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街巡り パメラの占い小屋 Lv.1(八話)

 売り物にならない小さな魔法石の中から極めて高度なものを袋に入れたチャロットは階段を降りていく。


 下には師匠のパメラと彼女の魔法使い仲間であるガーネットがいる。

 さらに名前の知らない白髪の男と金髪のキャリーと呼ばれる少女。そして、裏切り者のオリパスが丸い机の前に座っていた。


 彼は技術の街スタックタウンと自身が率いていたファイアナド騎士団を裏切り、英雄紅蓮の竜巻メアリー・ホルスを殺したのだ。


 チャロットはあわよくば、敵を撃ちたいと思っているができそうにない。

 以前、神の国バシレイアの村を襲った際に脇腹をオリパスに撃たれてしまったのだ。

 幸い、彼はその事に気付いておらず、静かに椅子に座っている。


「さぁ、腕を出しな。占ってやるよ」


 パメラは声を弾ませてオリパスに言った。


(なんで?)


 チャロットは目を見開く。

 視線の先では暗い室内の中心で、丸い机を間に師匠と裏切り者が手を繋いでいたのだ。


「何してるんですか! 師匠?」


 思わず声を荒げる。

 彼女の声にお茶を楽しんでいたガーネットが驚いて少しこぼしてしまった。


「あぁ、ごめんなさい!」


「騒がしいね。見れば分かるだろ、占うんだよ」


 騒ぎ立つ弟子に呆れながらパメラは言った。


(占う? こんな男を……街の人に恨まれちゃうよ!)


 師匠の物好きを知っているチャロットだが、今回の事は私情で内心引き気味になる。

 彼女の思いとは裏腹にパメラは水晶玉をどこからともなく取り出した。


「さぁ、始めるよう」


 パメラの言葉と共にひんやりと冷たい室内がさらに凍る。

 彼女の貫禄にオリパスも思わず唾を飲み込んだ。


 魔法で水晶玉を浮かす。

 水晶玉にオリパスの顔が映り込んだ。

 次に懐から絵柄のついたカード束を取り出す。


「これはタロットカードと言ってね。絵柄によって解釈が異なり、そこからお前の未来を見据えることができるんだ」


 テーブルに裏向きで広げると老婆は長年の慣れた手つきで混ぜ始めた。

 霧が浮かび机の上を駆け巡る。


 オリパスを写し出した水晶玉からは白い氷の糸が垂れていく。

 氷の糸は巡る運命のカードに導かれ、それぞれに繋がっていった。


『運命の魔女』パメラは水面を見つめる様に、ぼんやりと、心はしっかりと意識を保ちカードを真っ直ぐ見つめる。


 何が起こっているのか分からずにいる無知なオリパスにチャロットはこの状況を教えてやった。


「水晶玉には今までのあなたの選択と過去が投影しだし、人柄を見極めるの。見てきた過去を伝って今になる」


 運命とは道として現れる。


 道には始まりがあり、流れる様に進んでいく。

 そこに唐突な変化など存在しない。

 例え景色が変わったとしても、必ず原因があり、歩んだのだ。


 今まで歩んだ道から進む先を見ることができるのだ。


「あなたの人生をカードに流し込んで、これから起こる運命を予言する。これが『運命の魔女』パメラ・モイラ・スレッドの占いよ」


 チャロットはひと息置く。が、ここからが最も言いたかったことだと話を続けた。


「うちでは運命とは定め決められた道であり、変えることはできないのよ!」


 鼻高く話し終えた彼女はチラリとオリパスの方を見る


(どう? これを聞いて、変わらない運命に絶望したでしょ)


