決断をしたものだね。


 初対面の私たちの実力を信用したわけではないと思うけど、このあふれ出まくる余裕から頼ってもよさそうとは思ってくれたのかな。あとはそれこそ最悪、ちょろっと走れば転送陣に逃げ込める。


 あれこれ考えながらも、精一杯がんばってる感じがいいじゃないですか。

 うだうだ言わずに、まずはやってみようってところもいい。好感度高いね!


 銀ぶちメガネは開き直ったように、狙撃銃を連続で撃ち始めた。騒音がすごい。

 5発撃っては弾を込めて、1発ずつガチャガチャとやりながら撃つスタイル。やっぱカッコいいわ。

 正面の群れの9匹に対して、続々と当てていくその命中率たるや100%だよ。すごい腕前だね。


 ただ、全然やっつけられない。

 当たればちょっと吹っ飛ばせるけど、それ以上のダメージはないっぽい。

 さっき魔法障壁がどうのと言っていたけど、そういう防御魔法的なもので守られている感じらしい。第十階層のモンスターにしては硬そうだけど、もっと硬そうなゴーレムくんに慣れた私にかかれば、きっとなんてことはない。


 とにかく、沖田ちゃんパーティーの実力を見られるのは、ワン公に接近されてからだね。

 いままさに集まりつつある周辺の群れはちょっと邪魔かな。先に片付けよう。


「マドカ! ツバキ! ちょっと手伝うよ!」


 細かいことは言わなくても通じる。

 時間はまだ短くても、ダンジョンの中でずっと背中を預け合ってきた同志の信頼感よ。そんじょそこらのパーティーとは、戦闘経験の密度が違う。


 私が走り出せば、動きに釣られたモンスターも走り出す。

 ダダダーッと走って群れに突っ込んだら、ハンマーを振り回して次々と光の粒子に変えていく。こんな雑魚モンスター相手に、技術もなにも必要ないわ!


 オラオラと振り回すだけで、勝手に突っ込んできた赤いワン公を倒しちゃうからね。余裕ですわ。

 わずか10匹にも満たない群れなんて、それこそものの数秒で倒せてしまう。


「オラオラオラー、かかってこいやー!」


 よっしゃ、次の群れだ。魔石をよこせ!



 適当に定めた私の担当エリアの掃除は結構早く終わってしまった。

 悠々と魔石を拾っていれば、マブダチふたりの仕事も早い。周りのお掃除はそろそろ片付きそう。


 つよつよ散弾銃を持ったマドカが、魔法の弾丸でどんどこワン公をなぎ倒していく。

 リンクした複数のスキルとマドカ自身が新たに覚えたスキルの合わせ技によって、雑魚狩りの速度が上がっているね。


 ツバキも呪いの人形を使った特殊な魔法で、次々とワン公を光の粒子に変えている。

 消耗品の呪符を使う必要もないって感じだ。


 私たちったら、やっぱ強くね?

 めちゃ強いよね?

 いつもソロダンジョンだから、ほかのハンターたちとは実力の比べようがなかったけど、やっぱどう考えても強いわ。



 沖田ちゃんパーティーの戦いは、まだ銀ぶちメガネが狙撃銃を撃ちまくっている段階で、接近戦にはもう少しかかりそう。

 近づかれるまでに少しでもダメージを与えようってつもりかな。

 モンスターの魔法障壁だって、ダメージが重なればいつかは切れる。私たちは紙きれのように突破して倒しちゃったけど、普通に戦うならあんな感じなんだろう。


 でも一緒に組むなら、火力はもっと出してもらわないとだね。狙撃銃の腕前はすっごいから、そこは感心する。

 沖田ちゃんの実力はわかっているけど、ほかの人たちがどんなもんか楽しみだ。


 さて、どんな力を見せてくれるのかな。

 近づかれたらそれで終わりなんて、そんなことにはならないと期待しよう。

 まだまだ高みの見物、させてもらっちゃうよ。

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