アイオライト防衛線 Lv.3(七話)
例え、心が折れてしまっても再び立ち上がらなくてはならない。なぜなら、大切な人たちを守るために
ごろつきに捕まり誘拐されたキャリー。
暗いバーの真ん中で半ば強引に情報をかけたゲームをする事になった。しかし、彼女はポーカーのルールを理解できておらず苦戦を強いられていた。
昔、ファイアナド騎士団と共に行動していた頃、オリパスや他の仲間たちが遊んでいるのを見たことはあった。
その頃は興味もなく、ただ遊ぶ彼らの会話に耳を傾けていた。
「どうした、降参か?」
テーブルを挟んで片目に傷のある男が聞いてくる。
彼の目の前にはキャリーを負かして手に入れたチップと自分のが山のように積まれて置かれていた。
キャリーは苦い顔を浮かべながら声を出す。
「勝負する!」
「じゃ、見せ合おうじゃないか」
男は手にしていたカードを投げるようにテーブルにばら撒いた。
「十のスリーカード」
このカードで何を揃えたらいいのか、いいか分かっていないキャリーは、自分の手札がどうなっているのか分からずにいた。
ここまでゲームを続けて、ようやく覚えられたのは、何も同じ数字が揃っていないブタ、同じ数字が揃っているツーペア、スリーカード、ぐらいだ。
あとは四枚そろっている、フォーカード。とにかく、同じ数字が揃えればいい。
数字が大きいから相手の勝ちと聞かされた。でも、その後に明らかに数字の低い一やニのペアが出てくる。
最初は勝ったと思ったが、相手の勝ちだと言われてしまった。
ここから混乱してキャリーは、ルールを覚えることができなくなっていた。
最低限、数字を揃えようと努力はするものの、結局は運頼み。
恐る恐るキャリーは相手にカードを差し出すように見せる。
その手にはバラバラの数字のカードが握られていた。
「ブタだな! わりーなまた俺の勝ちだ!」
男は愉快に笑う。つられて、暗闇から見ていた彼の部下たちがゲラゲラと笑い出した。
「ボスは大人気ねーな! こんなルールも知らない子供をいじめるなんてよ〜」
「ルールはさっき話したさ、覚えられねえ奴が悪い」
キャリーの元からチップがまた一気に持っていかれる。
あまりの負けっぷりにカードを配る役をかって出た女は、キャリーに何だか いたいげな表情をする。
彼女は筋骨隆々のマルタのように太い手足をしたふんわりとした薄い金髪をしていた。
哀れむようにキャリーを見つめる。
とうとうキャリーの手元にはチップが一枚になってしまった。
「なんだ、まだ残っていたのか? まー次でしまいだろ?」
男は頬をつく。
目線でカードを配れと女に指示を出した。
一枚一枚交互にカードは配られる。
五枚配り終えた後、男は何の躊躇いもなく配られたカードの中身を見る。
対してキャリーは手に取ることすら躊躇っていた。
このまま負ければ、メア姉つまり、紅蓮の竜巻メアリー・ホルスの頭のありかを教えなければならない。
それはキャリーにとってとても嫌なことだった。
例えるなら友達の悪口を聞くぐらいだ。 もし、このゲームに負けてしまってもキャリーは口を割るつもりはない。と心に決めている。
これは向こうが勝手に決めたゲームなのだから自分が話す義理はないのだ。ただ、話さなかったとしたら、どんな事をされるのか、想像すると震えが止まらなくなる。
もしかすると、むなぐらを掴まれるかもしれない。
女の人に腕を引きちぎられるかもしれない。
暗く閉じ込められた空間ではキャリーの祝福の力が使えても、いつかは捕まってしまう のだろう。
痛い思いをするのは嫌だ。でも、メア姉のことを利用されるのも嫌だ。
嫌だ、嫌だ、どっちも嫌だ。
キャリーは今、とっても怖い、今すぐにでも泣き出してしまいそうだった。
「どうした? 早くとれよ」
余裕な顔でキャリーを見下す傷の男。
キャリーは恐る恐る配られたカードをめくった。
中身を見た瞬間、キャリーは絶望する。
手元に来たのは一枚も揃ってないカードたちだ。
つまりブタだ。
唯一、揃っていたのは数字の下の記号だけ。だけど、こんなものが何枚揃ったところで意味がない。
全身から血の気が引いていく。
今にも倒れてしまいそうだ。
頭の中が真っ白で息をするのを忘れてしまった。
思い出したように呼吸をする。しかし、絶望とこの先の不安で落ち着かない。
そんな様子を男たちは面白おかしく笑って見ていた。
どうする?
