三人の逃亡者 Lv.4(十話)
「学校って知っているか」
ボウガンで頭を撃たれたジモラだが、それでも息をしていた。
視界の端は赤く染まり何も見えない。
うっすらと見えるのは復讐に囚われ、怒りに燃える親友の姿だけだ。もっとも、向こうはすでに人を相手にしていると想っていない様だった。
そんな中、彼は戯言を話し始める。
「霧の国にでっかい学校があるらしい……」
掠れる声で呂律すらまともに回っていない。
「そこではみんな、席に着いて授業を受けるそうだ」
これはシルフィードや旅人たちから聞き齧った話である。
「学校では同じ服を着て、繰り返し続く退屈な場所らしい。息苦しい静寂の中、自由に動けず、役立つか怪しい授業を受けて過ごすんだと」
「そんな場所、行く必要があるのかい?」
サイは口を挟む。
本来なら黙って殺すが、ジモラ相手にできない。親友だからではなく、予測ができないからだ。
その為、一つ一つの話を慎重に聞かなくてはいけなかった。
「ッチャ、さぁーな、俺が知るわけないだろ?」
学校なんて行ったことないのだから。
「ただ……」
話をしてくれた旅人はつまらないと言っていた学校を愉快げに話していたのはよく覚えている。
「その後、授業を終えた後が面白かったんだと」
一息置いて話し続けた。
「特に放課後ってのが楽しくて、友達と過ごすんだと、カードで遊んだり、どこか店に行くなり、何かに打ち込むことだってできる」
ジモラはゆっくりと自分たちが学校へ行けていたらと想像を膨らませた。
きっと、サイは率先してクラスのために動き、ディフィレアは彼に着いて行っただろう。
自分も彼らと同じ場所に属さなくても、共に行動した。
明るく、晴れやかな空。
柵の向こうには街が広がり、刑務所に思う反面、楽園にも思えた。そして、その向こうにはサイの母親も生きているのかもしれない。
(あぁ、美味しそうだな……きっと、そうに違いない)
ジモラは最後に溜まっていくお腹に触れる。
(こんな、素敵な瞬間をずっと……ずっとずっと、見ていたいなぁ……そうだ、写真。写真を撮ればいい)
ふと、思いつく妙案に口元が緩む。
「なぁ、射影機を使ったことはあるか?」
まだ、話が続くのかと飽き飽きとするサイに構うずに続けた。
「ちょっと前に使ったんだが、ッチャこれがうまく撮れなくてな」
ニンマリと笑みを浮かべ、ジモラは最後の頼みをする。
「撮る練習を一緒にしてくれないか?」
消えかけていた黒い光が輝きを保つ。
ジモラの異変にサイはすぐさまボウガンの引き金を引いた。しかし、矢はジモラの頭上を掠めてしまう。
ジモラが下に回り込んでサイに近づいたのだ。
彼は親友に飛び掛かると懐から高らかに取り出す。
刃物と思ったが違う。
小さなライターだった。しかし、サイの思考はすでにジモラの企みの中にいるのだと気づく。
「サーン」
漂うオイルの匂い。
「ニー!」
ジモラの背後で漏れ出ていたガス。
サイは急いで離れようとした。
「イーチ!」
ジモラはライターの蓋を開ける。
「ボーン!」
金属の響く音が通路に響く。
ジュッと音と共に炎は瞬く間に広がっていく。
一瞬で空中をさまようガスに引火する。
噴き上がる炎は空気を押していき、荒野を走るスタックタウンの中枢を爆破させた。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
ジモラは街の人たちから腫物の様に思われている反面、
交流が多く気が緩んでいる時は楽しい友人になります。
ゆるい時は楽しいけど、真面目な時はクソ害悪ボーイ!
そんな訳で世間話をよく聞くことがあります。学校もその一つでした。しかし、学校はこの世界にもあるのですが、ジモラが思いがけた学校のふいんきはどうやら、少し違っているみたいです……
次回、キャリー・ピジュンの冒険 三人の逃亡者 Lv.4 最終話
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