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舞い降りる希望 Lv.5(一話)

 折り重なるように建物と機械が噛み合う技術の街スタックタウン。

 燦々と照らす太陽は覆い被さっていく家やパイプにより隙間から差し込むことしかできない。

 むせそうな暑さと乾いた空気が吹き抜ける。


 ドンッと編み目の板に飛び乗る音が響く。

 フリルのついた長いスカートに、ささやかなおしゃれの服。

 憧れを真似て赤く髪を染めた少女が、交差する渡り廊下から飛び降りてきた。


「急がなくちゃ!」


 慌てる彼女はスカートの汚れなど気にせず、めくりあげて走り出す。

 元々、煤が多い街では当たり前のことだ。

 彼女は追い立てられる様に焦り、何度も背後を気にしていた。


 その時、少女の周りに火花が散る。


「!」


 顔を覆い、驚いた少女だが、危機はまだ続いていた。

 風を切る音と共に足元からギザギザな円盤が飛んできていたのだ。


「きゃ!」


 悲鳴をあげながら交わす。しかし、お気に入りだった服が裂けてしまった。

 ヒリヒリとした痛みが肩に出る。


「逃げないでよ。この武器、ただでさえ挙動がヘンテコなんだから」


 嘲る声に少女は睨みを効かせて顔を上げた。

 そこには自分よりも背が高い女がボウガンの様な武器を手にこちらを見下ろしている。


 左右の髪を剃ったヘアスタイルにサラシを胸に巻いて、ズボンだけの相手。

 少女は服のセンスが合わないとすぐに断言した。


 女は面白いのか、呆れたのか、ため息をこぼしながら言う。


「本当、この街の連中は馬鹿かばっかりよね。せっかくみんなで一致団結に宿敵を滅ぼそうって、盛り上がっている時に水を差すような連中がいるなんて」


 肩の傷を庇いながら少女は言い返す。


「終わったことにも気づかない馬鹿はさすがにいないと思ったわ。会えて嬉しい。でも、残念。戦争は終わったの。勝ったのは神の国バシレイア。私たちスタックタウンは負けたのよ」


 彼女の言葉に女は眉を顰める。

 気に入らないのだ。


「紅蓮の竜巻、メアリー・ホルスを殺されて潔く負けを認めろなんて、正気? あなた若いのに相当この街の人間なのね」


 人差し指を頭の横でくるくると回す。

 ネジが外れていると言いたいのだろう。

 認める様に少女は鼻で笑いながら言い返す。


「そう言う、オバさんは技術者なのに、くだらない物を作ることしかできないみたい。なっさけな」


「あ?」


 空気が一瞬で変わる。


 技術の街スタックタウンでは多くの技術者が住んでいた。

 彼らはプライドが高く、自らの腕と作品に誇りを持っているのだ。その事を技術者である少女はよく知っており、利用した。


 案の定、女は怒りを露わにする。


「あぁ、あんたムカつく。死ねば、それであたしのカッテングブラストがすごいって証明してあげる」


 子供相手にマジになるとかダサ、と言い返す間もなく相手は再び丸鋸を撃ち出してきた。

 少女は慌てて逃げ出す。しかし、次の攻撃は先ほどの様に飛んで来なかった。


 弧を描く様に打ち出された丸鋸は、大きく回り込む。


 少女の通る通路の横を潜り抜けていく。

 スカートを切り裂き、足を切り付けた。


「いや!」


 短い悲鳴と共に倒れ込んでしまう。


「可愛い声出すのね。もっと叫ばせてあげたいけど、あたし、忙しいの」


 ゆっくりと近づく女はコレからの予定について語る。


「ファイアナド騎士団の裏切り者オリパスって男がいるんだけど、そいつを殺しに行かないと。そうすれば、あたしの工房が注目されるの」


 嬉しさのあまり息を飲み込む女は申し訳なさそうに少女を見下ろした。

 冷めた瞳は一切の慈悲もない。


「まぁ、そう言うことで」


 女は丸鋸のボウガンを少女に突きつける。

 逃げられない少女は悔しそうに睨みながら唇を噛み締めていた。だが、ぐったりと倒れてしまう。


(ぐっ……ここ数日の疲れが、今になって……永い眠りなんて洒落にもならない)


