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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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ウルトラハードな相性診断

 ちょろっと話を聞いただけで、沖田ちゃんたちの境遇のヤバさが理解できた気がした。


 一緒にパーティー組むだって?

 ハハッ、ないない。


 奴隷の首輪をつけられた上に、日常的にホームレスに見張られる生活って。しかもこんな汚いビルで暮らさなきゃいけないとか、マジで最悪じゃん。

 さらに借金に加えて前科とか、もう合わせ技一本どころじゃないわ。

 可憐で将来有望な新人ハンターである私たちとは、住む世界が違いすぎるだろ。


「我々の話はとりあえず、このくらいでいいか? そもそも、そちらの条件に我々が合っていなければ話が成立しない。次はそちらが条件を教えてくれ。細かい話はその後にしよう」


 私たちが求める最低限の条件は、夕歌さんが仲間候補として紹介してくれた時点でクリアされている。マドカのリンクスキルが発動しそうとか、やる気がありそうとか。

 でもなー。ここまでの話で、だいぶきっつい境遇の連中だっていうのがわかってしまった。


 この人たちとやっていくのは、無理っぽくない? と思いつつあるけど、まあこっちの条件くらいは教えてやろうか。必須条件はクリアできていても、それ以外にもちょこちょこあるからね。

 どんな感じで答えようかと思っていると、マドカが私の腕に手を添えてきた。答えてくれるならお任せしよう。


「……今後あたしたちは、人数が集まり次第にクランを作る予定よ。条件はまず、アオイをクランマスターとして認めること。次に上級クラスの獲得を目指す強い意思があること。そしてクランやメンバーの秘密を厳守できること。以上よ」


 私たちはめちゃ強いから、組んだ時点で実力に差があるのは仕方ない。だから、とにかくやる気が大事。

 とはいえ心境的にはお断りの方向だから、特にスキルの関係で余計なことや細かいことをわざわざ教えてやらなくていい。


「なるほどな、簡単な条件だ。我々が求めていることは、ただひとつ。より多くの金が稼げることだ。上級クラスの獲得は、少々気が早い目標に思えるが、深い階層に挑む目的は一致している。秘密厳守は当然の話で、クランマスターの件も異存ない。意見くらいはできるのだろう?」

「当然ね」


 へえ、私がリーダーでもいいんだ?

 結構怖い感じの人なのに、その辺は理解がいいんだね。まあ本音かどうかわからんけど。


「もうひとつ、スポンサーの話をしていたと聞いたが、そこはどう考えている?」


 前の時に沖田ちゃんにはそのことも話したっけ。


「あたしたちは外部の意思に左右されない活動を望んでいるわ。だからもしスポンサー契約を結ぶとしても、こちらには特別な制約がないことが条件になる。つまり、どこの誰を仲間にしようと関係ないということよ」

