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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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105/212

ひどすぎクラスのお仲間、ご対面の時

 ぼろビルがあまりの底辺環境すぎて、お嬢様のマドカとツバキはもう限界寸前だ。

 私だってこんな場所からは早くおさらばしたい。ここに沖田ちゃん住んでるって、マジっすか。ホントに? 私たちったら、だまされてない?


「あ、そうだよ。沖田ちゃんに連絡してさ、外に出て来てもらおうよ」


 階段の途中で変なもん踏みそうで嫌だわ。もしコケたら最悪だし。

 もう沖田ちゃんたちが、どんな環境で生活しているかなんて、ここを見ただけで十分すぎる。


「……そ、そうね。連絡してみるわ」


 マドカがスマホを手にしたところで、ブイーンと機械の音が聞こえ始めた。

 静かな空間に響く機械音に耳を澄ませていると、チーンと音がしてエレベーターのドアが開く。そこには見知った和装の女子が。


「沖田ちゃん」

「永倉さん、九条さんも。こんな所まで来ていただいて……」


 ホントに、こんな所じゃん。謙遜じゃなく、こんな所だわ。

 文句のひとつも言ってやらないと、気が済まないわ。


「ちょっとー! なんじゃい、ここはー! くっせーし、きったねーよ! 私たちったら、花も恥じらうお年頃女子なんだよ!? たのむよ、沖田ちゃんさあ!」

「すみません……とりあえず乗ってください」


 え、もう外に出たいんだけど。行きたくないんだけど。

 そんな私たちに構わず、沖田ちゃんはエレベーターの中から呼びかける。


「どうしました? 私の仲間が待っていますので」


 ええ……行きたくねーけど。

 はあ、仕方ないね。ここまで来ちゃったしね。

 ある意味、ダンジョンアタックする時以上の覚悟を決めて、エレベーターの中に乗り込んだ。



 チーンと間の抜けた音と共に3階に到着。

 降りた先には短い廊下と、もはや歴史を感じる古びたドアが3つ並んでいた。


「こちらです」


 手前のドアを開けた沖田ちゃんが、そのまま中に入るので私たちも続く。

 中には時代を感じる机と椅子、ボロボロの大きなソファ、それと棚がいくつか。全体的にボロいけど、掃除はされているようでひと安心だ。

 そして沖田ちゃんの仲間たちが、思い思いの姿で待ち構えていた。


 手前に立っているのが、銀ぶちメガネに黒いパンツスーツの女だった。すらりとした体形にピンと伸びた背筋。身長はそれほど高くなさそうだけど、姿勢がいいからか大きく見える。ちょっと怖い感じがする人だね。


 その近くに同じく立っているのが、フェミニンな感じの服装で優しそうな雰囲気の女。この人がいるだけで、ぼろビルが華やぐような感じがする。いい感じのお姉さんだ。


 そして奥の椅子で足を組んで座っているのが、派手な柄のワンピースの女。化粧も髪型も派手で、顔もちょっと怖い。不良だね、こいつ絶対不良だわ。


 これに和装の沖田ちゃんを加えた4人組ってわけね。

 パッと見て気づいたけど、全員がおそろいの青い腕輪をつけている。個性の違う人たちだけど、仲良しみたいだね。



 しかし、やっぱ年上のお姉さんたちは迫力あるわ。

 ふっふっふっ、でも私にはお見通しだよ。小娘だからって、なめないでほしいよね。

 こんな足立区のおんぼろビルに呼び出して、これで主導権を握ったつもりかね?


 まずは立派な成人女性として、一発あいさつをかましてやる!


「おいすー! 私、永倉葵。よろ」


 いつものしゅたっと手を上げる、愛嬌も愛想も満点なあいさつ。

 今日も円滑なコミュニケーションが取れること間違いなしだ。

 そして、さらに。


「お近づきの印に、こいつをどうぞ」


 手土産だ!

 こいつはめちゃうまのバウムクーヘンだからね?

 なんと、メロンの形を模したすっげえやつだからね?


