一話
「うわっ!?」
「召喚に成功したぞ!」
「ようこそお越しくださいました、勇者様」
美人の女性が男子高校生に歩み寄る。
「わたくしはエリー・デ・ロザリナと申します。ここロザリナ王国の第一王女です。」
「勇者様のお名前は?」
「神崎優斗です。」
そんな簡単に名前を教えるなんて。警戒心ないのか?
「優斗様……、いいお名前です。」
王女は蕩けた顔で小さく呟いた。
「それで、僕が召喚された理由って?」
そうそう、俺もそれが聞きたかった。
はっと我に返ると、説明を始めた。
「一年程前、古代の魔王が復活しました。それにより各地のダンジョンが活性化し、魔物が凶暴化してます。」
王女は震える手で少年のシャツを握りしめた。
「勇者様。どうか、この世界をお救いください……!」
潤んだ瞳で神崎優斗を見つめる。
「僕にできることなら、任せてください!」
「では、謁見の間へ。国王がお待ちです。」
神崎優斗と王女は腕を組んで去っていった。
その一方で俺は召喚の間に取り残された。なんで?
後ろで兵士たちがヒソヒソと内緒話をしている。たぶん、“こいつどうする?”的な内容だろう。
なんか神経質そうなヒョロい眼鏡の人と、厳つい鎧の強そうなおっちゃんが出てきた。
「私はこの国の宰相です。」
「この水晶に触れてください。」
なんだこれ、鑑定用の魔道具か? ちょっとワクワクする。
右手で水晶に触れる。水晶が強い光を放った。
「おお……!」
光が収束し、結果が表示されたようだ。どんな内容だろう?
宰相の俺への視線がゴミを見る目に変わった。いい結果が出なかったのだろう。
「ゴミは必要ありません。」
言いやがったぞ、こいつ。毒舌だな。
「なので、ここで殺されるか、この城を出て行くか。選びなさい。」
はあ……、面倒くさいなぁ。
「出口まで案内して頂いても?」
「騎士団長、彼を案内しなさい。」
ごついおっちゃんに連れられて出口まで歩いた。
別れ際におっちゃんは小さな袋を差し出してきた。
「中に少しの金が入っている。役に立ててくれ。」
「こんなことしか出来なくて申し訳ない。」
深く頭を下げた。
ありがたく袋を受け取り、俺は城を後にした。