「それは脛に傷を持つこちらにとって、願ってもないことだが……」

「もちろんいきなり仲間に、というわけにはいかないわ。アオイ、どうする?」


 いやー、ちょっと見た感じ怖いお姉さんもいるけど、案外性格は悪くなさそうなんだよね。

 住む世界が違う感じだから、やめたほうがいいかもとは思いつつ、沖田ちゃんのあの実力は惜しいとも思ってしまう。


 それにここまでの話だけで、お断りするのもね。条件的にはオッケーなわけだし。

 ここはやっぱり、あれかな。


「やっぱ、ハンターとしての力を見てからじゃない? 細かい話より、実際に同じパーティーとしてやっていけるか。これしかないよ」


 結局はそれだ。建前をうだうだ話すより、わかりやすい実力だよ。

 能力的に合いそうにないなと思ったら、キッパリお断りできるし、未練も残らない。一緒に上級クラスを目指せるかが大事だよね。


「我々としても賛成だ。結論は早いほうがいい。これから近場の亀有ダンジョンに行かないか?」

「おー、いいじゃん。行こうよ!」


 スパっと決めて、即行動。こういうところも、結構気が合いそうな人たちだね。

 基本的にはお断りの方向かなと思っていたけど、なかなか迷わせてくれますわ。


 ビルを出る時に、銀ぶちメガネのお姉さんがホームレスと何事かを話していたけど、出かけてくるね的な話だろうか。いちいち大変だ。

 隣の空き地に勝手に停めているっぽいミニバン? に全員で乗り込むと派手ワンピースの女の運転で出発した。

 タクシーもいいけど、自家用車っていいね。



 私たちにとっては初の亀有ダンジョンに到着すると、まあまあの人がいた。そこそこ人気の部類のダンジョンってことかな。

 いきなり特殊なことはせず、まずは普通に受付を済ませたら、更衣室を使ってのお着替えだ。

 準備万端でいざダンジョンに向かうぞってところからが、私たちの本領発揮だよ。


 ダンジョンに向かう通路で、こそっとマドカとツバキに言っておく。


「そろそろスキル発動するけどさ……」

「わかってるわ。あっちにリンクするスキルは最低限にするわね。大蔵さん、ここからはあたしたちの秘密に関わります。そちらの全員にスキルの効果を及ぼしますが、いいですね?」

「もうスキルを使うのか? それは興味深い。もちろん秘密に関しては必ず守る」


 最悪、別にバラされてもいいけどね。

 とにかく『ソロダンジョン』を発動、そしてマドカの『グランドリンクⅡ』と連動して、私たちだけのダンジョンに入る準備が整った。

 そのままダンジョンの領域に突入すれば、7人だけの空間のできあがり。


「……これは、どういうことだ」


 みんな驚いているね。

 ちょっと気分いいけど、説明するのはめんどくさい。


「細かい話は正式に仲間になったらするよ。いま言えるのは、私たちのスキルを使って専用のダンジョンに入ったってこと。あとダンジョンのモンスター、超強くなってるからそのつもりでいてね。いつもの感覚でいたら、たぶんヤバいよ」


 これ以上話すつもりはないと言えば、さすがはあっちは大人の女たちだよ。しつこくは聞いてこない。


「亀有ダンジョンには慣れてる感じだよね? いつもはどこの階層で戦ってんの?」

「最近は主に第十六階層で戦っている」

「じゃあ、第十階層にしとこうかね。連れてってよ」


 転送陣を使えばあっというまに第十階層に到着できる。序盤をスキップできるのは楽でいいわ。


「ねえアオイ、第五階層くらいにしておいたほうがいいんじゃない?」


 初めての『ウルトラハードモード』だし、それが無難ではあるだろうね。

 でも、どうせならピンチになってもらったほうが、あっちの実力がわかりやすい。


「危なくなったら助ければいいよ。私とマドカで両側について、ツバキは後ろから全体を見といて」


 うなずくふたりと一緒に転送陣まで移動すれば、不審そうな顔をしながらも沖田ちゃん一行はついてきた。文句を垂れないのは感心だね。テストするのは私たちだよ。

 そうしていざ、第十階層に移動!



 ほほう、どうやらここは草原ステージっぽい。

 転送陣の周囲は小さな林になっていて、静かにしていればモンスターには気づかれなさそう。

 ざっと見渡せば、丘や森みたいなものもある。自然がいっぱいのダンジョンて感じだね。もしかしたら川とかあるかも。


「……どういうことだ。ここの第十階層ってたしか、ワイルドウルフしか出ねえはずだろ?」

「灰色のワイルドウルフが、数匹単位で行動しているはずですね」

「あのウルフはどう見ても赤だ、灰色じゃねえ。しかも、でけえ上にいつもの倍はいるぞ」

「向こうのほうにも同じような群れがいます。完全にわたしたちが知っている第十階層とは違いますね」


 派手なワンピースからキャバ嬢のドレスっぽい防具に着替えた女と、フェミニンっぽい服から重量感あふれまくる白い鎧に着替えた女が話している。

 黒スーツから硬派な迷彩服に着替えた女と、和装の沖田ちゃんは周囲を厳しい目で警戒していた。


 それにしてもこいつら、統一感の全然ない装備だね。うん、個性があって面白いわ。


「だから言ったじゃん、モンスター超強くなるよって。とりあえずは4人で戦ってみてよ。いいよね?」

「……疑問は尽きないが、まずはやってみよう」

「ほいじゃあ、がんばってね。ヤバそうだったら助けに入るからさ」


 お手並み拝見だよ。

 上から目線で見守ってやる!

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