嵐を超えてシスターに送る Lv.1(八話)
リーフは彼女に叱られてからと言うもの、その場に座り込み俯いていた。
自分の怠惰で今、女の子の命が危険になっているのだ。
申し訳なく、動けずにいた。
(まさか、弱竜の群が来ているなんて……僕はなんてことをしてしまったんだ。もし、あの子が近づいてたら……いや、待てよ)
あまりの心配に寧ろ、あの子ならきっと大丈夫だと、根拠なく思えてきた。
弱竜の群は危険な災害だが、避けるのは容易だ。なら、あの子も気づいて回り道をするはずと。
リーフはそう考える事にした。
未だ、落ち着きを取り戻せないベリルの方を見る。
ベリルは部屋の中をうろうろしていた。
ティーカップを一人で片付けて、カルテをまとめたかと思うとずっとこの調子だ。
彼女は黒い目隠しを付けなおし、指を咥えていた。
「ベリル様……キャリーならきっと大丈夫ですよ。もしかしたら、まだ、ケーキ屋に向かってる最中で、一つ目の村かもしれません。それにあの子なら弱竜の群を避けてるはずです」
一旦落ち着いてもらおうと声をかける。
ベリルは立ち止まり、しばらく動かなくなった。
彼女は少し考えてから大きなため息を吐いて、首を振る。
「はぁ、ないわ、あり得ない。あの子の足が速いのレベルじゃないの。それに回り道なんて考えない子よ。何か目的を持ったら何がなんでもやろうとする子ですもの……一体、誰に似たのでしょうね……」
髪をかきあげる様に頭を抱えた。
「ダメね。少し落ち着きましょう……リーフ、お茶を入れてくださるかしら?」
リーフは慌てて立ち上がる。
「は、はい!」
紅茶を入れて戻ってくるとベリルは、椅子に寄りかかり、肩を抑えていた。
指先は静かに震えている。
リーフは入れたばかりの紅茶を渡す。
彼女は飲もうとはせず、カップを両手で包むと暖をとった。
「……」
流石に動揺しすぎだと思ったリーフは彼女に注意した。
「ベリル様、心配しすぎです。気持ちは分かりますが……そんな風にしていたら体を悪くしますよ。せめて、少し飲んでください」
紅茶を勧める。
「ええ、そうね……」
彼女は呟くが飲むことはなかった。
静寂と息の詰まる様な空気が部屋中を満たしていく。
リーフはせめてもと思い、窓を開けることにした。
暖かい風が中に入ってくる。
ベリルは肩の力を抜こうと大きく息を吐いた。
「私って過保護すぎるのかしら?」
キャリーとは付き合いが長く、彼女の性格も祝福の力も知っている。
それでも心配に思う自分はおかしいのだろうか?
ベリルはティーカップに映る自分の顔を眺めている。
「キャリーとはどういった関係なんですか?」
リーフはずっと気になっていたことを尋ねてみる。
もしかしたら、ベリルは聞かれるのを待っていたのかもしれない。
スッと一言でまとめた。
「最悪の地獄から私を救ってくれた命の恩人よ」
彼女は黒い目隠しを指でなぞりながら言う。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
ベリルさん、めっちゃ心配してる……まあ、過保護になるのも仕方ない気がします。
あの子可愛いですから、僕もなんか愛着がわいちゃうし……作者だから当たり前か……
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