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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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大豪邸の秘密

 蒼龍のおっさんのまさかの言葉に、脳ミソが超絶フル稼働する。

 ちょっと待てい。


 聞き間違いでなければ、ここが私にくれるクランハウスと言ったよね。

 このお屋敷は一般的なものと比べたら、遥かに立派なのは認める。それはそれは超立派だよ。でもクランは最大で50人が所属できたはず。

 ということは、そのクランハウスには50人が暮らせるだけの部屋がないとおかしいことになるのでは?


 50人だよ、50人!


 人数分の部屋の用意だけでも、ちょっとしたホテルみたいなものだよ。

 さすがにこの大きなお屋敷でも、それだけの部屋数があるようには見えなかった。上は3階くらいかなと思ったけど、そこそこ広い3階建てでは、とても50もの部屋は無理だよね?


 それとも私の想像以上に、広さがハンパないのかな。

 あ、まさかカプセルホテルみたいな部屋があるわけじゃないよね?


 いや、あれ、ひょっとしたら私の考え方がそもそも違うのかな。

 クランハウスって、みんなが暮らす場所じゃなくて、集まる場所的な? そういうこと?

 そうだとしたら、もう少し狭くても都心のほうがいいわ。


 やっぱ都心だよね、都心。渋谷とか六本木とかさ。

 クランを作ってやっていくなら、その拠点が都心と練馬じゃあ、社会的なステータスが違うもん。


 あ、練馬って都心のうちには入らないよね? あれ?

 練馬ってまさかの都心だったり?


「マドカさん、ツバキさんや、ちょっと『都心』という言葉の意味を調べてくれないかね?」

「急にどうしたの?」

「……葵姉はんが聞きたいんは、練馬が都心に含まれるかってことやな?」

「そうそう」


 大事なポイントだよ。


「そういうことなら知ってるわ。いくつか考え方があるけど、いずれにしても練馬区は違うわね」

「ほーら、やっぱ違うじゃん! 蒼龍のおっさん、私は都心でブイブイ言わせたいんだよ。練馬はさ、ちょっと違うじゃん!」


 正当な文句を垂れたつもりなのに、蒼龍のおっさんはこれ見よがしに呆れた顔をしている。いまにも盛大な溜息まで吐きそうだ。

 いや、まあタダでもらうのに、あんま贅沢言うのはおかしいのはわかるけど。わかっているんだよ。


 でもさあ! どうせならいいやつほしいじゃん。


「そう言うな。ここを譲り渡すことには意味がある。付いてこい」


 テカテカスーツのおっさんは立ち上がると、さっさと部屋を出て行ってしまう。

 え、なに? 私たちは顔を見合わせてから、慌てて追いかけた。



 広い屋敷の奥まった場所まで進むと、左右の壁に大きな窓のついた渡り廊下に入った。

 バラの咲いたお庭が素敵ですねー、なんて思わず言いそうになってしまう景色を見ながら歩けば、行き止まりに洋館には似つかわしくない未来的な扉があった。

 なにあれ? 素敵な洋館の雰囲気がぶち壊しじゃない? 蒼龍のおっさんは、そこで待ち受けていた。


「このパネルに手をかざせば、星魂紋を読み取って扉が開く。こんな風にな」


 私たちが追いついたら、勝手に話し始めて、勝手に進めていくおっさん。

 シュイーンと扉が横にスライドして、その向こうが見えた。

 ちょろっと見える内装の雰囲気が、明らかに洋館とは違う。金属感バリバリの、なんか未来チックな雰囲気なんだけど。なにここ。


「入れ。こっちがクランハウスの本体だ。あの屋敷は言ってみれば訪問者用だ、来客対応にでも使え。この本体は外からは見えんようにもなっている。関係者以外に、余計なことは話すなよ」

「こっちが本体って、マジかよ。それに外から見えないって、カモフラージュ的な? 秘密基地的な?」

「部外者に余計な情報を与えないためだ。入るぞ」


 すげー。でもなんでそんなことをすんの。どういうことよ。

 とりあえず招きに応じて入ってみれば、たぶんロビー的な空間なのかな。ソファやらテーブルやらが、適当に設置されているし、天井も吹き抜けで広々とした感じだ。金属感バリバリで、おしゃれ感は全然ないけど。


 漠然とした感覚だけど、やたらと広い。さっきまでの洋館よりも広くない? 外からは全然わからんかったわ。


「2階から4階が居住部で、簡単に言えばマンションの部屋のようになっている。1階は共用部だ。たいていの設備はそろっているから、あとで確認しておけ」


 え、なんかもうここをもらうことで確定しようとしてない?