どうする?
小さい頭でキャリーは考えようとする。その時、傷の男とキャリーの間でずっとカードを配っていた女が声をかけてきた。
「カードを交換する?」
キャリーはハッと目を見開く。
(そうだ、まだ、カードの交換が一度だけある。それに賭けてみよう!)
もう一度、自分の手札を見つめ直した。
カードを入れ替えるとしてどれを渡すかだ。
(数字のやつより文字のやつの方が確か大きいんだったよね? でも、数字のは十しかない……次に小さいのはどれだ……?)
キャリーの手元には数字のカードが一枚と文字のカードが四枚、数字の十番を入れ替えとして、文字はどれを入れ替えたらいいのか、分からなかった。
ふと、傷の男が思いがけない事を口にする。
「もし、このゲームでお前が勝ったら、お前の勝ちにしてやるよ。ラストゲームのボーナスってやつだ」男は指をさす。「キャリー、お前の手元にはチップが一枚、そんだけじゃ勝って奪っても面白くないからな」
男は自身満々だった。それもそのはず、キャリーの動揺する様子に、自分の手札は負ける事はないと確信していたからだ。
傷の男の手札にはA つまりこのゲームで二番目に上の強いカードが三枚、ジョーカーと言う、いくつにでもなれるカードを手にしていた。
男の提案で絶望的状況が何か変わったわけじゃない。
キャリーはどのみち負けたらダメで勝たなきゃいけなかった。
意を決して、K とQ を残して残りを入れ替えようとする。その時、閉ざされていた扉が開く音が聞こえた。
顔を上げてみるとそこには、小さな黒髪の少年がうっすらとした笑みを浮かべて入ってくる。
「なんだ、リード じゃねえか。帰ったんじゃないのか?」
傷の男が言う。
「あぁ、でも、よくない客人がきたから逃げてきんだ」
リードと呼ばれた少年は肩をすくめる。
「ビビりすぎじゃねえの?」と皮肉まじにごろつきの一人が笑う。
「当然だ、か弱い乙女なんだから」
そっけなく、言い返してテーブルに向かっていく。
(か弱い乙女?)
少年ではなく、少女だったことにキャリーは目を見開いた。
顔つきや立ち振る舞いはイタズラ好きな少年なのに、中身は少女だったとは、分からなかった。
「アン、何をしているんだい?」
リードはキャリーと傷の男の間に立つ、女に聞く。親しい関係なのだろうか?
アンと呼ばれた女の人は、若干言いづらそうにしてから、睨むように男を見て話す。
「こいつが子供をいじめてる」
「いじめてるとは酷いな! お前の頼みでフェアなゲームをしているんだ。まあ、それももう終わりだろうがな」
男はニヤニヤと笑う。
「ふーん……」リードは口を尖らせる。「二人ともなかなかいい手札をしてるじゃないか」
何も見ずに彼女はぽつりと呟く。
男は愉快そうに笑った。
「がははは、そうだろ! 流石にこれには敵わないだろ」
それに対してリードはそっけなく興味ないように答えた。
「俺には関係ないな」と言ってバーのカウンターに座りにいく。
仲間にいい手札と言われ、嬉しくなる傷の男は、満面の笑みでキャリーを見下しながら聞いた。
「でっどうする? カードの交換はしなくて良いのか? 勝負するか?」
その言葉にドキッとする。突然の来訪者に忘れていた不安と恐怖の重圧が全身にのしかかってきた。
(相手の手札は仲間の人が言うように本当にいいんだ。こんな、何も揃っていない手札じゃ……せめて……せめて、せめて、何か揃えなきゃ!)
キャリーは恐る恐る捨てるカードに手を伸ばす。その時、リードが本当に驚いた顔でキャリーを見た。
「え? 捨てちゃうの?」
一瞬、彼女がどうしてそんな顔をしたのか分からなかった。いや、今もだ。
リードは目を丸くして、見開いて口をポカンと開けていた。
この部屋にいた誰もが彼女の方を見る。男たちは真剣勝負の邪魔をされて殺意のこもった目線をおくる。
「おい、リード、今いいところだから黙ってろ!」
「ごめんごめん、びっくりしちゃったもんで……」
すまないと片手を使いながら彼女は謝った。
なぜ、そんなことをあの人は言ったのだろう?
キャリーに小さな疑問が浮かぶ、十番を捨ててもったいない?
