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八重する企みと囚人たち Lv.4(二話)

 緑が減り、赤く乾いた荒野が広がる中、一台の馬車が西に向かって進んでいた。

 馬の手綱を握る行商人のテトと隣にいる青年オリパスは、太陽の眩しさに挫けそうだった。

 そんな中、一人だけ夢心地に眠る者がいる。


 綺麗な金髪に、閉じた瞳は黄色い少女。

 彼女はいつか試した事のある空から飛び降りる、あの爽快な体験を夢の中で堪能していた。


 不意に小さな段差で馬車は大きく浮き上がる。


 男二人は落ちないように何かに捕まりながら耐えた。しかし、何も知らない少女は突然の揺れに驚き、目を覚ます。


「ッ!」


 薄暗いなか、彼女の頭は柔らかい枕で守られていた。


「あら、キャリー目を覚ましたの?」


 優しく静かな声が上から聞こえてくる。

 ゆっくりと見上げるとミルクティー色の髪を後ろで束ねたレサトが微笑んでいた。


「わあぁぁ!」


 キャリーは思わず飛び起きる。


 彼女にはその微笑みが何か恐ろしい物に見えたのかもしれない。

 オリパスからはレサトにむやみに触れるなと言われているし、理由も分かっていた為、やらかした!と焦る。


「レサ姉⁉︎ え! あ? ごめんなさい!」


 レサトは何を驚いているのと言いたげにクスクスと笑っていた。


「気にしてないわ。今朝はとっても早かったもの」


「今朝……」


 神の国バシレイアから手紙を届ける為に出発したキャリー。


 途中の町で、かつての仲間、虎の耳と尻尾を持つオットーと再開する。

 彼女はファイアナド騎士団団長メアリー・ホルスの敵を打つ為、戦争の準備をしていた。


 キャリーはオットーを止める為に仲間と共にある場所に向かっていた。

 いろいろと忘れかけていたのを思い出す。

 キャリーはこくりと頷いて、レサトの反対側に座った。


「隣に座ってていいのよ」


 レサトはどこか寂しそうに呟いた。しかし、そんな事できないとキャリーは首を振る。


(殺されるかと思った……)


 心の中で呟く。

 大きな山が見えた頃、オリパスが向きを変えて話し始める。


「もう少ししたら、目的の谷だ。そこでシルバー・ヴォルフに会う。くれぐれも無礼な真似はするなよ」


 鋭い視線でレサトとキャリーを睨んだ。


「当然よ。誰に言っているのかしら?」


 レサトは首を傾げる。

 オリパスはため息を溢す。


(何もないといいが……)



 

