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八重する企みと囚人たち Lv.4(八話)

 不敵に笑う看守長アシュメ。

 彼女の底知れる狂気にたじろぐルークとダイン。しかし、アシュメにはその気がないらしい。

「なーに想像しちゃってるの。けだものに襲われちゃ〜う♡」

 おかしそうに笑うのだった。

 流石の二人もこれにはイラッとする。

((なんなんだよ、この人は!))

 そんな言葉が喉のギリギリまで出かけていた。

 食料を運ぶだけ、本当にそんな理由でバシレイア最強の兵士シルバーを呼んだら、飛んだ大間抜けだ。

 アシュメにはもう一つ、重大な問題を解決する義務がある。

「この事はあまり多くの人に知られてはいけないの。これは教会や兵士の上層部の決まり。だから、小鳥ちゃんには出てってもらったわ。まぁ、殴りにくるなんて思ってなかったけど……」

 頬を触りながら笑う。

 話が終わった後のことを考えるとお腹の下が疼くのを感じる。

 舌なめずりをして話を戻した。

「二人には手伝ってもらう為にも、事情を話させてもらうわ」

 一息、置いてからアシュメは話を続ける。

「もうすぐここに厄災が訪れる」

「厄災?」

 ルークが聞き返す。

 アシュメは頷き、出鱈目な厄災について語り始めた。

 

 問題を起こしてしまったキャリーは深く後悔していた。

 このままじゃ、オリパスやレサ姉に迷惑をかけてしまう。

 何より自分がこの後、どうなるのか分からず。

 涙が止まらなかった。

「取り敢えず、ここに入っててください」

 牢の鍵を開けてシャーフは言う。

 同情はするが、問題を起こしたのはそっちだしと、見つめる。

 キャリーはゆっくりと争うことなく中に入る。

「しばらくしたら、戻ってくるので大人しく待っててください。それと、看守への暴行は本当にダメなことなので、二度としちゃダメですよ」

「はい……」

 力無く返事をする。

 シャーフが立ち去った後、キャリーはその場に座り込んだ。

 今日一日、碌な事がないと嘆いてしまう。

 谷ではシルバーとか言う老兵に、なんだかよく分からないけど失望される。

 ここに来てからは看守長にメアリーをバカにされて、手を出してしまった。

そのせいで牢屋にぶち込まれてしまった。

(でも、あいつはメア姉の事を悪く言ったんだもん……)

 自分は悪くない、とまでは言わない。でも、相手のせいでこうなった、と思ってしまうのだった。

「子供もここに運ばれてくることがあるんだな」

 誰かの声がして顔を上げる。

 目の前には白い長髪に、枯れ木の枝のように細く長い手足をした男がニヤけていた。

「囚人同士仲良くしよ」

 片手を上げて話しかけてくる。

(囚人じゃない……)

 キャリーは涙を拭き取り立ち上がる。

「あたしは囚人じゃない」

「いいや、囚人だ」

 彼は指をさして言う。

「囚人じゃなきゃ、ここには入れられないんだぜ。家畜が入る場所が家畜小屋なら刑務所に入るのは犯罪者で囚人だろ」

 決めつけて話す相手に腹が立つ。

「お前だって囚人だろ」

 キャリーは近づいて言う。しかし、彼は認めようとはしなかった。

「いいや、僕は囚人じゃない。何者でもない……」

 彼は目を逸らして呟く。

 なんだ、こいつ、とキャリーは訝しんだ。

 男は気を取り直して尋ねてきた。

「君は何をしでかしたんだい?」

「……」

 答えるか否か迷ってしまう。

 話さなくても分かる。

 きっと、彼は否定してくるのだろうと思ったのだ。

「この様子だと答えられない程の罪をやったんだろうね」

 決めつけてくる相手に、キャリーは思わず叫んだ。

「違うもん!」

「違わないさ、話さないんだからね」

 胸の内から吐き出したい大きなものが出来てくるのを感じる。

 このままでは変な風に決めつけられると思ったキャリーは正直に話す事にした。

「ただ、看守長? を殴っちゃっただけだもん」

 力無く言う彼女に対し、男はそらみろと指差して笑った。

「ここでの看守への暴行は重罪だ。その上、看守長にまで手を出すなんて、やっぱりじゃないか。君、ここの看守長の事を知っているかい? 知らないだろうね。可哀想に明日まで正気でいられないだろ」

