舞い降りる希望 Lv.5(十話)
ガッガッと天井や床を這いずりながら近づく機械の音。
ドレスのスカートの様に広がる四本足に、凛とした姿勢をとる人形。
無骨な見た目ではあるが、シルエットはどこかのお嬢様だ。
薄暗い通路から迫りくるすがたはまるで亡霊である。
そんなロボットがルークに向かって来た。
ロボットは口をパカッと大きく開き、首が折れた様に頭を後ろに向ける。
次の瞬間、槍が勢いよく飛んできた。
端によけられていた荷物を道にぶち撒けながら、突き出る槍を交わすルーク。
「この!」
巻き戻ろうとする槍を捉え、折れた剣で叩き切る。
舌を切られたロボットは悲しそうにカチカチと鳴き出してしまう。しかし、次の遊戯に素早く移った。
鋭く尖った足を突き出してくる。
「うお!」
ルークは転がりながら交わす。
ある程度の距離を置いて彼は体制を整える。
「コイツは他のロボットとは別格だな」
今まで戦ったロボットは無骨だが人の形をしていた。しかし、目の前のアレは違う。
上半身は百歩譲っても足回りは虫に近い印象だ。
(あの怖い顔はどうにかならなかったのか……)
痩せ細った人の顔と皮が剥がれて髑髏が入り混じった姿。
小さい頃に見ていたら、怖くて寝られなかっただろう。
大人になっいてよかった。
ルークはため息をついてしまう。
「しかし、どうしたものか……この折れた剣ではまともに戦えないぞ」
ルークは無意識に弱音を口にする。
唯一の武器は今、手に握られている折れた剣だけだった。
コレでも多少はなんとかして見せたが、流石に苦しい。
本来の長さと重さではない為、しっくりこない。
「しかない……コレでなんとか」
例え、折れていても戦うことは出来る。
そう、覚悟を決めようとした。その時、通りに面した上の階から一人の青年が飛び降りて来る。
「おじさん! コレを使って」
彼はガラス瓶の様な容器を幾つも載せたリュックを手渡す。
「え?」
突然の事にルークは目を丸くした。
驚く彼に少年は言う。
「今、戦っているんでしょ。なら、僕の作った武器を試しに使ってみて欲しいんだ」
武器の試し心地を知りたい。
熱心に言う少年にルークは言葉を失ってしまう。
確かに戦っているが、それはこの街が敵意を寄せる国の為だ。
寧ろ自分は忌むべき相手なはずである。
もちろん、新しく武器は欲しいが、本当に受け取っていいのか分からなかった。
「ふっ! 大丈夫、使い方はそのリュックに繋がっている筒を持って、剣と同じ様に振るえばいいんだ」
こちらの返事も聞かずに少年は折れた剣を取り上げ、使い方を話し出す。
「ちょ、ちょっと待て、なんで俺を助ける?」
慌てたルークの問いかけに彼は笑顔のまま首を傾げた。
「別に、助けるつもりはないよ? 僕は自分の作ったものがどれだけやれるか知りたいんだ」
彼はすかさず、ルークの背中に武器を背負わせ、筒を持たせる。
あっという間に着け終えると彼は足早にその場を離れて行った。
物陰に隠れる前に彼は言い残す。
「道具は実際に使ってみないとその良さは分からないでしょ」
「……」
言っている事は間違っていないが、訳が分からない。
頭が痛くなる思いだ。
少年から渡された道具はずしり重く、無骨な筒にはリュックに続く管がついている。
それと何やらボタンがついていた。
「あっ待って!」
少年は物陰から顔を覗かせて叫ぶ。
「おじさん、持ち方が逆。それだと自分を刺しちゃうよ!」
ルークは黙って管のついた方を下にした。
少年はそれでいいと頷き、再び姿を暗ます。
これでロボットに殺されたら恨んでやる、と思いながら、彼はボタンを押してみた。すると、ボッと吹き出る音と共に赤く真っ直ぐ伸びる炎の柱が筒の先端から飛び出てきた。
「名付けて、バーナーブレード。吹き出し続けるとガス欠になるから早いところやっちゃって」
少年の補足を聞きながらルークは今一度、目の前のロボットに目をやる。
四本足の上には凛と佇む錆びちゃけた色の亡霊が佇んでいた。
実態のない剣で本当に戦えるのか、疑問を覚えるが、直に感じる熱は何かをしてくれる期待感を持たせてくれる。
ルークは慣らしで振り回してみた。
ブンブンと蜂の様に音を立てながら、溢れ出る炎は揺れる。
剣とは思えないバランスに違和感を覚えてしまう。だが、ちょっとばかり未知の体験に期待感を寄せていた。
気持ちの用意ができたルークは一直線にロボットへ立ち向かう。
ロボットも隠していた歯車を剥き出しにして、迎え撃つ。
迫り来る攻撃を交わしながらルークは渡された武器をロボットの足に切りつけた。
燃え上がる炎の剣をロボットの足に触れた瞬間、その場所が赤く色付き、ドロドロと溶けていく。
あっという間に四本の足が三本に変わってしまった。
「驚いた……ここまで切れ味がいいなんて? 鉄を溶かす程の熱を持っているんだな」
感心するルークだったが、バーナーブレードの頭身が途端に短くなる。
「なんだ?」
驚く彼に一部始終を見ていた少年が叫び出す。
「すごい! さすが僕だ! あぁ、だけどやっぱりガスを使い切るの早いな。これじゃあ使い物にならないか」
少年は自身の作品の改善点について一人没頭し始める。
ロボットをまだ、倒しきれていないルークは少年を睨みつけた。
「おい、それじゃあ、俺は何で戦えばいいんだよ!」
渡された物がダメになったら、使える物がいよいよなくなってしまう。
折れていても剣を返して欲しい。
「なら、今度はうちのを使って!」
声を荒げて、少年のとこへ行こうとした。その時、一部始終を見ていた技術者が声をかける。
「おいおい、小僧。抜け駆けはいただけねぇな。俺の傑作も使ってみてくれ。兜の旦那」
建物に隠れていた住人が次々と顔を覗かせ、ルークに武器を放り渡す。
スタックタウンの異質さに驚いてしまう。
どの武器も無骨な見た目で、純粋な切る叩くだけではない。
紅蓮の竜巻と言う象徴に近づこうと残忍な物も多かった。
ひっきりなしに押し寄せる技術者の武器にルークは考えるのがいやになる。
「あぁ、もう! 分かったよ!」
首を鳴らしながら叫ぶ。
「全部使ってやる! よこしやがれ!」
ルークは彼らの要望に応えながら、まだまだやって来るロボットたちを相手取ることにした。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
技術の街スタックタウンでは需要よりも供給が過度に多いため多くの技術者が自身の作品を売り込みます。
敵味方、所属など些細な事、彼らは自分の作った武器がどれだけ優れているか知りたいのです。
あと……こう言う武器を小さい頃から振り回したいとずっと夢見てるんですよね。
きっと、楽しいはずです。
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