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街巡り パメラの占い小屋 Lv.1(十話)

 建物と歯車が折り重なり、大きな空間を丸呑みしたかの様な高い天井が見える通路。

 遠くからはカッコン、カッコン、と剣の鍛造が聞こえてくる。

 センスの感じない響きの中、ラブアンドピース社の社長、トリガー・コルトは肩を落として歩いていた。


「あぁ、なんて事だ。ワタクシの銃を更なる高みに上げるためには、誰かに使ってもらわなくてはいけない。しかし、この街連中は嘆かわしい事に野蛮な武器がいいと言ってワタクシの愛する武器を捨てるのですか?」


 ファイアナド騎士団の中で銃を使う男、オリパスと手を組む事ができれば、どれほど良かった事か。

 トリガーはそればかり考えてしまう。しかし、彼らには資金がなく、こちらを援助してもらうことすらできないのだ。


「どうしてですか、ワタクシは純粋に探究を続けたいのに?」


 トリガーは天を見上げる。

 薄暗い天井に微かに盛れる光は星の様にも見えた。

 彼は誰に諭されるでもなく、肩をすくめる。


「えぇ、分かっています。新たな発見する為に、いつだって資金を得られるとは限らないのですから」


 諦めてこの街を出るしかない。

 頭によぎるプランに彼はすかさず払い除けた。


「出て行く! 稼げない街だから出て行かなきゃダメです? あり得ません」


 技術の街スタックタウンは技術者が作りたい物を作り続ける為に存在する。

 ならば、自身もここにとどまり続けていいはずだ。

 トリガーは自分の工房に向かう足を止め、身を翻す。


「ワタクシは! ワタクシの愛する銃をもっともっと世に知ってもらいたいのです」


 彼は長い渡り廊下を走り出した。

 パイプをつたい、歯車に跨り、食事中の夫婦の横を通り過ぎて一件の店の前に立つ。

 彼はぐるりと回り、近くの階段を下りていく。地下に隠れていた一階を見つける。

 トリガーは迷うことなくその扉を開いた。


「オリパス、いますか! 手を組みましょう。ワタクシですトリガー・コルトです」


 銃を撃ちまくる様に騒がしく名乗りを上げるトリガー。

 彼が入って行ったのはガーネットの時計店。

 オリパスたちが潜伏している場所だ。


「敵襲⁉︎」


 パン作りで白く汚した作業台を拭いていたパトロはトリガーに驚き、身を小さくして、ぽっちゃりと膨らんだルミナの背後に隠れた。

 しばしの休息をとっていたルークも体を起こし、目を丸くする。


「あんたは……」


 視線が集まる中、目的の男がいない事に気づいたビジメスマントリガー。しかし、彼にとって黙って帰るなんてあり得ない。

 先にいる人たちにだけでも、この燃え上がる心意気を語った。


「再び起ころうとする戦火を止める為、我がラブアンドピース社の武器を提供させてください! そうすればあなた方も安全に、敵との距離を保ちながら戦えて心強いでしょ? 素晴らしいでしょ! 組むべきです」


 トリガーは力強く、自分の言葉に頷く。


「そすなれば、ワタクシも銃の開発に勤しむ事ができる。お金が足りない? そんなもの作りたいに比べればくだらない、馬鹿な問題だ! 黙って叩き出せばいい」


 鼻息を荒く彼は胸を張る。

 彼の演説に誰もが唖然とした。


「なに、この人? ほぼ、自分のやりたいしか言ってなくない。怖いんですけど……」


 ルミナの影に隠れながらパトロは小さくぼやいた。


「人の背中でぼやかないでよ……」


 後ろを見ながらルミナは呆れてしまう。

 長い付き合いなので慣れてはいるので、客人のトリガーと向き合う事にした。


「事情は大体分かりました……ですが」


 ギロリと丸メガネの奥で鋭い視線がトリガーを睨む。


「この事は私たちランサン郵便協会は関わるべきではありません。ですが、私一人の人間として言わせてください」


 彼女はパン生地のように柔らかい腕を組みながら言う。


「ここにくるならもう少し身なりを整えてきてください」


 パトロは静かに彼女から距離を置く。

 ルミナは力強くトリガーを指差した。


「パン屋の娘として、いいえ! 食を扱う人間として言わせてもらいます! あなた臭いくて、とても不衛生なので風呂に入ってください」


 突然の事にトリガーは驚くが、オリパスたちと汚水を被っていたことを思い出す。


 確かに鼻を摘みたくなるような悪臭まみれだった。

 トリガーは顔を赤くしながら我に帰り謝罪をする。


 その光景を少し離れた場所で見ていたルークは少し呆れてしまう。

 ただ、やりたい、作りたい、そんな思いに忠実なトリガーというビジネスマンや、この店の店主であるガーネットや街の技術者を見ていると、微笑ましいような気もして可笑しく思う。

 ルークは思わず笑いが出てしまうのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

挫けてもめげない姿勢はさすがですね。僕も見習いたいぐらいですよ。

ルミナは本当にずばずば言ってすごいですよ。

ミラもそうだったけど、恐らくバードスクールの女性陣は先生の影響で

みんな言うこと言うタイプなのかもしれません。

「街巡り パメラの占い小屋 Lv.1」を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

来月に続きを出す予定なので是非、ブックマークを付けてお待ちいただけたら幸いです。

キャリー・ピジュンの冒険を面白いと思って下さったら、

是非、高評価をよろしくお願いします。


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