表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/133

Lastly key you Lv.5(五話)

 路地で倒れたキャリーは、気を失ってからずっと起きようと真っ暗な頭の中で、足掻き続ける。そして、一筋の光がようやく見えた時、彼女は目覚める。


 はっと起き上がったキャリーは、知らないベッドの上にいた。

 呼吸は荒く、心臓がバクバクと揺れていた。


 キャリーは自分の体を触って確かめる。

 腕と頭に包帯が巻かれていた。

 布団を捲ると足は伸ばした状態で木の板に固定されていた。


「……」


 これはしばらく、働けないなと理解させられる。

 自分の足を見ていると少し離れたところから声が聞こえてきた。


「目を覚ましたか」


 顔を上げて声のする方を見る。

 窓越しの椅子に座りながら、小さな本を読んでいる目つきの悪い、メガネをかけた青年がいた。


「オリパス?」


「あぁ、久しぶりだな、キャリー」


  オリパスは本を閉じながら答える。

 メガネを外して立ち上がりキャリーのそばまで近づく。


「生きていたんだね。あたしはてっきり……」


  その先の事を口に仕掛けたるが、彼は呆れて否定した。


「勝手に殺すな。それよりキャリーどうして、あの路地でボロボロになって倒れていたんだ? お前ならそこらのごろつきぐらい逃げ切れるだろ?」


「不意をつかれたんだ。そのまま、ずっと蹴られて……」


 悔しそうに顔を顰める。


 キャリーは布団を握りしめていた。

 思い出すだけで腹が立ってくる。

 そんな様子を見てオリパスは、ベッドの横にある瓶から水をコップによそり、キャリーに差し出した。


「少し飲め、落ち着くぞ」


「ありがとう……ねぇ、オリパス」


 キャリーはコップに映る自分の顔を見つめながら大事な話をする。


「メア姉が……処刑されちゃう」


「あぁ、知ってる」


「そっか、そりゃあそうか、だってこの国にお前がいるもんね」


 オリパスは顔を合わせない。

 そんな彼に不安を覚えながら話を続ける。


「他の奴らは今、どうしてるの? もしかして、どこかに隠れてるのかな? もう、時間がないけど、処刑台へ輸送中に助けるの? あたし、今、脚がこのザマだけど、何か手伝わせてよ。あたしだって、メア姉を助けたいんだ。頼む!」


 キャリーはオリパスにしがみつく。しかし、オリパスは決して振り向く事はなかった。

 ただ、一言、呟くだけだった。


「仲間は来ていない。ここには俺一人だけだ」


「え?」


 何を言っているのか、分からなかった。動揺するキャリーにオリパスは冷たく告げる。


「俺はただの傍観者だ。手は貸さない」


「何言ってるの……? 訳がわかんないよ! メア姉が捕まっているんだ! 助けないと!」


 キャリーは彼の裾を引っ張る。しかし、オリパスは黙ってキャリーの腕を払いのけた。


 何も話さない。

 ただ、彼の拳は震えているのが見えた。オリパスは立ち上がり、顔を合わせずに話す。


「俺はファイアナドを裏切り、団長を売った」


 彼の言葉に反射的に叫ぶ。


「オリパス、ふざけんな! お前がそんな事するはずがない! だって、お前は、お前はメア姉の……」


 そのあとを言おうとしたが、正しい表現が浮かばず、途絶えてしまう。

 怒りと動揺でキャリーは何が何だか分からずにいた。

 オリパスは俯いて話を続ける。


「俺は平和と安全のためにあいつを売った。だから、キャリー、お前に手を貸す気はない」


 そう冷たく吐き捨てられた、キャリーは豆鉄砲をくらった鳩の様に目を丸くする。そして、ぐったりと彼女は肩を落とし、絶望にうちひしがれてしまった。


 しばらくの沈黙の後、ドアの近くにある時計が鳴り響く。


 キャリーはオリパスの顔を見ようとしたが、何も変わらないと思い諦める。

 ベッドから降りて自分の靴を履いた。

 彼女の頭の中には、あの日の焚き火の光景が映っている。


(メア姉はあたしを抱いて優しく包んでくれた。あの腕はとっても力持ちで強いのに、全く怖くない。

 それで、オリパスはメア姉とあたしの隣で一緒に笑い合っていたのに……)


 キャリーは灰色な現実にいるオリパスに話しかける。


「今でも、信じられない。あたしの知ってた二人はもっと強くて、正しかった……なのに、どおして?」


 言葉が震える。


 思い出が崩れる様に今日見た光景が、全てを塗りつぶしていく。

 ボロボロで右腕と片目を失ったメアリーは、牢屋に閉じ込められ、彼女を支えたオリパスは、こんな綺麗な部屋で読書をしていた。


 いろんな思いに胸が苦しくなる。

 じんわりと目が熱くなった。


(みんな、どうして、変わっちゃったの?)


「……」


 オリパスは何も言わず、ただ、目を逸らし続けているばかり。

 キャリーは足を引きずりながら、ドアの前まで歩いて行く。

 ドアの部に手を掛けながらオリパスに今の自分の想いを伝えた。


「お前に助けてもらわなかったら、あたしはもう動けなかったと思う。だから、ありがとう……もし、お前の助けがあったら、メア姉を説得して逃げ切れたかもしれない……でも、オリパス、あんたはあたしとメア姉を裏切った! 見損なったよ! バーカ!」


 オリパスに怒鳴り、引きずる足で外に出ていく。

 バン! と扉が閉まる音の後には何も聞こえなかった。


 一人取り残されたオリパスは、髪をかき上げて、深くため息をつく。

 彼はドアの横にある戸棚に近づいた。手に取っていた本を置き、そのすぐ下の引き出しに指をかける。


「言いたい放題、言いやがって……」


 そう呟いた彼の前には古い二丁のラッパ銃が置かれていた。

 オリパスは手に取り、鋭い視線で目の前の壁を睨む。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

ファイアナド騎士団副団のオリパスが出て来ましたね。

彼は、メアリーの幼馴染で小さい頃から一緒にいました。

なのになぜ、裏切り者になったのでしょうね?

彼が手に取る、ラッパ銃は、一体、誰に向けるのか?

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


よろしければ、X(Twitter)のフォローもお願いします。

https://x.com/28ghost_ran?s=11&t=0zYVJ9IP2x3p0qzo4fVtcQ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