八重する企みと囚人たち Lv.4(二十話)
真っ暗な独房に放り込まれるリード。
彼女はあの後、看守たちに罰として数発殴られ、ここまで連れてこられた。
放り込まれた感覚は昔、宿から追い出された時の様な感じだ。
冷たくて、暗い。そして、痛かった。
ただ、違うのはこびりつく様な泥もベタつく雨もない事だ。
「ちくしょ……」
明らかに誰かに仕込まれた状況だ。
確信はないが、カニンチェンとか言う男の顔がすぐに思い浮かんだ。
おそらく、脱獄に加わりたいと思っているのだろう。
図書室で断った腹いせに、誰かを使って仕込んだに違いない。
顔は痛むがそれよりもアンの方が心配だった。
あのビッチだ。
看守長アシュメに連れていかれた。
絶対、やばい事をされている。
「話ぐらい合わせろよ……」
ポツリと言葉が漏れた。
昔から一緒なのになんで分かんないのか、リードにはさっぱりだ。
体を起こし、あぐらをかく。
(まぁ、あいつに何かを察しろって思うのも無理な話か……)
リードは頭をかく。
顔がヒリヒリとして痛かった。
不意にどこからともなく声が聞こえた。
「とっても痛いですね。大丈夫ですか?」
幼なげな少女の声が聞こえた
「誰だ!」
辺りを見渡すが何も見えない。
そもそも、ここは一人用の独房だ。
誰かいればすぐに気づく。
姿が見えぬ声を疑り深く探した。
「ここです。ここ。この壁にいます」
声は壁の中から聞こえてきた。
リードは耳を当てて確認する。
(そんなに近づかなくても、話せるので、ご心配なく)
頭の中にハッキリと声が聞こえてくる。
「うわぁぁ、なんだ、テメーは」
姿が見えない相手は、くすくすと笑って答える。
「少し心の声を共有しただけです」
「んな出鱈目な……」
リードの呟きにえぇえぇと声が返ってくる。
「突然のガサ入れ大変でしたね。しかし、なぜ貴女の物でもないクマのぬいぐるみの中身を自分のだと主張したのですか?」
嘲笑いに来たのか?
いいや、完全に興味本位で聞いていると感じだった。
「なぜなんですか?」
そんな相手に話すものかとしかとしようと思う。
(なぜなんですか?)
今度は頭に直接語りかけてきた。
「あぁ! 気持ち悪いな! さっきからなんなんだよ。先に何者か名乗れ、クソが!」
リードは勢いよく壁を殴りつけた。しかし、固い石レンガ相手に、逆に自分の腕を痛めてしまう。
「イタッ、わ、分かりましたよ。名乗ります。だから、話を聞いてください」
(本当に壁に耳でも付いていたのか? 痛がっている……)
石煉瓦を撫でてみる。しかし、向こうの相手はなんの反応も見せなかった。
「私はロ……いえ、この名前は使いたくありません……」
名乗りかけてすぐに辞めた。
首を傾げる。
壁の向こうから不安げに尋ねてきた。
「あの? 偽名でも信用ってしてもらえますか?」
(いや、しないが?)
眉を顰める。
「そんな……」
壁の向こうから悲しい声が聞こえてくる。
自分の思っていることにすら、見られている時点で信用も何もない。
リードはイライラで叫び出した。
「あぁ! めんどくせぇ、なんでもいよ。クソガー!」
ホッと胸を撫で下ろす感覚をリードは感じる。
「!」
「良かった。では、改めて自己紹介させていただきます。わたしの名前はローズル。実は貴女が持つ、そ
の目に見込んで頼みがあるんです」
ローズルと名乗る、壁の向こうの少女。
それ以上に体に触れてもないのに触った感じがしてゾワっとする。
こう言う時は、反発するより話を合わせる様にした方がいいと思い、感じていないことにした。
「頼みって、このリード様に頼みてェならそれ相応の対価が」
「ごめんさない。そう言うのは持ってないんです」
言い切る前に断られた。
「その代わりと……言い切れるかは自信がないんですが脱獄はしばらくは控えた方がいいです」
「なんで、テメェにも知られてんだよ」
情報がどこから出て行ったのか想像すらできない。もう考えるのを辞めたくなる。が、控えろと言われても、こちらにも事情があるのだ。
「悪いがそいつは聞けない話だ。面倒事はとっとと終わらせてェんだ。脱獄は出来る限り早くにな」
「カニンチェンと言う男に目をつけられていてもですか?」
ローズルの言葉に、言葉が詰まる。
実際、理由は分からないがカニンチェンにも計画が知られている。
(無視して進めたとしても、また、邪魔をされるかもしれない)
「おや、気づいていたのですか?」
「別にただ、俺らの牢に入って嫌がらせする理由があるのがアイツだけだからだよ」
「そうですか……人事も大変ですね。でも、それ以上に」一瞬、口をつぐむ。「厄災が来るんです」
リードはこれから訪れる災いの正体について、ローズルから聞かされるのだった。
ある程度、聞き終わった後。
リードは腰を下ろして考え込む。
やがて、心の底から愉快げに笑みが溢れる。
「むしろ、好都合じゃねえか」
拷問室へ連れてかれたアン。
部屋全体に並べられた蝋燭の真ん中で中腰に立たされていた。
両手は首の後ろに、脇はよく見える様に上げさせられていた。
「はぁ……はぁ……」
甘い香りとじんわりと来る熱で頭がくらくらしていた。
「素敵よ。今までに見た事がない美しさだわ」
指の額縁で捉えながらアシュメは満足げに眺める。
ゆっくりとアンの背後に回り込み、彼女の腰に体重をかけた。
ちょっとの重さで蝋燭を踏み消しそうになる。
「頑張って♡ 蝋燭が一つでも消えたら二度とダインくんには合わせて、あ♡げ♡な♡い」
彼女の言葉に緊張が走る。
間一髪のところ、体制を整える。
「そ♡れ♡に、リードちゃんがどうなるかも分からないわよね?」
頑張る彼女の背中をゆっくりと指で、優しく、優しくなぞる。
「この蝋燭は貴女の大切な人たち。一つ消えるたびに私が彼らの人生を壊してあげちゃう♡ 頑張ってね〜」
アシュメはまた、ゆっくりと周りを歩き始めた。
アンの体をジロジロと吟味する様に。
「はぁ〜手を出したい……でも、我慢、我慢、アシュメちゃんは我慢強いの。それにしても、リードちゃんって優しいのね。知らなかったわ。薬が出てきた時、貴女を庇うなんて。あの乱暴な性格なら見捨てたり叱ったりしそうだったのに。でも残念、薬は持っている人がいけないの」
アシュメはアンの腰に触れる。
彼女の邪魔をしない様に軽く。
ゆっくりと体をなぞり始める。
(くっ……くすぐったい!)
アンは手も足も出せない。
歯を食いしばることしかできなかった。
(い、いつまで続くの……?)
アシュメによる拷問は夜明けまで続くのだった。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
四日前から体調を崩して居りました。
なんとか、投稿だけは出来てたのでいいんですけどね。辛かった~
さて、今回は連れてかれたアン、リードの二人の話です。
リードは無事そうですが、
アンは……Fateのセイバーがキャスターにされてた事されてる……
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