 四人は馬車に乗ったまま目的の谷に着いた。

 明るい色の壁は長い年月風に煽られて、波打つ様な滑らかな形に削られている。

 空から注ぐ光は、より綺麗に輝き一人の老兵を照らしていた。


 切り揃えられた真っ白な顎髭、背筋の伸びた彼の腰には細長いレイピアが収められていた。

 老兵はジッと差し込む光を眺めていたが、やってきたキャリーたちに気づき歩み寄ってくる。


「シルバーだ……」


 オリパスは馬車を降りて、挨拶に向かった。

 ついでにテトに止まる様に指示をだす。


 後に続く様にレサトとキャリーも馬車を降りる。

 シルバーは少し驚いた顔で口を開く。


「おや? 現れないのかと思っていたよ」


 いきなり失礼な奴とキャリーは覗き込む。


「いや、今朝頃、伝達役の者から君が刺されたと聞いたんだが……あれは誤認だったのかな?」


「間違いない」


 オリパスは自分のシャツを捲り包帯で巻かれた腹を見せる。


「通り魔にやられたらしい……」


 彼自身は当時のことをよく覚えていなかった為、言葉を濁した。


「うむ……」


 シルバーはこくりと頷き、顎髭をいじる。

 目線を後ろにいるキャリーたちに向けた。


「サソリの尻尾に、ランサン郵便協会の小娘か……まぁ、いい、着いて来たまえ」


 そう言ってシルバーはさらに奥へと進んだ。

 自分たちも後を続こうとした。その時、馬車に乗ったままのテトが声をかける。


「オリパス! 俺は取り敢えずここで待ってる。何かあったらここまで走ってこい。何もなくても戻ってこいよ」


 彼は手を振る。


 オリパスも手を振って、そのままシルバーの後を追うことにした。

 しばらく進むと谷の横幅が急に広くなる。

 目の前には野営用のテントと数人の鎧を着た兵士が一列で並んでいた。


 威圧感を放つ様子だ。

 キャリーは不安を覚える。


 列の一番端にいた兵士がやって来た者たちをぐるりと見渡す。

 一人の少女に気づく。


 彼は列の輪を乱し、ズカズカとキャリーの方へと歩み寄った。


「お前、キャリーか? どうしてここにいる?」


 その声に聞き覚えがあった。

 兵士は目線を合わせる様にしゃがみ込む。


「俺だ。ルークだよ」


 名前を聞いた瞬間、キャリーはあーと口を開く。

 同じ鎧と兜を着ていたので分からなかったのだ。

 キャリーは嬉しくて笑顔が浮かぶ。だが、なぜ彼がいるのか首を傾げる。


「ルーク! なんで、ここにいるの?」


「それはこっちのセリフだ」


「あたしは……」


 訳を話そうと思った。しかし、どこから話すべきか分からずに口を閉じてしまう。

 手紙を届けることになった所から話すべきか、それとも、前の町でオットーにあった所から話すべきか、手短に手紙を届ける途中で着いてきたと言えばいいのか分からなくなる。


 出来る限り、話そうとやってみた。


「えっと、手紙の配達で、オットーが……あたしたちの仲間なんだけど、戦争しようって言ってきて、そこにいるオリパスが刺されて、心配だから着いてきた」


 これでどうだとルークの方を見る。

 彼の表情は兜で分からないが首を傾げていた。


「まぁ、色々あったんだろうな……」


 曖昧な返しに伝わってないんだと感じる。

 キャリーとルークが話していると、シルバーはコホンと咳払いをする。


「再開を喜ぶのはいいが、こちらも込み入った話がしたい。少し黙っていてくれないか?」


「申し訳ありません!」


 ルークは慌てて立ち上がる。

 元の列に戻る前にキャリーに囁く。


「落ち着いたら話を聞かせてもらうよ」


 彼はそそくさと走っていった。

 キャリーも同じ様にレサトの元まで戻っていく。

 様子を見ていたシルバーだったが、目線をオリパスに向けて話し始めた。


「さてと、我々がこうして会ったのは、まだ終わらない戦争の残り香をどう消すか話し合う為だ。君が刺されたと知らせを聞いた時、スタックタウンの現状も聞かせてもらったよ。どうやら、上手くいっていない様だね」


 彼の問いかける様な言い方にオリパスは眉を顰めながら頷く。


「さらにはまたしても、我々の国に手を出そうとしているそうじゃないか? これはどう言うことだい?」


 挑発している様に話す老人。

 オリパスは落ち着いた口調で返す。


「うちの団長は計り知れない力を持っていた。それにより人望も熱く、人に好かれていたんだ。そちらに手を出そうとしてるのはそう言った者たちだ」


「なぜ、止められなかった?」


 シルバーの問いに言葉が詰まる。

 自分の不甲斐なさのせいだと、分かっていても、オリパスはこの場所で認めるわけには行かなかった。

 なぜなら、相手に隙を与えてしまうからだ。


 どう転んでも同じだった。

 シルバーは彼の弱い所を見逃す程甘くない。


「君が上に立つ者として不甲斐ないからではないかね? オリパス」


 キャリーは老人の態度に腹が立つ。


(確かに、オリパスはファイアナド騎士団やスタックタウンを裏切っよ。そりゃ、誰も着いてこないけど……)


 心の中で悪態をつくが、一つだけ変な部分にすぐに気づく。


(あっ、あたしとレサ姉とテトはついて来てた……)


