Lastly key you Lv.5(八話)
丘の上からは城壁を越えて街の様子がよく見える。
今夜は街全体が輝いて見えた。
その様子を男は一人、静かに眺めている。やがて、振り向き、後ろの木を睨らんだ。
木は夜の地面の色を吸って黒く何も見えなかったが、男には鏡の様に自分の情けない姿が見えていた。
彼は腰に着けていたホルスターからラッパ銃を抜き取り、ゆっくりと自分の頭に押し当てる。
この銃の弾は、本当なら今頃は広場の何処かに埋まっていたのかもしれない。だけど、そうはならなかった。
男は両目をそっと瞑る。
人を売って、今更、助けようとして、怖気付いて、一体、自分は何がしたかったのだろうか?
あのまま、じっと部屋に篭っていれば、後悔と罪悪感だけで済んだのに……
彼の頭の中で声が響き渡る。
—裏切り者—
(あいつが、あいつが、来なければ……キャリーがいなければ、静かに事が済んだのに、俺は路地で倒れているあいつを見過ごす事が出来なかった)
銃を握る手が、震え始める。
怖いのか?
悔しいのか?
手が震えるのなんて初めて、コレを使った日以来だった。
(俺はもう……よそう……)
男は引き金を引こうとした。しかし、何故だか出来ない。
重く固いラッパ銃は壊れてしまったのだろうか?
やがて、頭に当てていたラッパ銃は落ちて男は力無く俯いた。
カサカサと誰かが、丘を登ってくる。
落ちたラッパ銃を握りしめて振り返ると同時に構えた。
「誰だ!」
目の前には黒い人影が一人立っている。
夜空の雲が動き、月明かりが丘を照らした。
黒い人影の正体をあらわす。
そこには月明かりに照らされて輝く綺麗な金髪に、泣いて赤くなった黄色い瞳の少女が立っていた。
少女は怪我をしていて包帯を巻き付けていたが、解けかけていた。これでは、あってないようなものだ。
「キャリー?」
男はしばらくして、目の前の少女の名前を呟く。
名前を呼ばれた少女はこくりと頷く。
目線を少し下に向けると彼女は大事そうに袋を抱えていた。袋の下はほんのわずかだが、赤く湿っていて、微かに血の香りが漂う。
すぐにそれが何か気づいてしまった。
男は唇を噛み締める。隠そうとしていた物を隠し切る為に。しかし、その気持ちとは裏腹に心の底から涙が溢れ出る。
決して、彼女の前では見せないと誓ったのに、
例え、もう、この世にいないと分かっていたとしても……
あやしいものじゃいよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
選んで、迷って、結局後悔して……どうするのが、良かったのでしょうね。
彼が持っているラッパ銃は、共に戦いたいと必死になっていた彼に、
時計店の少女が作ってあげたものです。
彼なら任せられると信じていたから……
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