 銀ぶちメガネのお姉さんは怖い顔を少し驚きに変えて受け取った。

 ふふんっ、このメロンバウムのすごさが、パッケージからでも伝わってしまったかね?

 決まったわ。早くも流れをつかんだわ。


「……あ、ああ。そうか、ありがたくいただこう」

「うん、あとで4人で食べてよ。あ、こっちはマドカとツバキね、私のマブダチで大事な仲間だから。沖田ちゃん、そっちも紹介してよ」


 これから仲間になるかもしれない人たちだ。私もちゃんと覚えよう。


「まずは座りませんか? あちらのソファへどうぞ」


 ぼろいソファに並んで座り、その正面に銀ぶちメガネと沖田ちゃんが座る。フェミニンなお姉さんはペットボトルのお茶を出してくれたあとで、もうひとりの派手な女の横に座った。

 すると銀ぶちメガネが切り出す。


「私がこのパーティーを取りまとめている大蔵銀子だ。そっちは水島梨々花と黒川まゆ、それとこの沖田瑠璃と合わせた4人で活動している。簡単に自己紹介すると、我々は全員が高額な借金持ちであり、前科者だ。返済に苦労しているし、パーティーメンバー集めも上手くいっていない」


 とても正直な、そして簡潔な自己紹介ですな。


「我々は普段、債権の回収を仕事にしているが、それがない時にはダンジョンで稼いでいる。だがそれでは借金がなかなか減らず、困っているのが現状だ。これを打破するにはダンジョン下層に進み、稼ぎを大きくするのがもっとも現実的かつ、我々が許容可能な方策なのだが、残念ながら有能な仲間が集まらなくては、ダンジョン下層にはとても進めない。こうした事情から、そちらに申し入れた次第だ」


 よくわからんこともあるけど、とても正直に事情を話してくれますな。


「そちらの目的については瑠璃から聞いている。ダンジョン下層へ行き、レベルを上げることが当面の目的なのだろう? 我々としては共に下層へ挑める仲間がほしい。そちらの条件に合うなら、手を組めるのではと考えているのだが……その条件を聞く前に、我々のほうに聞きたいことはあるか?」


 ほう、質問タイムですかい。


「じゃあ遠慮なく。なんでこんなトコに住んでんの?」


 マドカの視線を感じたけど、わかっているよ。たぶん、借金の額とか犯罪歴とか、ハンターとしての得意分野とか、そういうのを聞いたほうがってことなんだろうけどね。でも気になるからね。


「……好き好んで、ここに住んでいるわけではない。与えられた場所だからだ。我々はここを勝手に動くことを許されていない」

「許されてない? あ、もしかして借金絡みでってこと?」

「そういうことだ。これが何か知っているか?」


 青い腕輪を示された。4人おそろいのやつだね。仲良しの証では?


「これは魔法道具の一種で、契約の腕輪というものだ。奴隷の首輪みたいなものだな」


 なにそれ。奴隷って、マジかよ。


「主には高額な借金持ちが、債権者から逃げられないようつけられるものだ。これがある限り、どこにいようが居場所がわかる仕組みになっている。珍しい道具だから、世間一般には知られていないと思うが」

「ふーん?」

「表にホームレスのジジイがいただろう? あれは監視役であり、もうひとつの首輪でもある。常に見張っているぞ、きちんと働いて金を返せと、日常的にプレッシャーをかけられてるということになる」


 なんだそれ、最悪じゃん。

 公園で寝泊まりしていた時の私なんかよりも、ずっと最悪じゃん。


 借金はともかく、奴隷に見張り? パワーワードが多すぎるわ。

 それにしてもだよ。え、ヤバすぎない?

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― 新着の感想 ―
大学のクラブ棟を思い出す
更新お疲れ様です。 状況を聞く感じ、全員かなりイリーガルな所から借りちゃってるってことですかね…。借金の額や利息、結構な数字なんじゃないかなこれ? それでは今日はこの辺りで失礼致します。
これが法で許されてるならヤバいなw
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