 ドヤ顔を浮かべるチャロットを横目に彼女より年下のガーネットが落ち着いた様子で付け加えた。


「でも、パメラおばさんが見ることが出来るのは、ごく一部だけだったりする」


 前後が分からない一瞬の場合、人によっては、解釈は変わってしまうのだ。

 例えば、遠くで兄妹が抱き合っていたとして、彼らの関係を知らなければ恋人にも見えてしまう。


 ジッと見つめる先にはパメラの指先が映る。


 混ぜられたカードを一つに束ねていた。

 二つに山を開けて、交互に重ねていく。


 最後に三等分に下から分けていき、下の方を上に重ねるのを三回繰り返す。

 その時にはもうすでに、水晶玉から垂れる氷の白い糸は一本にまとめられていた。


 老婆は一息置いて、一枚ずつカードを定められた場所に置いていく。


 一枚、二枚と順に——六枚並べていった。


「さぁ、お前の定めを見てみようじゃないか……」


『運命の魔女』パメラは並べたカードを巡っていく。


 逆さまに描かれた実七枚のコイン


 逆さまに噛み合う歯車


 正しい向きの三本の刃が刺さる心臓


 正しい向きの八つの空飛ぶ棒


 逆さまに描かれた刀を五つ拾う男


 最後に雷に打たれ全てが暴落する塔の絵が現れた。

 これが何を意味しているのか、魔法に疎いキャリーやオリパス、ヴァイスは分からない。


 魔法使いであるガーネットは重い表情を浮かべる。

 ただ、一人だけ、ほくそ笑む者がいた。


「まぁ、大変、考えうる最悪なカードばかりよ!」


 運命にも見放されなのだと、チャロットは心の中で叫んだ。

 パメラは弟子に呆れたのか、それともカードに呆れたのか、分からないがやれやれと息を漏らす。


「私もこんな風に出るとは思わなかったよ。だが、悪い意味だけじゃないよ」


 全てのカードを見渡したパメラは慰める様に目の前の男を見つめる。


 前髪をセンター分けし、シャツの上に暗めのベストを羽織った男。オリパスは目つきの悪い視線をならべられたカードに向けていた。しかし、彼は顔色ひとつ変えず、視線をパメラに向ける。


 その瞳ににごるものは何もない。


 彼は一言、申し訳ないが、と話を切り出す。


「俺は運命でどうにかしようなんて思ったことはない」


 言い切る彼にキャリーは当然かと見つめる。

 元々、彼に幻想など意味がないのだ。


 オリパスは占いや予言を信じない。


 信じられるのはメアリーと歩んできた今までの事だけだった。

 オリパスは身を乗り出して、触れられない未来でも、変えられない過去でもない、今の話を始める。


「この街の人間が興味をひいてくれる物品や相手はいないか? 何でもいい、噂でも」


 拳を強く握りしめた。


「俺に必要なのは情報だ。工房が武器を作らず、戦争に向かわないために必要な情報だ」


 技術の街スタックタウンが神の国バシレイアと戦わない為にも、牙を抜くか矛先を変えなくてはいけない。

 その為の取り掛かりをオリパスは必要としていた。


 彼の気迫にパメラは、暗闇に光る黄緑色の瞳を細めてニタニタと笑みを浮かべる。


「そうだよ。あんたはそうじゃなくちゃ」


 まるで全てを知っていたかのように言う。


「だが、この事ならジモラから聞いているだろ?」


 マットボーイの名がなぜ出てくるのか、オリパスは首を傾げる。


「南だよ。南の国に目を向けるんだ」


 老婆は体を低くして、オリパスに語りかけた。


「向こうは食材を摂る為に狩りをしている。美味い食材は強くてね。倒すのが大変なんだ」


 人差し指を立てて、魔女は笑う、


「それこそ、交渉に使える話だろ?」


 話を聞いたオリパスは考え込む。

 誰かが必要としている。そして、自分たちがそれを持っている。

 交渉とはお互いの必要を持っているところから始まるのだ。


 行った事のない国だが、噂だけなら聞いたことがある。


 海があり、多くの食材があった。

 魔物も多く生息し、人々は奴らと日々戦っている。。


(これ程、技術の街スタックタウンに合うものはあるだろうか?)


 技術者の欲望はこれで満たせるし、南の国が本当に必要としているなら彼らの手助けもできる。なにより、食料問題のライフラインも繋ぐことができるのだ。

 晴れていく視界にオリパスは頭を下げる。


「パメラさん、ありがとうございます!」


 目の前の老婆は肩をすくめるだけだった。


「な〜に、ただの噂話だよ。しっかり調べてから行くんだよ?」


 目を見開き、イタズラな笑みで忠告した。

 横で様子を見ていたキャリーはカードをつつきながら顔を上げる。


「あたしも占って欲しい」


「悪いがもう少しこの面白い男と話さしておくれ」


 黄色い少女に気にも止めず、老婆はオリパスに噂話を始め出した。

 がっくしと頭を下げるキャリー。


「よければ、私が占おっか?」


 そばにいたガーネットが尋ねる。

 こくりとキャリーは頷いた。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

運命とは何か? この問いかけに魔女は結果に過ぎないと言うのかもしれません。

定められてはいないが必然はある。

雨が降り、川を通って海に行くとパメラは考えているのかもしれません。

決まった動きですが、途中で水を飲む人や木がせき止め一生をその場で過ごすこともあります。

だから、これだ! なんて、言わないんです。

にしても、南の国か……外伝で書きたいですね。でも、まだキリが悪いのでダメなんです。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


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