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舞い降りる希望 Lv.5(四話)

 洞穴の様に暗く、檻の様に上下左右には鉄の柱が立つ通路。

 細かい歯車とバネが敷き詰められた箱をいじる少女がいた。


 髪を憧れの様に赤く染めて、サイドテールに結んだ少女の名前はガーネット。

 機械いじりを終えた彼女はガチャンと音を鳴らしながら壁に取り付けられた箱を閉める。

 横側には鬱屈とした狭い場所に僅かながら広げられた空間があった。


 彼女はチラリと上の方を見る。


 深い穴の底から見上げた時の様に、眩しい空が広がっていた。

 ポツ、ポツと少し離れた場所で水が滴る音が響く。

 ガーネットはチラリと音がする方を向く。

 見ると水よりも濃く、オイルよりも色鮮やかな赤い血が雨水の様に滴っていた。


「!」


 彼女の胸がギュッと締め付けられる。


「バカパス、大丈夫なのよね?」


 今、上では荒野に大穴を開けるほど強力なレーザーを神の国に向けて発射しようとする者たちと今までの犠牲の為、それを止め様とする大バカ者のオリパスが戦っていた。

 オリパスは目つきが鋭く、分け目の隙間から覗く視線はいつも怒っている様で怖い。


(初めて会った時は冷たい人のイメージがあったけど、今は違う……)


 仲間思いで、紅蓮の竜巻メアリー・ホルスの側にずっといた。

 彼は裏切り者としてメアリーを殺したと言われている。

 ガーネット自身、恨みを抱いているが、それ以上に彼も自分自身を恨み続けていた。

 自ら死のうとはしない。いや、死ぬためにメアリーの思いを終わらせないように動いていた。


「ただでさえ、弱いのに……」


 気づけば、両手を握りしめて無事を祈り始めている。


「ち、違うわ。あいつがくたばったら誰もメアリーお姉ちゃんの願いを叶えてあげられないの! あいつがどうなろうと知ったこっちゅないわ」


 吐き捨てる様に叫び、手を解こうとした。しかし、震え絡まった指を解くのは難しい。

 ガーネットはしゃがみ込み小さく丸くなった。


(上の状況が分からない……)


 今すぐ、階段を駆け上がり、上層へ行き、オリパスに合流したいと考える。しかし、行ったところでなんだと言うのだ。


 自分の身の丈は分かっている。

 ガーネットは悔しそうに奥歯を噛み締めた。


 彼の元に行ったとしても、なんの助けにもならない。


 彼以上の足手纏いになる。


 そんな経験は二度とごめんだ。


 ガーネットの脳裏には、満月の夜、荒野に脱げた赤い靴が浮かぶ。

 オリパスとメアリーが遠くに行くのが見えた。


「ッ……」


 ならば!


 彼女はバッと立ち上がり背後の通路を眺める。

 真っ暗な通路が真っ直ぐと続いているだけだった。

 胸ポケットにしまってある懐中電灯を取り出す。

 ここに訪れてから三分もまだ、立っていない。だが、彼女の気持ちは焦ってしまう。


「遅い!」


 人は待つ時が一番長く感じてしまう。

 懐中時計を抱える手の人差し指はトントンと小刻みに動く。

 ガーネットはまだかまだかと誰かを待っていた。


 今のオリパスに必要な物を最速で届けてくれる人を待っていたのだ。

 その時、パンと弾ける音が頭上から響く。


 ガーネットはビクッと肩が跳ねる。

 見上げたが上手く見えない。


「上の様子をどうにかして知りたい……」


 ここから離れず、様子を伺う方法がないか、ガーネットは睨む様にあたりを見渡す。

 ふと、暗い通路へ進む道にラッパの様に広がた口に、上へと伸びるパイプがあった。


「連絡に使う管……これなら!」


 ガーネットはフッと笑みが溢れる。

 よく考えれば、すぐにこれを使っていたのに、今までなぜ思いつかなかったのか不思議だ。

 彼女は駆け寄ると一つ一つに耳を傾ける。


 これで上の様子が分かるはずだ。


 期待感に胸を膨らます彼女だったが、刺される様な絶望がパイプの口から突きつけられるとは知らなかった。


 静かな空気の流れる音の後に聞こえてきたのは、小さく聞き漏らしそうなこもった声だ。


「は……カ、チェン………ノ、マン」


 男の人で理知的な気がする。

 ガーネットは目を瞑り、これでもかと耳を管に押し当てて、声を聞こうとした。


「……だろ? 戦争は辞められないし、止めさせない。これから神の国バシレイアを滅ぼす。もう止められない」


 ようやく、聞こえた時、男の発言にガーネットは声の主は敵だと判断する。

 状況がまだ飲み込めない。

 何が起きているのか、ガーネットが理解する事なく話は進んでいってしまう。


「オットー、そして、オリパスだったかな? 君たちはここで死んでもらう」


 死んでもらう、そのことを聞いた瞬間、ガーネットは顔をあげて、連絡用の管を見つめる。

 ラッパの様に広がる口はまるで、嘲る様に笑顔を浮かべていた。

 この口の向こうには知り合いが追い詰められている。


(オリパス、やっぱり死にそうじゃない! 待って……オットーもそっちにいるの? なんで、だってあの人たちは……ていうか、二人して殺されそうになっているの?)


 敵対していたかつての仲間、サソリの右腕オットーと共にオリパスが殺されそうになっている事に想像がつかない。


「合図と共に一斉に撃て」


 あたふたとしているうちに謎の声の男は、おそらく側にいる部下たちに指示を出す。


(止めなくちゃ!)


 ガーネットは慌てて、レバーのついた箱の前まで行く。

 急いで装置を動かして、上へと向かおうとした。だが、寸前のところで手が震えてしまう。


 このレバーを下げれば駆け付けられるのだ。

 だが、固く動かせない。


 本当に行って助ける事ができるのか?

 しかし、行かなくては殺されてしまう。


 破裂しそうな心音に、狭まる視界。

 動いたとして、その先で何をしたらいいのか、分からなくて怖くなってしまう。


「臆病になっちゃダメなのに……ガーネットのバカ! 腰抜け、カス女!」


 行こう、行こうと感情は叫ぶのに体が言うことを聞かない。

 思い通りに動かない体にイヤになる。

 悔しくて、目頭が熱くなっていく。


「このレバーを引けば、上にいる、あいつの場所まで行けるのに……」


 足から力が抜けていく。

 こんなにも情けない自分はもう見たくなかった。


 あの夜の様に誰かの足手纏いになりたくはなかったのだ。


 ぽつり、ぽつりと涙が流れていく。


 うな垂れるガーネットだが、彼女は一つ忘れていた。


 どうして、すぐオリパスの元に行かなかったのか?


 怖いから?


 死んでしまえと憎んだから?


 どちらでもない。


 ガーネットはあの子が駆けつけてくれることを信じていたのだ。


「お待たせ!」


 レバーを握り、俯くガーネットに小鳥の様な高く、元気な太陽みたいな少女の声がする。

 振り返るとどれだけ待ったか、溢れ出る涙は止まり、ガーネットは目を輝かせた。

 不安で強張る顔は緩み、彼女らしい強気な笑みが戻る。


 ガーネットは胸を熱くさせて、やってきた少女に指示を出す。


「乗って!」

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

あの戦いの下ではこんな葛藤があったとは……

ガーネットはとてもまじめで頑張り屋な子なので失敗などを引きずりやすいです。

あの夜の事はまだトラウマ級ですね。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


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