 なんだか、嫌な感じになっていく空気に、どうするのか彼の方を見る。

 オリパスは黙って俯く。

拳に力を込めていた。しかし、すぐに辞めてゆっくりと話し始める。


「全くその通りだ。俺は上に立つ人間として不甲斐ない」


「なら、我々に実権を譲りたまえ」


 シルバーは手を差し伸べる。

 いまだにスタックタウンをバシレイアの物であると主張する様だ。


「戦争でぼろぼろに負けといて、よく言えるわね!」


 たまらず、レサトが口を挟む。


「戦争に勝ったのは我々だ」


 彼女の言葉を軽くいなす。

 事実、その通りだ。

 キャリーは目を逸らしてしまう。


 最終的にメアリーが自らの首を差し出し、この戦争は終わったのだ。

 シルバーのああ言えば、こう言うという態度に腹が立つレサトは、オリパスを押し除けて前に出る。


「メアリーに勝てなかった奴が何言ってんの?」


「最終的に首を差し出したのはあいつだ」


「戦争を終わらせる為にやったのよ」


 さらに前に出る。


「そうだ。だが、事実として勝ったのは我々だ」


「あなた、何様のつもり!」


 もう一歩前に出ようとした。その時、二人の兵士が間に入った。

 一人はルーク、もう一人はレサトを見下す様に見る兵士だった。


「この方はバシレイアの英雄シルバー・ヴォルフ様だ。不用心に近づくのは我々が許さん」


 ルークは剣を抜き脅す。

 二人の兵士を前にレサトも言いたい事も言えなくなった。

 後ろで見ていたオリパスは胸を撫で下ろす。


「レサさん、下がってくれ。俺たちは戦いに来たわけじゃない」


 オリパスはレサトのそばまで行き、話を続ける。


「今、スタックタウンはあんたらが考えてるより混沌だ。誰も実権を握っていない。技術者は好きな様に、好きなだけ、作りたい物を作っている」一息置く「だが、今、強いて実権を持ってるとしたら、それはバシレイアを滅ぼそうとしているオットーたちの方になる」


 シルバーは感心した様に髭をいじりながら問う。


「ほぉ、それはなぜかね?」


「あいつらの方が、目的がハッキリしているからだ。兵器を作る、バシレイアを滅ぼす。簡単で分かりやすい。武器を作ればいいだけの話だからな。対してこちらはスタックタウンを自立させ平和な国にしたい。もう、どことも争わない様な国だ」


 腕を動かしながら話す彼にキャリーは見入っていた。


(すごい、あんな風に話すんだ、あいつ……)


 彼は少し間を開けて続ける。


「だが、こういう話題は取っ付きづらい。さらにこちらはファイアナドの解体や他との繋がりなどやらなくてはいけない事に囲まれている。実権を握る暇はなかった」


「……」


 シルバーは黙って聞いていた。ジッと様子を伺うオリパスだったが自分の意思を話す事に決める。


「実権を握りたいのなら、まずは手を貸してくれ。オットーたちの暴走を止めなくてはそういう話も出来ない」


 谷の野営地に沈黙が広がる。

 息が詰まりそうだった。やがて、シルバーは長いため息を吐いて目を逸らす。


「……断る」


 思いもよらない返事にオリパスは目を見開く。

 前へ一歩踏み出した。


「何故だ?」


「何故だと? ふん、協力してもらえると思っていたのかね? つまらん。何故我々がお前たち他国の面倒を見なくてはならない。貴様がやらかした失態だろうが自分でなんとかしたまえ」


「シルバー様……」


 老兵の態度にルークが何か言おうとしたが、黙っていろと猜疑られる。

 ゆっくりと向きを変えてその場を後にしようとしていた。

 慌ててオリパスは呼び止める。


「待て! 待て待て待て、流石に無茶苦茶だ。このままだとそっちの国に被害が出る事になるぞ」


「そんな物、私の剣で切り払ってやろう」


 シルバーは足を止めて向きを戻す。


「我々は一度手を引いた。それでも奴らがまた手を出すのなら、受けて立つという物だ」


 言い終わるとまた、歩き出してしまう。

 オリパスは頭を抱え込む。


 何も必ずイエスと言ってもらえるとは、考えていなかった。

 だが、何らかの手は、共に考えてくれるんじゃないかと密かに期待を寄せてしまった。


「くっそ……」


 やりきれない思いが口から溢れた。

 彼の様子を見ていたレサトは我慢しきれずに前へ出ようとする。


「待ちなさい!」


 ルークの前を通ろうとした。その時、もう一人の兵士が、ファイアナド騎士団のタブーに触れた。


「待つのは貴様だ。それ以上不用意に近づけば……」


 兵士は警告と共にレサトの腕を掴んだ。

 瞬間、オリパスとキャリーに緊張が走る。


 腕を掴まれたレサトの目はギロリと兵士の方に向く。


 懐に隠していたクナイを抜き、すかさず兵士に襲いかかろうとしていた。

 隣にいたルークは慌てて剣を抜き応戦する。が、黄色い雷が砂煙を巻き上げて彼の動きを止めた。


 何の騒ぎだとシルバーが振り返ると砂煙の中から武器を取った自分の部下と敵に背を向けて味方を止める青年。そして、自分より大きな兵士を張り倒した少女がいた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「レサさん、待ってくれ……」