 過酷な状況に体がもたなくなってしまったのだ。


 女は構うことなく、少女に引き金を引いた。その時、遠くの方から風を巻き付ける様に大きな音を立てて飛んで来た。


 それは少女と女の間に割って入る様に突き刺さる。

 僅かな間、目を覚ます少女が目撃したのは、エメラルド色に輝く樹液を垂らす、古き時代の大剣だった。

 


 

 巨大な歯車に囲まれ、入り組んだパイプの上に作られた通路の上で一人の少女が横たわっていた。

 赤い髪のつむじには黒い地毛が生えて、憧れに近づこうとしていたのが分かる。


 赤く染めた髪はサイドに束ねて、汚れが目立たない茶色いリボンで結んでいた。

 おしゃれな服とフリルの多い長いスカートを履いた彼女は寝心地の悪い場所に小さく唸る。


「うっ……」


 若くして時計店を構えるガーネットは、ここ数日の徹夜と突然の緊急事態に緊張の糸を張っていた。


 危険から逃げる最中、傷を負ってしまった彼女の緊張の糸はプツンとちぎれてしまう。今は気持ちよさそうにぐったりと気を失っている。


 そこに一人の少女が忽然と現れた。

 彼女は倒れている少女に気づくと慌てて体を揺すり始める。


「ガーネット! ガーネット! しっかりして」


 ピーピー小鳥のようになく声に倒れていたガーネットは唸りながら意識を取り戻す。


「うるさいわね……もう少し眠りたいの」


 文句を言おうとする彼女に現れた少女は、ピシャリと叫んだ。


「オリパスたちが危険なんだよ! 起きて!」


 彼女の言葉に眠っていたガーネットはバッと編み目の床から這い上がった。

 寝ぼけてはいられない。


 折り重なる建物と歯車の中、目を覚ます。


 ガーネットは起こしてくれた少女の方を見る。


 通路に座り込んだ少女はガーネットのほっぺにくっきりと写った編み目模様に対して、黄色い目を見開く。


 可笑しくて笑い出しそうな口を押さえながら綺麗な金髪をプルプルと震わせた。


「キャリー……」


 ガーネットはなぜ、キャリーがここにいるのか不思議でならない。しかし、それ以上に気になったことがあった。


「何笑ってんのよ?」


 首を傾げる彼女だが、飛び起きてから少し落ち着いてきた。

 ほっぺたが痺れるような感じに気づく。


 そっと触れてみると、でこぼことした手触りがあった。

 ここでようやく自分の顔に跡が付いていることに気づく。

 ガーネットはプツンとキレて、キャリーのほっぺたをつねる。


「ご、ごめんって……」


 伸び縮みするほっぺの持ち主のキャリーは申し訳なさそうに謝った。


「ねぇ、ここで何があったの?」


 引っ張るのをやめてもらったキャリーは、頬を押さえながら尋ねる。

 スッとガーネットの背後を指差した。

 振り返ると一本道の通路の先はなかった。


 真っ二つに切られていたのだ。と言うよりも、先の道が溶けて無くなっていた。

 鉄製の渡り廊下は蝋燭が解けた様な痕を残し、先がなくなっている。


 ガーネットは驚いて目を見開く。彼女も何が起きたのか分からないのだ。

 頭を抱えながらここまでの経緯を思い出す。


「確か、技術者の女に襲われて……」


 意識を失う前までは覚えている。しかし、最後に見た光景だけは思い出せなかった。

 まるで、記憶から溶けて無くなった様だ。


(一体、何が起きたの?)


 不思議がるガーネットだが、今はそれどころではない。

 彼女はチラリとキャリーの方を見て叫ぶ。


「こうしちゃ、いられないわ。キャリー手伝って!」


 自分と同じぐらいの幼い手を取ってガーネットは立ち上がる。


 足の切り傷はすでに誰かが治療してくれていた。だが、彼女は気づいてない。


 キャリーを連れて走り出した。

 彼女は道なき道を通り抜けて、とある工房までやって来る。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

なんとか、投稿に間に合わせられた……犠牲は……あった……

ガーネットはやはり、言葉にパンチがありますね。

ゲームを遊んでいる際に少女からお姉さんキャラ相手に向けた、

オバさん呼びが中々な癖があるような気がしてしかたなかったんです。

何言ってんでしょうこのあやかしは?


さて、ガーネットを助けたのが誰か、とても、気になりますがこれはまた別のお話でございます。

キャリー・ピジュンの冒険「舞い降りる希望Lv.5」をぜひ、お楽しみください。


「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


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