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三人の逃亡者 Lv.4(四話)

 真っ黒に焦げ、壁のなくなった建物からは街と青空が見渡せていた。

 今の虚しさを表している様に見える。

 武装したオットーたちがたどり着いた時、誰もいなかった。


「きっと、木っ端微塵に吹っ飛んだんだ」


 瓦礫をひっくり返しながら、一人が言う。

 オットーはどうしても、信じられなかった。

 こんな、あっさりしているものなのか、疑ってしまったのだ。


「パル、本当に奴らをやったと思うか?」


 腕を組みながら、友人であり、戦友のパルに尋ねる。

 パルはブイの字に笑みを浮かべて頷く。


「心配ないと思う。あの威力だし、確実に当たったからね」


 優しさな笑みを浮かべて、彼女の機嫌を取ろうとしていた。


 話を聞いていたディフィレアは憎たらしいジモラがいなくなったのだと、思わず高笑いを浮かべる。

 オットーは実感のない達成感を疑いながら辺りを見渡した。すると、遠くの屋上に誰か立っているのが見える。


 目を凝らしてみると銃を握りしめていた。

 相手は迷わず引き金を引く。


 ヒュッと彼女の虎耳を掠めた。


 乾いた音に建物に登っていた者たちは一斉に視線を向けたる。

 マントに身を包み顔が見えない。


 オットーはまさかと思った。


「おい、あっちにもいるぞ!」


 誰かが指をさして言う。


 見てみるともう一人、同じ様にマントに身を包んだ者が立っていた。


「あっちにも!」


 さらにもう一人、別の屋上に立っている者がいる。


「何? 荒くれ者」


 バツの悪そうにディフィレアは呟く。

 カニンチェンは首を振った。


「いや、そうではない。彼らだ」


「彼ら?」


 誰のことか分からない彼女にオットーは自然と答えてしまう。


「ジモラとオリパスだ」


 その目には数日ぶりの獲物に沸き立つ闘志が宿っていた。

 彼女の殺気に気づいたのか、三人の謎の者たちは一斉に建物を降りていく。


 狭い路地を通りながら離れていった。


 その中の一人が不意にマントから顔を見せる。

 掻き上げた髪に鋭い瞳孔、不気味な笑みを浮かべたマットボーイ。

 彼は声を張り上げ、破壊された廃墟に向けて叫んだ。


「ディフィ! 残念だったな、俺は生きている。でっけーたんこぶはまだ健在だ。お前は一生、サイの腰巾着だよ。バーカ」


 子供の様な煽りだが、ディフィレアにとってはとことん効く様だ。

 彼女の顔を真っ赤にさせる。

 さらには腰のレイピアを抜かせた。


「あのクソ野郎を逃すな! 絶対に殺せ!」


 彼女の号令と共に若者たちは建物を飛び降りる。


 彼らは一斉にジモラを追いかけていった。

 そして、ディフィレアも追いかける。


 破壊された廃墟にはカニンチェンとファイアナド師団元メンバーだけが残った。

 オットーは全員に指示を出す。


「さっき撃ってきた奴を追うぞ。奴がオリパスだ」


「まて、それは軽率な判断だ」


 いざ行こうとした彼らをカニンチェンは呼び止める。


「はぁ?」


 邪魔をされた様に感じたオットーは睨む。


「撃ってきた奴が探している奴だと何故思う」


「銃を使うのがアイツだけだからだ」


「君は本当に騙しやすそうだ」


 カニンチェンの言葉にオットーは胸ぐらを掴む。

 爪を伸ばし、今にでも引っ掻いてやろうと向けた。


「適当言ってんなら……ここで殺す」


「物騒だね。殺すなら好きにすればいい。だが、もう一人の方を追うべきだ。裏切り者の仲間が誰か、知っておかないとね」


 カニンチェンの態度は飄々として、何が起きてもどうでもいいと思っている様だ。

 オットーにとって一番嫌いな男の姿を重なる。


 怒りが込み上げ、髪が逆立つ。

 さらに腕も振るいあげる。


「オットー待って!」


 あと少し遅ければ、鋭い爪がカニンチェンの喉を抉り出していた。

 パルが呼び止める。


「僕たちがもう一人の方を追う。だから、君は撃ってきた奴を追うんだ」


 パルは言い終わると建物から飛び降り、姿を見せた二人目の方へ向かっていた。

 彼に続く様に他の者たちも走っていく。


「ほら、早く離してくれないか? 相手が逃げてしまうぞ」


 オットーはカニンチェンを突き飛ばし、撃ってきた者を追いかける。


「やれやれ、乱暴な女だ」


 短層槍を使い、体を起こしながら、カニンチェンも撃ってきた者を追いかけに行く。

 ほんの少し見覚えのある髪が見えたのだ。



 

 逃走するジモラだが、この街では珍しい開けた場所に出る。


 命を狙われ、すでに何発も銃や矢を潜り抜けてきた彼の背後にはまだ、追ってがついてきていた。

 すぐにでも、狭い路地を通り、身を隠さなければならない。しかし、ジモラは全く別の方へ、まるで客引きで引き寄せられる様に歩み寄る。


 そこは昔から三人で集まっていた大きな階段だった。


 彼は眩い光が差し込む階段を見ながら、何かを考える。

 やがて、跳ねる心臓に合わせながらリズムをとった。


 滴る水滴は振り子時計の様に一定のリズムをとり、カナドコを叩く音はドラムの様だ。

 ジモラ踊り、蹴飛ばし、手拍子を鳴らして階段を登っていく。


 待ちかねたパーティーがついに始まったのだ。


「ムフフ、クック」


 自然と笑みが溢れていく。


「HAHAHAHA!」


 抑えきれなくなった彼は天を仰ぎ高笑いを浮かべる。


「ついに、ついに! 始まった! 狂い出した歯車はどこへ行く? さぁな、知っちゃこっちゃない。今はこの高鳴りに、熱に、始まったこの国を楽しもうじゃないか。HAHAHA」


 彼の叫びか、それとも、建物の爆発音からか、住人が異変に気づく。

 身を顰める者、武器を取る者、そして、自らが作り出した作品を試す者たちが皆、各々の想いを巡らせている。


 殺気と好奇心で満ちていくこの国にジモラは、堪能するのだった。


「お前! そこで何してる?」


 階段の下で見上げる者がいた。


「おっと」


 可変式の武器を持つ女に気づいたジモラは、慌てて階段を駆け上がる。

 踏み外せど、駆け上っていった。

 逃げ出す彼に女も動き出す。さらに、彼を追っていた者たちも追いつき、逃亡者を追いかけるのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

この人また階段で踊っていますよ~声を掛けられて逃げ出してるし……

安いあおりでもジモラみたいな嫌な奴が言うと数段イラつきますね。

三人の逃亡者の内、すぐに姿を見せた奴がいますが残る二人は誰でしょうか?

少し予想してみてください。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


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