問題の多すぎるクランハウス
超立派なお屋敷を手に入れた!
細かい問題はあれこれあって、対応しなきゃいけないことが盛りだくさん!
まず、3人ではとてもじゃないけど管理しきれない!
掃除だけで死ぬほど大変!
ちょっと想像しただけでもう嫌になる!
だだっ広い庭とかどうすんの! 手入れとかできるわけねーわ!
大した時間もかからずに、廃墟みたいになっちまうよ!
あと場所が練馬!
全然、都心じゃねーよ!
渋谷とか六本木とかの、わかりやすい都心がよかったんだよ!
おまけでついてきた特殊なダンジョンも謎!
危険極まりないダンジョンとか、その上に住むのかよ!
ホントに大丈夫なんかー!
うおいっ!
問題ありまくりだろ。
クランハウスをもらえたね、嬉しいね、よかったね、で終わらせてくれよ。
まったく、まったく。世の中、甘くないわねー。
ひとまず練馬から神楽坂に引き上げて、お茶をしながら今後の話をすることにした。
本当はもっとゆっくり、あれこれ根掘り葉掘り聞きたかったのに。それがやり手の執事に、ほかの来客予定がどうのとやんわり追い出されてしまった。
「とりあえずさ、今年中には引き渡すとか言われちゃったけど、ギリギリまで引き取らなくていいよね?」
蒼龍のおっさんみたいに、執事とかメイドとかを雇うにしても、信頼できる人でなければ一緒には暮らせない。暮らすどころか、一時的に家に招き入れるのもちょっと嫌だ。
マドカとツバキだって、素性のよく分からん、テキトーな人は嫌に決まっている。
「うちも、それがええ思う」
「あの蒼龍に迷惑をかけるのは気が引けるけど、あたしたち3人だけではちょっとね。最悪は九条の家の伝手で、信用できるお手伝いさんを手配してもらう方法はあるけど」
「おー、それはありがたいかも。でもまあ、私たちのクランハウスだからね。自分たちで人も集めたい気はするね」
「魔法道具はどうなん? 家や庭を管理できる魔法道具はあったはずや」
あ、そうか。お金かかってそうだし、実はすでにそういうものがあってもおかしくないかも。
「そうね。細かいことはまた聞いてみましょ。蒼龍だって、あたしたちが3人なのは知っているから、あまり心配はいらないと思うわ」
「てゆーか、そのくらいの準備してから引き渡せよって感じじゃん。ちゃんとやっといてくれーって、あとで電話しとくわ」
「アオイ、くれぐれも失礼のないようにね」
まったく、レジェンドなんて言われているおっさんが、若い女子に迷惑かけないでほしいよねー。
なまじレジェンドなんて言われて、ちやほやされているおっさんだよ。世の中、イエスマンだけじゃねーんだよ、甘くねーんだよと、教えてやるのもヤングの務めだよね。きっと。
「それよりさ、練馬ダンジョンだっけ? ヤバそうだったよね?」
「超高難易度ダンジョン、言うとった」
「そうそう、超高難易度だよ。ダンジョンに難易度なんてあったっけ?」
モンスターが手強いとかどうのとか、厳しい環境がどうのなんて話は聞いたことがあるけど、あからさまにどこそこのダンジョンが高難易度とか、そんなのあったかな。
「富山のガラスの森ダンジョンは、難易度が高いって言われていたわよね?」
「あ、そういやそんなこと言ってたわ。あのガラスと光の環境は、たしかに難しかったね。モンスターはむしろ弱かったけど」
「そやけど、練馬のはそんなんとはちゃうって話やんな?」
蒼龍に軽い雑談の中で聞いた話では、上層からでももっと人数を増やしてから挑戦しろとか、そんなことを言っていた。3人では危険だからやめておけと、割と真剣な調子で言っていた気がする。
単なる忠告だけではなくダンジョンへの扉に、必要な条件を満たさないと開かないような設定までされてしまった。私たちのことを考えた上でのこと、みたいだけどね。
「難易度かー。もしかして、私の『ウルトラハードモード』なダンジョンと似たような感じとか?」
「そのダンジョンにアオイのスキルが作用した状況は、どんなことになるのかしらね……」
おっと、それはそうだね。
元からウルトラハードモードみたいなダンジョンに、スキルの『ウルトラハードモード』が作用するとか、それってとんでもなくない?
本当のところは入ってみなければわからんけど、たしかに想像しただけでもヤバそうな感じはある。
「挑戦するにしたかて、人数必要やな」
やっぱり頭数か。沖田ちゃんたちと上手いこと話が進めばいいし、それでもやっと7人。パーティーメンバーがそろった感じにしかならない。
クランとしてやっていくなら、もっと数を集めないとだ。
「そうだ! いっそのこと個別に勧誘するんじゃなくて、募集かけちゃうってのは? 手っ取り早くない?」
「あたしたちで面接するの? ものすごい人数にならない?」
「すっげー厳しい条件つけてさ、そうすれば応募は減らせるよ。たぶん」
「嘘はどないして見抜くん?」
あー、なるほど。嘘で条件をすり抜けようとする奴はいるだろうね。それを見抜くのはちょっとムズイわ。
蒼龍のおっさんみたいな眼力があればいけそうだけど、私たちには無理だよね。
「しゃーない。やっぱ地味にやっていこうかね」
「もし、沖田さんたちが仲間になれば、そっち経由でも仲間は集められるかもしれないわ」
「それもそうだね。やっぱまずは沖田ちゃんたちだよ」
「近いうちに、双方の全員で会う機会を作るわ。日程は向こうに合わせる形でいいわよね?」
「いいよ、早くやりたいね」
上手くいけばいいし、ダメならダメで早く結論を出したい。
どんどこ次に進んでいきたいからね。命短し戦えよ乙女、というくらいだ。ぐいーんと成長できちゃう若者でいられる時間は短い。足踏みしている暇なんて、ないのだよ。
「よっしゃ、セッティングは頼んだよ。あとはもし奇跡の出会いで、そこら辺でいい人見つけたら誘ってみるってことで」
「そんな出会いがあればね。とにかく、メンバー集めにも気を払っていくということで、みんなでがんばりましょ」
「おうよ!」
「わかった」
偶然の出会いなんて期待は薄いけど、万が一はあるからね。心構えだけはしておきましょうね。
まあ、そんな奴がいないから、私たちはずっと3人なんだけど。簡単には見つからないよね。
いい奴がいたら、私なんかもうすぐに声をかけちゃうよ。
それにしてもクランハウスに謎のダンジョン、難航しそうだけど仲間集めもある。
大変でも先を考えると、面白いことがいっぱいだ!




