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八重する企みと囚人たち Lv.4(二十四話)

 シャーフが出て行ってどれほど時間が経ったのか。

 流石に遅いと感じ、アシュメは時計を見る。


「遅いわね……」


 レイピアを手に取り、腰に添えた。


「少し、見回りをしてきます。良かったらご一緒にどうですか♡」


「すまんが、遠慮させてくれ」


 冗談混じりのお誘いだが、断られると寂しいもの。

 残念そうに眉を顰めてからシャーフを探しに見回りに行く。


 最近はお預けが多く、ストレス気味だ。

 そろそろ、発散しないと、とアシュメは考えてしまう。


(久しぶりに彼に甘えたいわ)



 

 アシュメ看守長が出て行った後。

 ようやく、一仕事終えた気分になる。


(全く……なんなんだよ、あの女は……)


 家族に会いたいと思い始めた。

 突然、耳を塞ぎたくなる様な甲高い音が響き渡る。


「フリー・ギフト・デリバーズ!」


 次の瞬間、開錠の呪文が大きく鳴り響く。


(聞かされていた呪文とは違うが間違いない!)


 ルークは剣を取った。


 階段を駆け上がる足音が聞こえてくる。


 バン!


 扉が蹴破られた。


 見ると囚人服を着た者たちが有り合わせの武器を持っている。

 モップ、バケツ、レイピアに、その鞘。

 看守から奪ったのだろう。


「へっへへ、あのババァはここにいないのか?」


 ルークは首を傾げる。


「?」


「看守長の事だよ」


 ヘラついた顔で囚人は親切に教てやった。

 それでもルークはピンとこない。

 なぜなら、


「彼女は俺より年下だぞ?」


 自分もそろそろ、オッさんと呼ばれてしまうのか、日頃からそんなどうでも良いことを思ってしまう。だが、まさか、自分より年下の人間がそんな風に呼ばれるとは思わなかった。


 乾いた笑いが出てくる。


「貴様ら、そこで呑気にしてて良いのか?」


 ルークは兜の位置を直しながら尋ねる。


「仮にも俺はバシレイアの兵士だぞ」


「はっ、ビビる訳ねぇだろぉが!」


 レイピアを持った囚人が切り掛かってくる。


 武器の扱いに慣れていない者だとすぐに分かった。


 ルークは素早く鞘を繋ぐベルトを外す。

 次の瞬間、パキッとレイピアは折れてしまった。


「看守ではないが……緊急事態により貴様らを鎮圧させてもらう」


 ルークの瞳がギラリと輝く。



 

 突然、響き渡る声にキャリーたちは慌てて外に飛び出した。

 同じ様に混乱している看守たち。


「村が火事だ! すぐに消しに向かわなくては」


「緊急事態です。囚人たちが暴動を起こしました」


「「なんだって!」」


 統率が取れずにいた。

 その時、外にいたヘンリクが看守たちを呼び止める。


「お前たち、動揺している場合か! ここに来て二年未満の者は麓の村に行け! 残りは囚人の鎮圧だ。一階から押さえ込め!」


 彼の一言に看守たちは一斉に統率の取れた目の色に変わる。


「「はい!」」


 すかさず、自分たちの仕事に取り掛かったのだ。しかし、最悪はまだ収まることを知らない。

 一つ目の門を開けた瞬間、北の壁から人が這い上がってくる。


 一人や二人ではない。

 数え切れないほどの人数が壁を自力で這い上がってきた。

 見張りをしていた看守に奴らは岩の様に硬い拳で殴りかかって行く。


「うわぁぁ!」


「今度は何だ!」


「ゴーレムです! ゴーレムが群れをなして襲いかかってきました」


「何だと!」


 囚人の暴動に、麓の村の火事、さらには得体の知れないゴーレムの大群。

 ヘンリクは頭を抱える。


(遊撃か……)


 悩んでいる暇はない。

 彼はすぐに顔を上げて部下に指示を出した。


「刑務所に近い者はそのまま鎮圧へ迎え。ゴーレムは見張り番と俺が対処しよう。だが、油断はするな! 数が多すぎる。自分の身は自分で守れ」


 ヘンリクは手早く杖を取り出す。


「オール・ダウン・リブストック!」


 彼が呪文を唱えると途端にゴーレムは地面に叩きつけられた。


 慌ただしい中、キャリーは立ち尽くしている。

 混乱する中で走り回れないのだ。


 他の人とぶつかる。

 だが、ここに居ても行けない。


 部屋に戻るべきか。


 考えが追いつかない。


 その時、背後に迫るゴーレムが襲いかかってくる。

 膨れた腕で叩きつけて来た。


「危ない!」


 間一髪、ダインが拳でゴーレムの頭を砕く。


「キャリー、大丈夫ですか?」


 呆気に取られていたが、すぐに頷く。


「私たちも刑務所の中へ向かいましょう」


 彼の提案にキャリーはすぐに頷いた。


「私の側から離れないでください!」


 二人は急いで刑務所へ逃げ込んだ。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

バシレイアの兵士では、細長い剣レイピアと直剣、それぞれ、異なる用途で習得します。

レイピアは、街中などの一般人が多かったり、狭い場所で戦う兵士が習い。

直剣は、戦争や魔物の討伐など思いっきし戦う兵士が習う感じです。

例外のジジイもいますがね。


「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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