街巡り ガラスのウマ工房 Lv.2(十一話)
大きな階段の前で、夜空に浮かぶ星々を見ながら、鼓動するパンを齧るジモラ。
無駄に巻きついたベルトのコートをしっかり着込んでいた。
「ムフフ、今日は冷えるな」
ヘラっとした態度で笑みを浮かべる。
そこに親友と連れの女がやってきた。
「ん? おぉ、サイじゃないか。カニンチェンは見つかったか?」
「いいえまだよ」
サイが答える代わりに連れの女であるディフィレアが答える。
「目を離した隙にどこかにいってしまうなんて」
腕を組みながら彼女は怒りをあらわにした。
「違うね。彼が僕を置いていったんだ」
静かな声で否定する。
サイとディフィレアとは反対側から長い白髪に細長い手足の男がやってきた。
手には布で隠した短層槍を握り、後ろに見かけない少女を連れている。
彼女は無表情だが、甘い味をジモラは自身の祝福の力で感じ取る。
それは常にやって来た男に向けられていた。
(いや、甘すぎだ、くどくて吐きそうになる)
パンの味で気分を誤魔化した。
「カニンチェンさん! 無事だったんですね」
喜び安堵するサイにカニンチェンは肩を窄める。
「無地ではなかったさ、グエロ・ファメスに遭遇したからね」
自身の苦労話を味のないこと感情で語る彼は、自分の話に興味はなかった。
その為、すぐに本題を切り出す。
「それで、僕たちを呼んだのはどうしてだい、ジモラ君」
「ッチャ、話が早いのは助かる。だが、ジモラでいいさ」
あっさりと返事をする。
ジモラは動くパンを握りしめ、ニタニタと不敵な笑みを浮かべ、この街の人間がその気になる話題を持ち出した。
「お前らに集まってもらったのは、他でもない裏切り者を殺す為だ」
話を終えた彼らは速やかに大きな階段から離れていく。
ただ一人、パンを齧るジモラだけが残っていた。
そこに闇に隠れていた虎の子が姿を見せる。
虎の様な模様の髪に耳が生えていた。
革のジャケット、ショートパンツの後ろからはシマシマの尻尾が垂れていた。
ジモラは別段話すことはないと眉をかきながら、口を開く。
「オットー、ッチャ、悪いが昼間に話した内容と代わりなかっぜ」
「そうだな、ところで……」
オットーは小さく頷く。
ふと、先ほどからジモラが食べているパンについて尋ねた。
「その気味の悪いパンはなんだ?」
まるで生きている様に動き、彼の手から逃れようとしている。
それはまるで魚の形に似ているがで、食べ物と思えない存在だった。
ジモラはヘラヘラ笑いながら答える。
「ッチャ、ガーネットが作ったうさぎのパンだッチャッチャ」
舌なめずりをしながら彼は残りのパンを頬張った。
以前から出禁を食らっていると言うのに、それでも彼女の元へ通っている事に、オットーは君の悪い執念を感じ取る。
そして、勝手に作ったパンを持っていかれている事に対して哀れな気持ちに包まれた。
「はぁ、お前がいるとあいつは苦労が耐えないないな」
ジモラは不気味な笑い声をあげて答える。
「退屈しないと言って欲しいね」
二人はそれ以上、話すこともなくゆっくりと歩き出した。
ただ、静寂に包まれた大きな階段を残して。
空には星々が輝きを放っている。
その中でもまだ小さな星が紅く光、街を見守っていた。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
ジモラは感情を食べる程度の祝福の力ですが、やはり、周りの様子をうかがえる点では優秀なんでしょうね。鳥の子のカニンチェンに対する思いに引いてますよきっと。
最後までキャリー・ピジュンの冒険「街巡り ガラスのウマ工房 Lv.2」を読んで下さり、
ありがとうございます。
街巡りは国や街の様子を見てもらいたく、これからもやって行こうと考えています。
今後も、キャリー・ピジュンの冒険をよろしくお願いします。
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