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北からやって来た、筋肉モリモリマッチョマン Lv.1(四話)

 扉が開く音を聞いて、三人は振り返ると重い銀色の鎧を着た男が一人立っていた。

 ダインとムグレカは、誰だと、首を傾げていた。


 いつの間にか、キャリーはムグレカの背後に隠れている。

 彼女は彼の服を強く握りしめた。

 何か、やらかしたのか、とムグレカは思ったがそうじゃない気がした。


 服を強く掴むだけでは止まらず、爪を立て始めている。

 ムグレカはやめる様に声をかけた。すると、我に返りキャリーは、ごめんと謝って後退りする。


 階段でうとうととしていたシルフィードが目を覚ました。

 入り口に立っている人物を見て笑みを浮かべる。


「これは、これは、バシレイアの兵士さんじゃないですか。どうしたんです? わざわざ、こんな、庶民の配達業者に訪れるなんて」


 庶民の配達業者についてムグレカは、嫌みのように聞こえ首を傾げる。


(配達はやってるけど、誰かに頼んでやってる事だから業者じゃない気 がする。どちらかと言うと何でも屋な感覚だった。配達、討伐、他様々な事を引き受けては、誰かに頼んでいる所だよな、ウチって……)


 特に何か言わずに、黙って様子を伺う。

 兵士はペコリとお辞儀をして中へ入って来た。


「こんにちは、僕はルークと言う。今日は、依頼を出しに来たんだ」


 顎を引いて、目を細めながらシルフィードはわざとらしく驚く。


「へー珍しいね。バシレイアには、優秀な兵士がいるでしょ? それに教会の人間と関わりが深いはずだ。なんで、わざわざウチなんか頼るんだい?」


 ネチネチとした態度にルークは不愉快に思った。


「失礼ながらあなたは?」


「僕かい? 僕はここの支部長」


 スッと目線をムグレカに向ける。


「はい、彼は支部長です……」


 目を逸らした。


「ちょっと? なんで、目を逸らしてるのかな、ムグレカくん?」


 信頼度がことごとく低いシルフィード。しかし、そんな事、あまり、あまり……少しだけ気にしている彼は、階段で悔し泣きを始める。


「しくしく、みんなが僕をいじめるよ〜本当に本当に支部長なのに……」


「カッコ悪い……」


「そんなに泣くなら、支部長らしい事して下さいよ……」


 確かにそうだと顔を上げた。

 嘘泣きだったのか?

 シルフィードは、ケロッとした笑顔でルークに話しかける。


「それで、一体、バシレイアの兵士さんは、何用かな?」


 ルークは、こくりと再び頷いてから話す。


「美術品の警護を手伝ってくれる者を探してる。出来れば、腕に自信のある者に頼みたい」


 ここにはうってつけの人者がいた。


「その話、腕に自信のある者とは……それはつまり、私の事かぁ!」


 両手を下に広げて腰を捻るダイン。この瞬間、キャリーが買って来たばかりのシャツがすべて弾け飛んだ。


 パシュン!


「……」


「……」


「ブゥーはははは、ついに服がははは」


 飲んだくれのシルフィード以外は唖然としてしまった。

 半裸になったダインは、髪をかき上げる。


「ふふ、すまない。どうやら、私のマッスルパワーがあり過ぎたようですね」


 マッスルパワーってなんだよ。とムグレカは、冷たい視線を送ったが、分厚い筋肉に挟まれて良心に訴える事はできなかった。


 爆笑していたシルフィードは落ち着き、涙を拭き取ってから話す。


「うん、丁度いいかもしれないね。兵士さん、こちらの筋肉モリモリ、マッチョマンは、ダイン。今さっき、依頼を求めてやって来たんだ。どうだい、彼を雇うのは?」


 ルークは、腕を組んでこくりと頷いく。


「そうだな。そうさせてもらいましょう。あと、もう一人雇いたいのだが……」


「それなら」シルフィードは、ポンと手を叩く。「そこのキャリーを連れて行けばいいでしょう」


 ムグレカの方を指差した。

 キャリーは、扉の前にいるルークとは、因縁があって関わりたくない。このまま黙って、ムグレカの背後に隠れようと思ったが、すぐにおとなしく姿を現した。


 俯いて暗い表情を浮かべていた。


「こんな、子供に?」


「子供と見て侮るなかれ! 彼女は、誰よりも足の速い子なんです。きっと、力になると思いますよ」


 満面の顔のシルフィードは、どこか詐欺師の様な感じだった。

 ルークは他に良さげな人はいないかと辺りを見渡す。


 その場にいたのは、それなりの年降りか、自分より遥かに弱そうな奴ばかりだった。

 目の前の大男以外は、心もとないと感じる。仕方ないので、すすめられた少女にしようと決めた。


「それなら、そこの二人、来てくれ。と、その前に手続きをしないとだな」


 ルークは、受付に立って、ムグレカの案内の元、正規の手続き進めた。

 あとは、ルークが書くだけとなった時、ムグレカは、キャリーに小さな声で話しかける。


「キャリーさん、あの人と何かあったんですか?」


 こくりと頷く。


 なんとなくだが、兵士が来てからというもの、背中に隠れてばかりのキャリーの様子がおかしいと気づいていた。


 一体、何があったのか、尋ねてみる。しかし、ルークが書き終えてしまい聞く機会をなくしてしまった。

 依頼書を受け取り、ダインとキャリーに証明書を渡す。

 ムグレカは、キャリーに言った。


「もし、嫌なら受けなくても良いんだよ。君は、とっても稼いでるんだから……これを断っても困らないし……」


 嫌味なつもりではないのだが、上手く伝えようとして、こうなってしまった。

 俯いていたキャリーは、顔を上げて笑顔を見せながら首を振る。


「大丈夫……」


 その一言だけだった。

 無理してることなんてすぐにわかるが何も言わずに見送った。

 ルークに続いて外へ出る時、ダインは、二本指を揃えて軽く振った。


「それでは、行ってくる」


「はい、依頼が完遂したら、証明書をここに持って来て下さい」


 心強い助っ人と筋肉モリモリ、マッチョマンがいなくなっても、ムグレカの仕事は終わることはなかった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。どうも、あやかしの濫です。

覚えている人がいるかどうかと、考えるといなそうなルークさんです。お久しぶりです。

彼はキャリーの大切な人を捉えた牢の看守です。と言っても、戦争後なので手の空いてる職員は他行けというスタンスで働いてるので彼がここに来たのもそういう訳です。

「キャリー・ピジュンの冒険」に興味を持ってくださったら、

ブックマーク、評価を付けてくださると嬉しいです。

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