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洗濯稼業は、ノイズがやまない Lv.1(一話)

 朝日が昇る前、ほとんどの人が、まだ眠っている時。川のせせらぎが聞こえる橋の上で、一人の男が立っていた。


 彼は時々、辺りを見渡したり、腕時計を眺めたり、あるいは、遠い壁の向こうを見る。

 空は暗い。星々の宴会はすでに幕引きとなっていた。

 何も見えない空の中に微かに動く影が見えた。

 うっすらと見えただけだが、それだけで十分だ。男はニヤリと笑う。


 懐から短い杖を取り出し、誰かの眠りを妨げないように、服で杖は隠す。


 もちろん、これから会う相手にだけは見えるようにだ。


 彼は、ゴニョゴニョと小言を溢す。すると、杖の先から青白い小さな光が現れた。

 空にいる相手に分かるように揺らしてみせる。


 すぐに気づいてくれた。


 向かってくるのが分かり、男は腕をあげる。

 光に導かれてやって来たのは、一羽の伝書鳩だった。鳩は、二、三回、羽をばたつかせてから男の腕に着地する。

 男は微笑みを浮かべながら鳩に話しかけた。


「少し遅かったんじゃないか?」


 そっぽを向かれてしまった。


「まあ、いいや。長旅ご苦労様。ここからは僕が引きたぐよ」


 鳩の足に手を添えながら言った。手紙を受け取ったのだ。

 ふと、周囲から人の気配を感じ取る。


 誰かが目を覚ましたのだろうか? なーんて、訳もなく。重々しい空気を感じる。


 男には分かっていた。

 こいつらは盗賊だ。


「おい、これ不味くないか?」


 男の懐で誰かが囁く。


「早い事、オレ様を飛ばせ」


「悪いけど、ちょっと、すぐにはできないと思う」


 男が言い終わる前に、風切り音がなった。

 盗賊が剣を抜いたのだ。


 彼らは何も言わない。徹底してるのだろう。

 後ろから殺気を感じ取る。男はすぐに振り返った。


 すでに別の盗賊が、すぐ側まで近づいていたのだ。寸前のところを交わす。

 男は、反撃に杖を構えた。

 切り掛かった盗賊が飛ばされて、橋の手すりに叩きつけられる。


 最初に切り掛かって来た盗賊が狼狽える。

 これはチャンスだと思った彼は、伝書鳩が乗る腕を振り払う。同時に鳩が飛び出した。


 飛び立つ鳩に目を奪われてしまった盗賊たちは、すぐにまだ逃げていない男の方を見た。しかし、その場にはおらず走り出していた。


 男は、鳩を飛ばしたのと同時に、すでに走り出している。

 鳩は、真っ直ぐ川の下流、壁の外を目指して飛び出した。

 流れる様な逃亡に盗賊の一人が思わず声を上げる。


「くそ! 追え、鳩の方もだ!」


 まだ、影に潜んでいた奴らも一斉に動き出した。

 走り出した男の元に鳩が戻ってくる。


「おい、大丈夫か? 街のごろつき全員が追って来てるぞ」


「なんとかするよ。お前も気をつけろよ」


「誰に物言ってるんだ?」


「まあ、大丈夫か。でも、酒に酔った野良猫に爪ひっかけられるなよ」


「んなこと起きる訳ねえよ。ありえねー。たくよ、酔っ払いはお前だつーの」


「残念、今日はまだ、飲んでないんだ」


「知るか、気をつけろよ!」


 逃げながら、少し話した後、彼らはまた、二手に分かれる。

 高く舞い上がり屋根の上のどこかで、やり過ごそうと思った鳩。その時、目の前に小さな獣の手が見えた。


「え?」


 鳩は思わず声を漏らす。次の瞬間、小さな手は、叩く様に羽を切り裂いた。


「フガアアア!」


 何が起こったのか、一瞬、分からない。


 落ちていく鳩は、誰にやられたのか、目を凝らして見ると黒猫が目を細めて、毛並みを整えている。


 どこか泥酔しきった様子で、しゃっくりをしていた。

 男との最後の会話を思い出す。


 酔った野良猫に爪をひっかけられるなよ。


 正夢を喰らった様な気分で、鳩は思わず、怒りの声を上げた。


「シルフィードの馬鹿やろォォォ!」


 叫び声に釣られて盗賊たちが見上げると鳩が遠くの方で落ちていくのが見えた。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

すみません、投稿が少し遅れました。普段、作品を書いたら、リアルの知り合いに試し読みをしてもらってるんですけど、この作品を人に見せるのを忘れてました。

一様、親に見せたので、なんとか、用意できたのです。

「キャリー・ピジュンの冒険」に興味を持ってくださったら、

ブックマーク、評価を付けてくださると嬉しいです。

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