 練馬じゃなくて都心がいいんだけど。ここがすごいのはわかったけど、やっぱ都心のほうがさ、おしゃれ感あるし便利だしさ。


「次が本命だ、来い」


 本体の次は本命?

 なんだってのよ、まったく。どんどん話を進めちゃって。


 蒼龍はロビーの奥の未来感あふれる扉に、またピッとやってシュイーンと開けると、とっとこ歩いていく。

 短い通路の先にはまた同じ扉があって、扉多すぎだろと思いつつも、そこが開けばあら不思議。


「な、なんだー、ここ!」


 扉の先には大きな空間があった。そしてのその中心には、地下に向かって続く大きな穴。

 どう見てもダンジョンの入り口だった。



 普通に考えて……いや、ウルトラアクロバティックに考えても、ちょっとどころじゃなくおかしいよね。

 ダンジョンっすよ。


 違法? このおっさん、犯罪行為をしているのでは?

 ダンジョンを自分のモノにしているとか、ちょっとヤバくない?


「何を考えているか知らんが、この『練馬ダンジョン』の管理者は東京都によって俺が登録されている。だが永倉、お前が俺の代わりになる手配を進めている。手続きが終われば、お前が管理者だ」

「あ、あんですと? どういうこと?」


 イチから説明しろや。わけわからん。

 マドカとツバキも、私と同じくうんうんとうなずいている。


「そうだな、花やしきダンジョンがあるだろう」

「え、あるけど……それがなによ?」


 第一階層しか存在しない、ハンター絡みのイベントによく使われるダンジョンだ。ついこの前の蒼龍杯で使ったばかりだね。


「ああした特殊なダンジョンの多くは、政府機関や自治体、あるいは許認可を受けた研究所が押さえているのは知っているな? ここはそうした一般には開放されていないダンジョンのひとつだ」


 うあー、聞いたことがあるような、気がしなくもないね。たぶん。


「……なるほど? まあ、ここも特殊ってこと?」

「極めて危険なダンジョンだ。だから一般に開放されていない。こうした危険なダンジョンは全国にいくつかあるが、国や自治体が抱えていても特に旨味がなく、研究所では手に負えん。そうした理由から、有力なクランに好きに使えと押し付けるわけだ。俺もとっくの昔に引退した身だが、ようやくこれで肩の荷がひとつ下ろせる。ただし、ここはあまりに危険だ。詳しいことは後で話すが、お前たちもしばらくは入れんように設定しておく」


 え? なんか面倒なことを押しつけようとしてない?


「ちょっと待ったー! 私、ここを引き継がないといけないの?」

「決定事項だ」

「いやいや、待てい。すっげー、めんどくさそうじゃん。嫌なんだけど」

「管理者と言っても、部外者が入れないようにするだけで、ほかに何か特別なことをする必要はない」


 こ、こいつ。開き直りおってからに。


「そんな顔をするな。部外者のいないダンジョンというのは、何かと便利だ。特に生産系のクラスを得たハンターにとってはな。九条姉妹、お前たちなら理解できるな?」

「ええ、ダンジョン入り口付近で好きにスキルを使えますから」

「利点はまだあるが、あとは自分たちで考えろ。とにかく永倉、いまから俺に代わってお前をこのクランハウスの管理者に登録する。管理者代行は九条姉妹でいいな? 変えたければあとで好きに変えろ」


 どんどん勝手に進めてしまう蒼龍のおっさん。


 うん、どうやら逃げ道はないらしい。

 勝手にやられてムカつくし、わからないことだらけ。

 でもクランハウスをもらえるだけで、ラッキーと言えばラッキーなんだよね?


 じゃあ、まあ……いいのかな。特別なことはしなくていいって言ってるし。


 うーむ。しっかし、練馬かー。それが微妙だけど、立派なお屋敷が私たちのものになると思えば、悪くないような気はしてきた。

 だって庭にバラが咲いてるし。超カッコいいわ。

 それにダンジョン付きとか、考えてみればめっちゃおもろいね。秘密基地的なクランハウスとか、とんでもないし。


「ふいー、しゃーないね」


 私たち3人の立派なお家が手に入ったんだし、いいよね。小難しいことはマドカに任せよう。

 家がでっかすぎてだいぶさみしい感じはするけど、これから仲間を増やしていけば、だんだんにぎやかになっていく。

 そういうことも、楽しみにできるのかな。


 いやー、やっぱ渋谷とか六本木がよかったわ。

 でもまあ、しゃーない!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です&100話到達おめでとうございます! 何か変わったとこ譲って来たなぁ…と思ってたら、なるほどそういう裏事情が有りましたか。 多分これ葵ちゃんが出場しなかった+出場者がクランハウスを希…
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