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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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予期せぬ一本釣り

 クランハウスや今後のことを話しつつ、3人でちょっと早めの晩メシを食べ終えたら解散した。

 いつものホテルに帰りがてらに思う。クランハウスに住むようになったら、あのホテルに泊まる機会は激減するんだよね。ひょっとしたら、二度とないのかも。


 もう慣れ親しんでしまったから、ちょっとさみしい気はする。フロントの雪乃さんとは仲良くなれたし。

 少しだけしんみりした気持ちになりながらホテルに帰れば、フロントにはいつもの姿があった。なんだか安心するわ。


「おいすー、雪乃さん。ただいま」

「お帰りなさい、葵さん」


 ほかに客はいないし、暇な時間っぽいね。よし、お話しよう。


「ちょっと聞いておくれよ」

「どうしたんです?」

「伝説のダンジョンハンターとか、もてはやされてる蒼龍のおっさんがさあ!」


 聞いておくれよ!


「今日はクランハウスの譲渡の話でしたか? そんな話をしていましたね。でも葵さん、あの蒼龍を人の耳がある所でおっさん呼ばわりしてはいけませんよ」

「はい、雪乃さん! それはそうと都心にあるやつくれーって話してたのに、くれたのは練馬だよ、練馬! 全然、都心じゃなくてびっくりだよ」

「どんなクランハウスだったんですか?」


 聞いて驚いておくれ!

 あ、ダンジョンがあったことは秘密だったかな?


「えっと、それが超でっかい屋敷でね? 庭に噴水とか池とかあったんだよ。それにバラがめっちゃいっぱい咲いててさ、すごかったわ」

「立地には不満でも、クランハウス自体は気に入ったのですか?」

「よかったとは思うけどね。むしろ広すぎ? 私たちってまだ3人しかいないからさ、管理がきついよねって話になって」

「それはたしかに、3人では難しそうですね。誰か人を雇うのですか?」

「うーん、他人を家に入れるわけじゃん? そこらの素性のわからん奴はやっぱイヤだし、なかなか難しいわ」


 なんと言っても、私たちったら花も恥じらう若い女子だからね。

 身元のしっかりした、仕事もめっちゃできる系の女の人を雇いたいよね。まさに雪乃さんみたいな。


「人員についても蒼龍に相談してみてはどうですか?」

「やっぱそうするしかないかー。雪乃さん、いまの給料の3倍払うから、私たちのクランハウスで働かない? 執事みたいな仕事内容で、住み込みでさ。クラン作ったら、クランメンバーにもなってくれちゃったりしてさあ」


 そうなれたら嬉しいよね。

 あ、雪乃さんが給料いくらもらってるか知らんけど、一般的にホテルで働いている人ってどのくらいの収入なんだろう? バカみたいな高給取りってことは、たぶんないよね。


 まあ無理だろうけど、こんな人に屋敷の管理を任せられたら、私たちはハンターらしくダンジョン探索に集中できるんだけどなー。


「……なるほど、3倍ですか。いいでしょう。いまの仕事の引継ぎがあるので年内は厳しいですが、年明け早々からでも構いませんか?」


 は? え、マジで? あれ、私の勘違いじゃないよね。

 会話の流れ的に、私に雇われるって話で合ってるよね?


「あのー、本気で言ってる? 私のところで働いてくれるって意味で合ってる?」

「冗談だったんですか?」

「マジで? いいの?」

「いまの仕事より、葵さんが作るクランで働くほうが、働き甲斐がありそうと思っただけです。お金に困ってはいませんが、収入が多いに越したことはありませんから」


 雰囲気的に、雪乃さんは実家がすごそうな感じあるしね。そういう意味でも、信用できるし心強い。

 それにしてもだよ。マジか。言ってみるもんだね。


「やった! あ、そうすると夕歌さんも誘ったら来てくれるかな?」

「夕歌はダンジョン管理所の職員のままのほうが、何かと都合よく使えると思います。私のほうからも、この件については話しておきます」

「おー、それもそうだね」

「そうですね。先を見越して、私の部下として働く人員をあと2人一緒に雇ってもらうことはできますか? 私の後輩の女性です。あくまで事務員ですので、人数の限られたクランメンバーにする必要はありません」


 なんと、それはラッキー。雪乃さんが連れてくる人なら、もう無条件で歓迎だよ。


「うん、雪乃さんひとりに全部お任せってわけにはいかないよね。必要な人員は確保してもらうってことで、お金もちゃんと払うよ。マドカとツバキにも話しとくね」

「では明日にでも4人で話しましょうか。雇われるにあたって、私の経歴もきちんとお話しておきます」


 さすが、ちゃんとしてる。


「雪乃さん、最初に言っておくけどね?」

「なんですか?」

「私、こまけえことは考えたくないのです。わからんことも多いのです。今後はあれこれ雪乃さんに任せちゃうと思います。だから、いろいろたのんます!」

「はい、わかっています」


 やっぱ頼りになるわ。

 同じ成人女性として、いずれはこうなりたいものよねー。



 そのあともほかの客が現れるまで、なんやかんやと雑談し、部屋に戻ってから備え付けの電話でマドカには知らせておいた。

 ちょろっと考えただけでも、今後は大変になりそうな気がする。


 いままではダンジョンで魔石やアイテムをゲットして売ったら、単純に独り占めか3人で分ければそれでよかった。

 でもクランハウスをもらって、雪乃さんのように誰かを雇うなら、これまでのようにはいかない。

 あのでっかい屋敷を維持していくためには、あれこれと必要な物もあるだろうし、個人の口座とは別にパーティーというかクランとしての口座でもお金を管理していかないと。


 そういう意味でも、やっぱ雪乃さんに頼りたいわ!

 ありがてーわ!


 ところで給料3倍って、いくらになるんだろ。

 まあ、大丈夫だよね? めっちゃテキトーなこと言っちゃったけど。

 私たちったら、貯金も稼ぎもすっごいあるから、たぶん大丈夫だよね。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 まぁ雪乃さん引き抜けるならお金に糸目をつけてはダメでしょうなぁ…しかし簡単に三倍って言って良かったのかな? 流石にないでしょうが……海外から「こんな高額取りさせてる日本ダメ過ぎや…
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