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街巡り ガラスのウマ工房 Lv.2(五話)

 二人が案内されたのは小さな工房だった。


 円盤の板の上にガラスの馬が浮かぶ様に飾られている。

 隣には大きな字でガラスのウマ工房と書かれていた。

 大きなガラス窓が扉の横に付けられている。しかし、中の様子がはっきりと見えない。


 窓全体に歪みが施されていた。


「狭いけど中で待ってて。外よりは広いから」


 ふんわりとちぢれた髪に跳ねた鼻先の少年、リベルは扉を開けながら言う。

 キャリーたちが中を覗くと暖かい光が包み込む店内が広がっていた。


 左右も大きな窓で開放感があり、目の前に三つの机がそれぞれ、縦に置かれている。

 窮屈な感じもない。


 扉を入って目線の先には小さなカウンターがあり、背後にハシゴがぶら下がっていた。

 さらに後ろにはまだ少し赤く熱を帯びた大きな釜戸が置かれている。


「おぉ」


 ガーネットの時計店以外では鍛冶屋や武器作りの工房ばかり見ていたキャリーにとって新鮮な景色だった。


「それじゃあ、僕は荷物を上に置いてくるんで、適当に待ってて」


 リベルはそそくさとハシゴを登っていく。


 キャリーとカニンチェンはしばらく待つ事になった。

 待っている間、机の上に並べられたガラス製品を見ていく。


 透明なガラスで作られたワイングラスやコップが目についた。

 また、赤や黄色、青など色がついたお皿が外の光を取り込んで七色に机を染めている。

 どれも宝石の様に輝き、触ってしまえば割れてしまいそうな気がする。


 息を飲むキャリーに上から戻ってきたリベルは誇らしそうに話しかけてきた。


「どう、すごいでしょ!」


 キャリーは顔を上げて彼の方を見る。


「うん!」


「普段はこうやって食器を作ったり、周りの窓を用意したりするんだ」


 周りのガラスを見渡しながら言う。


「でも、たまに」


 息を吸い直し、胸を張って、ハシゴのそばにあるカウンターに目を向ける。

 リベルの視線の先には精巧に作られた羽根を持つ鳥や丸く小さなウサギのガラス細工が並べられていた。


「ああやって動物を模した置物を作ったりもするんだ」


「わぁ」


 思わずキャリーの口から言葉が漏れ出す。

 それほどまでに眩しくて、美しいと思ったのだ。


「こんなに綺麗に作れるなんてすごい!」


 彼女の言葉にリベルは胸を張った。しかし、本心ではあまりそう思いきれていないらしい。

 彼は少し、肩を落としながら話し出す。


「お祖父ちゃんに比べたら、僕のはまだまだだよ。それに暇つぶしで作ったものばかりだし」


 寂しそうにリベルはガラスの動物たちを見つめる。


「……お祖父ちゃん?」


 キャリーはジッと彼を見ながら尋ねた。


「うん、生まれてからずっと面倒を見てくれたんだ。この辺りでは指折りの職人で、僕よりも綺麗に作れる人だった。でも、随分前に亡くなっちゃってね。優しい人だったんだ……」


 肩を落とすリベルは撫でる様にそっとガラスの動物たちに触れる。

 少年の姿にキャリーは何かを思い、視線を落とす。

 リベルはカウンターから振り返り二人の来客に視線を戻した。


「こうやって動物を作ってるのはお祖父ちゃんが天国で寂しくしないでほしいって思ったからなんだ」


 おかしな話でしょと力無く笑う彼に、キャリーは首を振る。


「とっても素敵だと思う!」


 天国に行けると言うのなら彼の作品をそのお祖父ちゃんに届けてやりたい。


 もし、行けるなら……


 会いたい人たちがいる。


 ギュッと胸が熱くなるのを感じた。


 素敵な志だと思う。


「意味が分からない」


 キャリーの背後で冷たい風の様に心無い言葉が吐き出される。

 振り返るとカニンチェンが理解に苦しむと、難しい顔を浮かべてこちらを見ていた。


「人は死ねば無に帰る。天国とは教会が作った幻だ」


 彼は腕を組みながら話を続ける。


「すまない、悪気はないんだ。だが、君が作るガラス細工に実用価値はないだろ?」


 リベルの後ろに並べられた動物たちを見ながら彼は言う。


 確かにコップに使うには底がない。


 お皿に使うにしては小さく、物置にしては軽すぎる。


 彼の言う通り、リベルがガラスで作り上げた動物には価値がないのだ。


 その言葉は、本人がよく知っており、歯を食いしばり、うな垂れてしまう。


「そもそも、死者を思う意味が分からない。彼らを思ったところで、今生きている自分たちになんの意味があるんだ。彼らの為に何かを作ったところで前には進めないだろ」


 カニンチェンはゆっくりとリベルに近づきながら言う。


(そんな言い方……)


 誰かを思うのに生きているも、死んでいるも、違いはない。

 そう考えるキャリーはカニンチェンに我慢ならなくなった。


 出会ってからそうだ。


 彼は人の意見を否定する。


 自分が間違えていたとしても、否定せずにはいられないのだ。


 会話の内容ですら、行動ですら否定したがる。


 あいつはどうしようもない人間だ。


 キャリーは声を荒げて、お前は間違えていると叫びたかった。しかし、カニンチェンの様子に気づく。


 寸前まで出かけていた言葉が嘘の様に消えてしまう。

 彼は真っ直ぐリベルの元に行き、少年の横からガラスのウマを手に取った。

 顔の高さまで上げ、外から差し込む光に照らすガラスのウマは、黄金の様に光を放ち、今にでも力強く動きそうだった。


 カニンチェンはマジマジと透き通るガラスを眺める。


「無駄だと言うのに……」


 聞き漏らしてしまいそうな声で言う。


「無駄だと言うのに、なんて綺麗なんだろうな……」


 切なく愛おしく見つめる彼の瞳をキャリーもリベルも決して忘れないと思う。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

暖かな光が差し込む工房には美しいガラス細工の動物が飾られていた。

僕は宝石と同じぐらいステンドグラスやガラス細工が好きです。

スペインのサクラダ・ファミリアに行って見たいですね。

余談ですが、ガーネットの時計店の三階の共同スペースはスペインをモデルにしました。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


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