今、キャリーの手札は十番と文字が書かれたカードだが、十番を捨てるのが勿体無いのか?
他のカードは十番より強いはずなのに残す意味はあるのだろうか?
突然、あんなことを言われてしまったので、キャリーの中でどれを捨てていいのか、さらに分からなくなってしまう。
悩みに悩んでいたが、いい加減、終わらせたかった男が叫びだす。
「いくら悩んでも意味ねぇーんだよ! 早く変えるか勝負するか決めろ!」
「勝負……する……」
何を捨てて変えればいいのか結局わからなかったキャリーはカードを強く握りしめた。
これで負けても絶対に何をされても話さない。
アンは両者を見てからタイミングを合わせるように指示を出した。
「私が三数えるのでその後にせーのと言って出してちょうだい。三、二、一!」
「「せーの!」」
見せ合う瞬間、怖くてキャリーは目を瞑りながら相手にカードを見せた。
「フォーカードはぁ!?」
訳を言った瞬間、傷の男の叫び声が響く。ざわざわと唖然としている取り巻きたちの声も聞こえてきた。
キャリーはゆっくりと目を開く。
アンが口を両手で押さえて嬉しそうに目を輝かせていた。
みんなキャリーの手札を見て驚いていた。
彼女が持っていたカードは、クラブの十番、J、Q 、K 、A の五枚。
「ロイヤルストレートフラッシュ……ポーカーで一番強い役だ」
唯一、驚かなかったリードが話す。彼女はもしかするとこの勝負の結末を知っていたのかもしれない。
傷の男はまさか自分が負けるとは思っておらず、真っ青な顔を浮かべて口を大きく開けていた。
一体何が起こっているのか分からなかったキャリーもポカンと口を開けていた。
何も揃ってないのに、なんで相手は負けたみたいな顔をしているんだと。
「すごい! すごいわ! あなたの勝ちよ!」
側でずっと見ていたアンがキャリーに突然、抱きついてきた。
太い腕が全身を包み込み全く身動きが取れずに息が苦しくなる。
「んっ、んっ!」
「ああ! ごめんなさい! 怖い思いをさせてしまって本当にごめんなさい……あなたのような子をこんな目に合わせる気はなかったの……私はアン、あなたに危害を加えるつもりはないわ」
アンはキャリーに自己紹介をして笑ってみせた。ほっこりとするような微笑みだ。
「おいアン! そんなにくっつくな。てか、対戦相手の方を応援していたのかお前?」
バーの席で見ていたリードが聞く。アンは当たり前でしょと言った。
「私はいつだって小さくて可愛い子の味方よ」
「くっ……苦しい……」
キャリーは過労じて声を出す。
強く抱き締めていたのを忘れかけていたアンはすぐに離してくれた。
「ごめんなさい、強く締めすぎてしまったわ」
首の骨が折られるんじゃないかとキャリーは思ってしまった。でも、彼女はそんな事しない気がする。
不安と恐怖で苦しかった心臓も今は落ち着いて、話せるようになった。
傷の男に情を尋ねる。
「約束通り話してくれ。アンリードの事を」
リードの鋭い瞳がギラリと光る。
「おい、どう言う事だ? 賭けをしてるのは入って分かったがまさか仲間を売って賭けをしていたのか?」
「ええ、してたはまあ、調子に乗って一発逆転のチャンスを与えて負けたから言い様だけどね」
「おいおい、そっちじゃねぇだろ……」
リードは頭を抱える。
彼女たちの会話に興味がなかったキャリーはもう一度聞いた。
「アンリードはどこにいるんだ。教えろ」
「……るせ……うるせぇ!」
突然、男が机を蹴り上げる。
散らばるチップと共に男の怒声が部屋中に響き渡った。
「うるせぇんだよ! ちょーしに乗んじゃねぇ。たかが、一回勝負に勝っただけで話すわけねーだろ!」
キャリーは咄嗟に後ろに下がる。
机がキャリーには当たることはなくアンが片手で払い除けてくれた。
「あなたね! このゲームで勝ったらこの子の勝ちにするって言ったじゃない!」
一番近くで傷の男の発言を聞いていたアンが叫ぶ。
それを聞いてリードは思わず吹き出してしまった。
「ブー、マジか? フォーカードでそんな事してたの? バッカじゃないの? どんだけ自信あったんだよ。あれは上から三番目でし かないんだぜ。せめて、ストレートフラッシュでやれよ。あはははは!」
「うるせぇ! お前ら! ガキを捕まえろ!」
男の指示に周囲で見ていたごろつきどもは一斉にキャリーに襲いかかる。
このぐらいなら交わせると思った。その時、キャリーの間に割って入る者がいた。