 獣を宥める様に手を前に広げるオリパス。


「何の真似だ?」


「……」


 背後に立つルークの質問にオリパスは答えられなかった。


「イッテテテ、何しやがる!」


 倒れた兵士は体を起こし上に乗るキャリーの方を見て怒鳴った。

 ゼェハァと息を立てていたキャリーは彼の鎧を叩きながら叫ぶ。


「レサ姉に不用意に触らないで! 死にたいの?」


「は?」


 訳が分からず困惑する。

 襲ってきた女の方を見た。


 クナイを握りながら、獣の様にジッと殺意に満ちた目をしていた。

 彼女の深い黒の瞳に背筋が凍りそうな残虐性を感じ取る。


「何なんだよ……」


「すまない、彼女には事情があって、誰かに触れられたくないんだ……頼む、レサさん、ここで問題を起こさないでくれ!」


 オリパスの声にレサトはハッとなった。

 自分のやらかしに気づき頭を抱えて膝をついてしまう。


「ごめんなさい……わ、私……私は……」


 肩が震えて怯えていた。


「レサ姉は悪くないよ! 大丈夫」


 キャリーは出来るだけのフォローを入れる。

 それでも彼女に言葉が届いたか分からない。


「これは実に由々しき出来事だな」


 歩み寄りながらシルバーは呟く。


「手を組む以前に、こうも戦おうと言うのかね?」


「そんなんじゃない!」


「なら、とっとと俺の上から退いてくれ」


 下敷きにされていた兵士が手を振ってキャリーに言う。


「あっごめん」


 ヒョイっと立ち上がる。


「かつての敵である以上、やはり、埋まらない因縁と言う物があるのだろう。我々が手を組む事はもう無い」


 顎髭をいじりながらシルバーは呟く。


「そんなに嫌なの?」


 話を聞いていたキャリーは思わず口をはさむ。


「……」


「あんたはさっきから嫌味ばっか言うけど、本当は戦うのが怖いんだろ!」


「いいや、むしろ好きだ」


 キッパリと答える。

 シルバーはゆっくりと歩み寄りキャリーの耳元で囁く。


「私は戦うのが好きだ。特に紅蓮の竜巻メアリー・ホルスと戦うのが好きだった。だが、彼女は突然、戦うのをやめた。全く面白くない」


 次の瞬間、シルバーはキャリーを突き飛ばす。

 いきなりの事に尻餅をついてしまった。


「シルバー様、何を!」


 ルークに呼び止められようとシルバーはただ、キャリーの方を見ながら話を続ける。


「君は二度、私を失望させた。チャンスはあったのにしくじった。おかげで訳のわからん男に酒を奢る事になったのだ」


 誰のことかさっぱり分からない。

 そもそも、いつの事かキャリーには分からなかった。


「貴様らと腕を組んでもこちらには何の徳もない。裏切り者に、危ない女、そして、無能な配達員」


 三人は顔を背ける。


 言いたい放題言われて悔しかった。だけど、返す言葉が分からずキャリーは歯を食いしばる。

 自分が有能だとは言わない。だから、目を逸らしてしまった。

 なら、どうしたら良いのか、キャリーは顔をあげて尋ねる。


「ねえ、どうしたら、手を貸してくれるの?」


 ただ嫌がるばかりの老人に、どうしようもなくなったキャリーは聞くしかない。

 相手が何を望んでいるのか、何がしたいのか分からない以上、聞くしかない。

 シルバーはしばらく黙ってからニヤリと微笑む。


「そうだな、我々が今、抱えている問題を一つ、キャリー・ピジュン、貴様にこなして貰おう」


 周囲の人の視線が一斉に集まり、キャリーは不吉な予感で嫌な汗をかく。

 どんな、難題を言われるのか身構えた。しかし、本来の彼女なら、何ら問題のない内容だった。


「貴様にはこれから北にある、ファドン刑務所へ向かってもらいたい」


「シルバー様、まさか?」


 狼狽えるルーク。

 シルバーは宥める様に言う。


「まぁまぁ、良いではないか。ちょうどいい人材がいるのだ」そう言って話を戻す。「あそこでは、今、多くの荷物を運べずに困っている。君にはそれを手伝って貰いたいのだよ」


