道案内はクリームソーダちゃんでした
「小説家になろう」内で現在開催されている「クリームソーダ祭り」という個人企画に惹かれた。
どんなクリームソーダが出てきても構わないが、サクランボは必須。
惹かれた理由は、そのバナーやイラストがかわいかったから。
そもそもの発端になった辻堂安古市さま作の『クリームソーダ漂流記』というエッセイにも目を通す。
ふむ。とにかくクリームソーダの歴史をさらっと攫ってみようと、インターネットの海へ。
もちろん、クリームソーダを飲んだ私の歴史もあるにはあるが、実はあまり覚えていない。
どこかで飲んだなぁ……。
思い出そうとすればするほど、セピアが濃くなって、「なんだか飲んだような気がする」というだけのものになってしまうのだ。
きっと、それらは幼き私の少食体質からくるもの。
外食でデザートはほとんどなかったのだ。
夕食に堪えるから……。
デザートでの一番強烈な思い出が、人生初のパフェに喜び、半分以上残してしまったことだったからだろう……。喜び勇んで食べ続けたが、結局残してしまうという、敗北感が残っている。小学生の頃だ。
話が逸れてしまった。閑話休題。
歴史を調べた結果、その歴史が意外と古いことが分かった。
120年以上前。
えっ、明治時代??? しかもソーダの歴史自体は江戸後期からあるんだ……。
せいぜい大正くらいだと思っていたんだけど……。
日本での発祥は、資生堂パーラー銀座店。1902年開業らしい。
なんと、本気で歴史分野で書けるんじゃないか?と思えるほどに古かった。
でも、主人公がクリームソーダだったら、ドキュメント風コメディになるのだろうか?
そんな風に考えると、クリームソーダちゃんがナビゲートするドキュメント仕立てが頭に浮かぶ。
いやいや、私にそんな力はない。検索を続けてみよう。何か思いつくかもしれない。
そもそも、日本のクリームソーダに影響を与えた1800年代のアメリカでは、薬局で売られていたそうだ。
それも、治療薬として。
ソーダにシロップや砂糖を混ぜたもの。
まず、頭に『?』が浮かんだ。
何に効く治療薬だったのか、よく分からない。甘い物はカロリーが高いから、滋養薬だったのだろうか。ソーダの歴史からはよく分からなかった。ただ、その色づけに使ったものが薬品だったのだから、薬局からという理由は少し分かる。
ただ諸外国ではメロン色ではないらしく、茶褐色が多いそう。
そして、1874年にアイスクリームが載せられて、いわゆるクリームソーダが生まれたようだった。
そこで現れたのが、1900年にパリ万博の帰りに欧米視察のためアメリカに訪れていた資生堂創業者、福原有信。
その飲み物に、魅了された彼は、それを日本に持ち帰り、本場から全ての機器(スプーン・グラス・ストローに至るまで)を取り寄せて日本で開業してしまったのだ。
それが資生堂パーラー銀座店の前身である『ソーダファウンテン』らしい。
そしてそのこだわりは、どこまでも100%
もちろん、『ソーダファウンテン』は資生堂薬局内に開設されていた。
しかも、さすが日本の有名な会社の創業者。行動が早い。開業まで二年掛かっていないのではなかろうか。
やっぱり、歴史で書けるんじゃ……。パリ万博だよ、今、旬の。
そして、アメリカへの視察旅行だよ。冒険いっぱいじゃん。しかも、時代的に船と列車の旅。もしかしたら、通訳とかもいたかもしれないし。
この辺りはさらっとフィクションにしてしまえば、……。
さらに調べていくと、なんとかの文豪・森鴎外まで愛したというほっこりエピソードまで出てくる。
写真を眺める。
黄色や緑のソーダ水の上にバニラアイスが上品に載っかっている。
当時、あんパンが一銭で買えたところ、その価格二十五銭。
えっと……今の感覚で言えば高級レストランで戴く霜降り和牛ステーキ百グラムくらい??
あんパンが100円だとしても、2500円。
ジュース一杯2500円。マジか……。
貧乏気質の私にそのレベルの感覚を書くのは難しいかも。
そうか……森鴎外はトップクラスの給料をもらっていたのか。その彼ですら普段は食べられず、娘のおねだりに困っていたと書いてある……。これは、金銭感覚のない貴族の感覚だな。
フィクションで書くとして……。
『婚約破棄だ』の王子様なら何にも考えずに、しおらしく演技している悪役令嬢さんと毎日飲んでそう……。
それを明治時代の生活に合わせて持ってこなければならないのだから、時代考証をしっかりせねば、えらいことになる。
そこまで考えて、企画の趣旨を思い出した。
そもそも私の求めているクリームソーダとは違うんじゃないか?
もう一度ソーダファウンテンのクリームソーダを眺める。
絶対条件であるサクランボが載っていない。さらに言えば、私には、明治時代の考証も福原有信も森鴎外も描ける筆力と想像力もない。
うん、諦めよう。
そう思い、姪っ子が帰ってきている実家へと向かった。誕生日なのだ。
えっ。
実家の扉を開けるとナビゲータークリームソーダちゃんが私を出迎えていた。
姪っ子(四歳)がスライムと粘土で作っていました。ありがとう、姪っ子(笑)おかげで漂着できました。
※歌池 聡さま作
https://ncode.syosetu.com/n1754jl/「クリーム・ソーダ事始め」
にて、もっと詳しいクリームソーダの歴史が書かれています。歴史物語もあります!
ご興味のある方は是非。
※参考にしたネット記事
https://magazine.tabelog.com/articles/164126「なぜ時代を超えて愛されるのか? 「クリームソーダ」の魅力と100年の歴史」
https://parlour.shiseido.co.jp/history/「資生堂パーラーホームページ」
https://corp.nippon-dept.jp/column/206/「日本百貨店 ハローNEOニッポン」
ウィキペディアでも調べていますが、あまり載っていませんでした。
※サクランボの絶対条件は、イラストの条件でした。書いている時は勘違いしていました。