アンだ。
彼女はマルタのように大きな腕を振り回してごろつきたちを吹き飛ばす。
止める人間がいたことに驚いた傷の男は険しい顔で叫ぶ。
「お前! 裏切る気か!」
「あなたが先に裏切ったんでしょうが!」
「チクショ! こうなったら、お前もぶっ殺してやる!」
頭に血が上り、彼は懐からナイフを取り出した。
吹き飛ばされたごろつきも刃物を取り出しながら立ち上がる。
「騒ぐなって。疲れちまう……」
傷の男の背後にいつの間にかリードが立っていた。
彼女もまた男と同じように鋭いナイフを手にしている。
ナイフは彼の喉元に当てられていた。
気づいた男は急いで振り返り反撃に出ようとする。だが、運の悪いことに彼女が当てたナイフが座スパッと首を擦り切れてしまった。
喉から滝のように血が溢れる。
傷の男は何が起こったのか分からずに倒れてしまった。
「……」
「……」
「……」
その場にいた全員が黙り込みリードを見つめる。
彼女は平然とした顔で、アンに声をかけた。
「おい、アン、こいつら片付けるぞ」
呼ばれてアンは、うんと頷き微笑んだ。
彼女たちはまだ、状況が飲み込め切れていないごろつきたちを次々と薙ぎ倒していく。
危険な状況に気づいた時にはすでにリードに背後を取られて、グサリと一突きで背中を刺されてしまう。
最後の一人がバーの棚に投げ込まれるまでキャリーは何も出来ずに漠然と立ち尽くしていた。
「……」
一仕事を終えたように手をはらうリードにアンは言う。
「何も殺すまではなかったんじゃない?」
「いいんだよ。手を組んだだけなんだし、仲間も売ったんだから、当然の報いだ。それにこいつを恨んでた奴は、いっぱいいるだろ? 情報を売りまくったんだからな」
アンは何も言わずにいた。
辺りを見渡しながらリードはキャリーに話しかける。
「次期にお前の仲間が来るだろうが、別に俺たちのことを話してくれても構わないぜ。濡れ衣はやだろ?」
キャリーはポカンとした顔で何が起こったのか、まだ分かっていなかった。
殺し合う意味も何が何だかさっぱり分からない。
もしかして、自分まで殺されるのではと考えたが、彼女たちからはそんな気配は感じられなかった。
真っ白な頭を振り払うために首を振る。
何を話したらいいのか分からないままだった。
キャリーは、今、言えることを口に出した。
「助けてくれてありがとう……」
「……」リードは黙りこむ。やがて、キャリーとは目を合わせずに呟く。「別にお前を助けたわけじゃねーよ」
ほんの少しだけ彼女の顔が赤い気がしてキャリーは親近感を覚える。
「お前、ちーさいけど優しいな!」
「誰がチビだ! 俺はまだ成長途中だ!」
「ふふふふ」
「アン、笑うな!」
怒った顔が、まるで犬が吠える時のように見える。
彼女の額には、皺がよっていた。
突然、大きな音が 響き渡る。
「来たみたいだ……」
すっと落ち着いた表情を浮かべ、リードは言う。
まさか、ごろつきたちの仲間か! とキャリーは警戒した。しかし、そんな必要はなかったとすぐに気づく。
バーカウンター横の扉に手をかける音が聞こえた。しかし、鍵が掛かっていたのか、先程の大きな音で立て付けが悪くなってしまったのかうまく開かない。
「あれ、あきませんね……あっ」
向こうのほうで聞き覚えのある声が聞こえた。
同時に何かが折れる音も聞こえた。
「仕方ありません。ルークさん、下がっていてください!」
次の瞬間、ドアノブの部分を大きな手が貫き扉ごと引き抜いてしまった。
現れたのは大柄で筋骨隆々の男ダインとバシレイアの兵士で兜をつけたルークだった。
二人はキャリーがいることに気がつき驚いた。
「おお! キャリーさん、何があったんですか! 怪我はしていませんか!」
ダインはアンやリードたちには気づかずにキャリーの元まで駆け寄る。
大きな手でキャリーの肩をゆらし問い詰めてしまった。
キャリーはくらくらと目が回り、答えられなくなる。
「目がまわるよ〜」
「す、すまない! つい心配のあまり、力加減を間違えてしまった……先程もドアノブを強く握りしめてしまい、壊すはめになってしまったのだ」
彼は申し訳なさそうに頭をかきながら言う。
ルークは辺りを見渡しながらキャリーにここで何があったのか尋ねる。
キャリーはこくりと頷き、事情を説明する。
二人と別れてから傷の男と情報をかけたゲームをすることになったこと。