 話を聞いていたオリパス。

 これはチャンスだと思った。


(この依頼ならキャリーはいつもやっている。あいつの鞄ならどれだけ大きな荷物でも運べる)


 期待に胸が高鳴り拳を強く握りしめる。

 彼女の持つ鞄はスタックタウンで指折りの技術者が作り出した最高級の品だ。

 鞄に描かれた魔法陣のおかげで、尋常じゃない量と大きさが入る。しかし、少し前までの話だ。


 キャリーは俯き言いよどんでいた。

 なかなか返事をしないキャリーを見て、シルバーは尋ねる。


「どうしたのかね?」


 キャリーは言おうか、言わないか、口をもごもごさせていた。やがて、震えながら話し始める。


「難しいかも……」


「「?」」


「小さい荷物が沢山なら何とかなるんだけど……大きい荷物は運べない……」


 彼女は悔しそうに俯いていた。


「ど、どう言うことだ? キャリーあの鞄なら」


「実は……」


 キャリーは鞄の機能が壊れている事を告白する。

 話を聞いたオリパスの顔は青ざめてしまった。今にでも倒れそうになる。


「ごめん、オリパス……力になれなくて」


「いや、いいんだ。仕方ない事だ……」


 謝るキャリーにオリパスは言った。しかし、状況が不味いことは変わらない。

 オリパスはキャリーの代わりにシルバーに尋ねる。


「運びたい荷物は具体的にどんな物なんだ?」


「食料と消耗品だ。だが、君やそこの膝をついている女はファドン刑務所に近づくのは、遠慮願おう」


 仮にも敵対していた者同士。

 裏切りなどの問題を考えてしまう。


(食料と消耗品ならそこまで重いのはないが……)


 運ぶ品を聞いて、キャリーにできるか否かを考えていると、袖を引っ張られる。

 見ると綺麗な金髪に黄色い瞳のキャリーがジッと見てくる


 やるよ。彼女の眼はそう訴えてきたのだ。

 全部運べるか心配だったが、ここは任せるしかない。


「分かった。キャリー頼む」


 こくりとキャリーは頷く。


「よろしい、ならば、詳しい場所を教えよう」


 一連の様子を見ていたシルバーは、詳しい事を話そうとする。その時、恐る恐ると手を挙げる者がいた。


「あの、シルバー様」


 ルークだった。

 彼は一度レサトやオリパスの方を見てから剣をしまってシルバーの方に近づく。


「何だね?」


 眉を顰めながらシルバーは聞く。


「私も彼女に同行して行ってもよろしいでしょうか?」


「必要ない。君も彼女の活躍は目で見ているだろ?」


「いいえ、そうではなく。ファドン刑務所の者たちに話を通すためです」


 事情を知らないファドン刑務所の職員がキャリーを疑わない為にと思ったのだ。

 シルバーは少し考えてから彼の同行を許した。


「まぁ、いいだろう」


「ありがとうございます!」


 お礼を言ったルークはすぐにキャリーの元に行き話す。


「そう言う事だ。行こう」


 彼の様子にキャリーは少し驚いた表情を見せる。

 ルークは初対面のオリパスの方を見る。


「先ほどの真似は許せませんが。今は一旦置いておきましょう。しばらくの間、彼女をお借りします」


 オリパスはこくりと頷く。


「キャリー、俺たちも近くの村に待機してる。何か困った事があれば頼りに来てくれ……」


「分かった」


「それじゃあ、善は急げだ。馬に乗って行こう」


 ルークは野営地に括り付けている、自分の馬を指差しながら言った。


「あたし、走っていけるよ?」


 しかし、そんなもの必要ないと思ったキャリーは首を傾げる。


「馬鹿、一緒に行かなきゃ意味ねぇだろ」


 ルークは馬を取りに向かう。

 結んでいた手綱を解き、馬に跨ったルークはキャリーの元にやって戻る。そして、手を差し伸べた。

 その表情は兜で隠れて分からないが彼の善意は溢れ出ていた。


 キャリーは迷いなくその手を取る事ができた。

あやしいものじゃないよ、

あやかしだよ。どうも、あやかしの濫です。

交渉って難しいですね……やるのも、書くのも……

このシーンで滅茶苦茶時間喰われた気がします。

腕を掴まれてしまったレサトさんは、この後めっちゃ落ち込んだ。

「キャリー・ピジュンの冒険」に興味を持ってくださったら、

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