八重する企みと囚人たち Lv.4(五話)
枯れ木が並ぶ山道を登り、大きな城門までやって来たキャリー。
後ろを見ると浮かない顔のダインと足が速い二人になんとかついて来て行くルーク。
「謝れるでしょうか……」
アンと喧嘩をしてしまったダインは落ち着かない様子。
「心配ない、俺が話を通すから」とルークは息を整えながら二人の前に行く。
そのまま、見張りをしていた看守の男に自分の名と開封済みの手紙を渡した。
看守は頷いて三人を中に案内する。
中は外側と同じ様な城壁がたち、先へ続く坂道があった。
他には看守たちが、止まる大きな寮などが眼に入る。
入ってすぐ、右側に小さな木造の小屋があった。
キャリーは気になって何なのか尋ねてみる。
「あの小屋は何?」
「あぁ、あれは昔、馬の世話をしていた使用人の為の小屋です。今は城の中に寮が立ったので、誰も使ってないですけど」
「馬小屋もあったのか?」
ルークは思わず驚いてしまう。
わざわざ村で馬を預けずによかったことに気づく。
「はい、ありますよ。そう言えば、お二人も徒歩で来たんですか?」
「いや、俺たちは馬できたんだが……念の為、下の村に預けて来てしまった」
ルークの言葉に何かを察した看守はあっと言葉を漏らす。
ちょうど、休憩に来た数人の看守たちがいて、見張りをしていた兵士は代表の人を呼んでくる様に頼んだ。
休憩どきに追加な仕事が来てしまい悪態をつくが、こう言う時、誰が行くかは、事前に決めていたらしく、一人が走り出して坂を登って行く。
「あいつは昨日のポーカーで、ドベだったんですよ」
愉快げに言いながら元々門番をしていた看守は、ゆっくりと二つ目の門を目指して坂を登って行った。
ポーカーと聞いてキャリーは嫌な記憶を思い出す。
ごろつきに拐われた時にやらされた遊びだ。正直、あれ以来遊んでないのでルールは忘れている。
三人も後を追う様に二つ目の門へ続く坂を登りきる。
先ほどの看守が戻って来ていた。
「この先でシャーフ看守補佐官が待っています。その人が案内をしますので」
彼は門番の兵士と挨拶を交わして、坂を駆け下りて行った。
「こんにちは、皆さん」
門の奥から一人の青年が歩み寄ってくる。
水色の髪に、朝の変わり目の様なオレンジと青が混じった瞳の彼は、白い模様が入った制服用の黒いコートを羽織、腰にはレイピアを収めていた。
ひんやりとした空気が流れる。
彼はペコリと頭を下げて、自己紹介を始めた。
「僕は看守長補佐官のシャーフ・シュラタンです。遠い所からお越しになって下さりありがとうございます」
「ルーク・エンゲルです」
ルークも自己紹介をして、握手を求める様に手を差し出す。
シャーフはスッと彼の手を握った。
「冷たい!」
ルークは氷水に手を突っ込んだ様な冷たさに思わず叫ぶ。
「すみません、僕の体質で冷気を纏ってしまうんです」
申し訳ないと眉を顰めて彼は謝る。
「い、いえ、こちらも急に騒いでしまって申し訳ない」
シャーフは案内をしてくれた兵士を持ち場に戻らせるとため息をこぼす。
「僕たちは田舎者で、どうしても、都会の人たちの様に規律を保つ事が出来ないんです。うちの者たちが失礼を働いてないでしょうか?」
「いいえ、そんな事はなかったですよ」
むしろ、和やかな雰囲気を出す、この場所が少し羨ましいとばかり思ったほどだ。
ふと、シャーフは後ろにいるダインに驚く。
「ダインさん? 面会は一日一回までですよ」
「すみません、どうしてもアンに謝りたい事がありまして……」
「ダメです。後日、出直してください」
キッパリと言い切るシャーフにルークが間に入る。
「そこを何とか出来ないか? 恋人の食い違いは、早いうちになくさないといけないんだ。私からも頼む」
詰め寄る彼に押されて看守長補佐官は、少し悩んだ末。
「まぁ、面会に来る人はほとんど居ないので少しだけなら……取り敢えず話は建物中で行いましょう。看守長にも相談しないとなので……」
シャーフは向きを変えて歩き始めた。
ルークとダイン、キャリーは静かに喜びを分かち合う。
「良かったね。ダイン」
「はい、ありがとうございます。これで謝りに行けます」
「あぁ、仲直りしてこいよ」
しかし、このファドン刑務所には厄介な悪魔が住んでいる事を、三人はまだ知らない。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
中休み的なシーンです。
看守たちは意外と肩の力、抜けてますよね。そのぐらいここは平和なんですよ。
それもこれも看守長のおかげで……一体、看守長はどんな人物でしょうね。
楽しみにしててください。
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