メアリーの事は話さなかった。
「……」ルークは膝をついてキャリーと目線を合わせながら謝る。「すまない、君を危険な目に合わせてしまった……」
博物館や移動中に見せたような少し圧のある口調ではなく、静かで申し訳なさそう話し方。
キャリーは少し驚いていた。
オリパスと話している時みたいだ。
キャリーはぼんやりと思った。
「しかし」ルークは続ける。「君を助けてくれた女性たちはどこに……」
キョロキョロと辺りを見渡す。
キャリーも辺りを見渡したが、部屋には誰もいなかった。
先ほどまであの二人はキャリーの横にいたのだが、今はどこにも見当たらない。
首を傾げるルークの後ろでダインが言った。
「その二人なら先ほど出ていきましたよ」
「はぁ?」
思わず大きな声が出る。
ルークは立ち上がりズカズカとダインに歩み寄る。
「お前なにみすみす逃してるんだ! この惨状どうするんだよ。殺人犯だぞ!」
確かに悶え苦しんでいる人や死体が転がっている。
バシレイアの兵士であるルークとしては、話を聞かなくちゃならなかった。しかし、能天気にダインは顔を赤くしながら頭をかいて謝る。
「すまない、キャリーさんを助けてくれたので無理に引きとめるわけにもいかず行かせてしまいました……」
ルークはダインの横を通って急いで外に向かう。二人も後を追うことにした。
階段を登ると初めてきた時と同じ路地に出てきた。
ルークは外に出てすぐに左に曲がり後を追おうとする。しかし、すでに人ごみに紛れてしまったのかどこにいるのか見当もつかなかった。
「逃した……」
ルークが情報屋を出てすぐ後のこと、キャリーたちが出てきたのと同時に物陰からリードが現れる。
「「あっ」」
四人は目があった。
「なんだよ……」
早い再開に不服な顔を浮かべるリードだった。対してアンはキャリーを見て目を輝かせながらハイタッチを求めてくる。
キャリーも答えてタッチした。
「イェーイ!」
あんま仲良くするなとリードは言う。
彼女はアンと同じかそれ以上に大きな体つきをしたダインの方を睨んだ。
警戒されてしまっているのだな、と察してあまり怖がられない様に優しい口調で話す。
「先ほどはどうも、キャリーさんを助けてくれてありがとうございます」
「そのセリフ、さっきも聞いたからいいって。別にこいつを助けるつもりでやったわけじゃ……」
言いかけた時、リードのほっぺをアンとキャリーが挟み込む。
「またまた〜そんなこと言っちゃって」
「お前らやめろ……」
リードにそろそろ怒られるとアンはすぐに手を離した。
キャリーも真似て手をどける。
ため息を吐きながら彼女は言った。
「俺たちはこの後も予定があるんだ。行かせてもらうぜ。行くぞアン」
「うん、じゃあね」
彼女たちは路地の外に出て人混みの中へと消えていった。
会うことはできたが結局、足止めができなかったことを二人は特に気にしていなかった。それどころか……
「いい……」ダインは顎に手を添えながら呟く。「実に美しい方であった」
ほてった顔をして離れていくアンの背中を見つめていた。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
まさかまさかの引いたカードがそろっていたとは、
しかも、ポーカーで一番強い役なんて、
運がいいですね。
賢い計算はできないのでネットから持ってきた確率を張ってみます。
「ジョーカーなしの52枚のデッキで行われる場合、ポーカーの5枚の手札の組み合わせは
52!/5!(52-5)!=2598960
であるため、全部で約260万通りの手札が考えられますが、
そのうちロイヤルフラッシュが成立する手札は4通りしかありません。
そのためロイヤルフラッシュが出現する確率は「4/2598960」となり、
パーセンテージで表すと「約0.000153%」となります。」
うん、相当な確率ですね……
僕は一定以上の数字になると考えるのやめちゃいます。
最後は気の抜けた感じで別れましたね。
おやおや、ダインの様子が変ですね。
もう少し(二倍程)話が続きますが、読んでほしいです。
この後もよろしくお願いします。
「キャリー・ピジュンの冒険」に興味を持ってくださったら、
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