 こうも、あーだ、こーだ、言われると悔しくても言い返す言葉が見えなくなる。

 キャリーは顔を赤くしてカッと睨みつけていた。

「睨むのはよくない。さっきも言っただろ。囚人同士、仲良くしよって。君、名前は?」

 彼の質問にしばらく答えなかった。

 せめてもの腹いせではない。

 言い返すための準備だ。

 イライラしすぎて喋れそうになかったからだ。

 キャリーは強張る顔で笑いながら言ってやった。

「こう言うのは、先に名乗るもんじゃない?」

 どうだ! と相手を睨む。しかし、彼には何も感じないのかケロッとした様子でまた、言い返してきた。

「僕が聞いているのに、聞き返してくるって、頭おかしんじゃないの?」

「なんだと!」

 今すぐ、この鉄格子の隙間を潜り抜けて、相手を殴りたいと思った。

 全身からバチバチと溢れ出す電気。

 その様子に男は驚いて目を見開いた。

「勿体無い、君の力はいろんな事に使えそうだ。なのに頭があれじゃ……」

 哀れむような眼差しに、さらに煽られた気がしてならない。

「キャリー・ピジュンだ! これで満足か、この野郎」

 ガンッと鉄格子を強く叩きつける。

「ははは、ちゃんと答えられるんだね」

 嘲る笑いにキャリーはもう嫌だと、男から目を逸らして、牢屋の奥へ向かった。

 座り込み、口と目、そして、耳までも塞ぎ込んでしまったのだ。

「あれ、丸くなってどうしたんだい? おーい」

 男は最初、困惑したように聞いてくるが、もうどうでも良くなったのか、話しかけてくる事はなくなった。

 彼もベッドに横になり、退屈な時間を浪費する。

 あれからどのくらい経ったのか分からない。

 キャリーはずっと、考え込んでいた。

 自分が悪いのか?

 オリパスたちやランサン郵便協会のみんなに迷惑をかけてないか心配だった。

 でも、メアリーの悪口を言ったあの女は、許せないと思っていた。しかし、気がつくと頭の中には先ほどの白い長髪をした細長い男ばかりがチラついて怒りが込み上げてくる。

 同時に彼の言葉で怒ってしまう自分が惨めに思えて仕方なかった。

 静かだった廊下から足跡が聞こえてくる。

 そう言えば、耳を塞ぐのは疲れて辞めていたのをすっかり忘れていた。

「キャリーさん、起きていますか?」

 顔を上げて振り向くと水色の髪をした看守長補佐官のシャーフが牢屋の鍵を開けて立っている。

 キャリーは黙って頷く。

「看守長との話が終わったので呼びにきましたよ」

 先程まであった怒りや虚しさはどこかに消えてしまった。

 ただ、今はもう、どうにもできない失態を悔いながら、不安を感じることしかできなかった。

「……」

 ジリジリと涙が溢れそうになる。

「キャリーさん」

 再び、名前を呼ばれる。

 何を言われるかたまらなく怖かった。

「出てきてください。……大丈夫ですよ。僕は何もしないので」

 キャリーはゆっくりと立ち上がる。

 やり場のない心を覆い隠した。

 牢屋から出るとシャーフは、こちらです、と道案内をし始める。

 キャリーは黙ってついていこうとした。その時、先程の男が口を開く。

「カニンチェン」

 自分に話しかけて来たのか? と思い振り返る。

 彼はベッドに横になったままだった。

「カニンチェン・ノイマンだ。達者でな……」

 看守長アシュメに何かされるのだろうと思った彼は、哀れみを込めて最後に自分の名前を教えた。

 キャリーは正直、知りたくもない。何も言わずにシャーフの後について行く。

 カニンチェンと名乗った男はまたしばらく眠ろうとした。だが、彼の元にはいつも難問が運び込まれる。

「カニンチェン様、起きていますか?」

 鉄格子の窓から声が聞こえる。

 体を起こして見ると大きなワシが窓のギリギリに止まっているのが見えた。

 彼女は安堵のため息をして話し始める。

「ご依頼をお持ちいたしました」

 カニンチェンは立ち上がりワシの元へ歩み寄る。

 頭をかきながら今度はどんな問題をやらされるのか尋ねてみた。

「鳥の子、どんな問題だい?」

「はい、戦争についてでございます」

 そう言って、足に手紙が付いているのを見せる。

 彼はフゥーと息を漏らし笑うのだった。手紙の内容に目を通す。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

クズを書く自信はそこそこあるんですよね。

カニンチェンや始まりの物語に出てきた謎の男(Lastly key you Lv.5(四話)に出てます)とか、

性格悪い奴、多い気がする。

何やら、怪しい企みも始まりましたね。

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