表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/176

街巡り パメラの占い小屋 Lv.1(六話)

 小さな家の二階にお邪魔していたオリパス。

 彼は住人の代わりにお茶を注ぐ。


 ちょうど、その頃に上からガーネットと家主のパメラが降りて来た。

 髪を赤く染めた少女は睨む様に階段の上から見下してくる。


 オリパスは話す事はない為、目を逸らした。


(パメラおばさんが、心配ないって言ってたけど……はじめの悲鳴から心配だったのよね)


 聞いた時、すぐに降りて来ようとしたが、パメラに心配ないと止められた。


(泥棒とかだったらどうしようと思ったけど……オリパスだったのね……何もしてないわよね?)


 チャロットに手を出したのではないか、疑り深くオリパスを睨んだ。


「なんだよ」


 ずっと見てくる彼女にオリパスは尋ねる。

 ガーネットはそっぽを向いて答えた。


「別に、あなたがここにいるのに驚いて」


「……」


 オリパスは何も言えずに入れたお茶をテーブルに並べる。


「まぁ、入れてくれたのかい? 客人なのに悪いね」


 ガーネットの背後から黒い瞳に黄緑色の光を灯した老婆のパメラが椅子に向かう。

 椅子に座って一休みしている弟子のチャロットを睨んだ。


「で、なーにあんたは客にお茶入れさせているんだい」


 パメラは鋭い目で弟子を見る。次の瞬間、プスっとチャロットの脇腹を刺した。

 そこは塞ぎかけの傷の近くだった。

 チャロットの全身に雷が走る。


「ひっ……」


 肩が跳ね上がり、悲鳴が漏れかけた。

 パメラは容赦なく、突き続ける。


「し、師匠、やっやめ、うっ……!」


 青ざめて涙を浮かべる弟子の顔など気にせず、パメラは続けた。

 この様子にあまりにも可哀想だと思ったオリパスは止め用と声をかける。しかし、パメラは鼻を鳴らしながら叫んだ。


「ふっ、客に茶を注がせたんだ。それにね、あんた、この子は勝手にうちを出て行って、負けてつけた傷なんだから文句は言えんさ」


 悪い魔女はニタニタと笑う。

 唖然とする客人二人にパメラは言った。


「ここは日ざしが強くて暑いから、下に降りて飲もうじゃないか。下にも二人待たせているだろ?」


 老婆の問いかける視線にガーネットは頷く。



 

 占い小屋の中は狭い様で広かった。


 どれだけ進もうと壁にたどり着けず、迷宮に迷い込んだ様だ。

 まるで夜の中を思わせる程、暗く、ひんやりとしていた。

 綺麗な金髪に黄色い瞳の少女、キャリーはボソリと呟く。


「二階に続く道、見当たらないね」


「そうだな、道を間違えたのだろうか?」


 右腕を包帯で覆った白髪の青年は頷く。

 辺りを見渡すが魔法道具や変わった素材が乱雑に棚に敷き詰められているだけだ。


 戻ってみるかと二人が思いかけた。その時、棚の奥から階段を降りてくる人影が見えた。


 先頭を行くのは『運命の魔女』パメラであり、後ろにはガーネット、オリパスが続いてく。

 最後にティーセットをお盆に乗せて、少女が降りて来た。


「「あっ」」


 彼らは大きく目を見開く。


「オリパス? なんでここにいるの!」


 キャリーは思わず大きな声を出す。

 オリパスは目を逸らし何も言わなかった。


「心配で来たみたいよ」


 彼の代わりにガーネットが答える。

 オリパスは少し顔を赤くするが何も言わなかった。


「さー二人とも待たせて悪かったね。お茶を入れたからゆっくりして行きなよ」


 パンパンとパメラが手を叩くと部屋の家具が流れる様に動き始める。

 風を切る音と共に棚が動き、キャリーたちの背後に椅子が現れた。目の前にテーブルが置かれる。しかし、パメラとガーネット、そして、お盆を持った少女の元には椅子は現れない。


 パメラは一息置いて、隣へ向きを変えた。


 一瞬のうちに数々の品が現れる。彼女はその中からいくつかものを取り出した。


「えっと、竜の血と魔物の皮、生地はどれがいい?」


「そうね……影に潜む山羊の皮はあるかしら?」


 あるよ、と言いながらパメラは一番上の方に積まれている皮の束から一枚取り出す。

 その後も竜の血、灰色の涙を取り出していった。


 最後に時の花だが、パメラは階段裏に隠された箱を取り出す。

 蓋を開けると白い霧が溢れ出て来た。


 パメラはゆっくりと中に手を入れる。すると、ドーム状のガラスの入れ物が出て来た。

 だが、中には何も入っていない様に見える。


 席でお茶をもらっていたキャリーは、目を凝らして睨んだ。すると、キラリと花びらが輝いて見えた。

 ガラスの様に透明で、今までのどの花よりも綺麗に見えたのだ。


「きれい……メア姉やレサ姉に見せてあげたいな……」


 思わず言葉をこぼしてしまう。しかし、彼女はすぐに顔を強張らせて口を俯いでしまった。

 オリパスは静かににキャリーを眺める。


「私は共にあなたと歩みたい。だから、今は、眠ってておくれ。フリーズオン」


 周囲がさらにひんやりと冷えていく。

 だが、寒いと思うことはなかった。


 ずっとここにいたい様な涼しい気持ちよさ。

 パメラの魔法は冷たさの中に優しさがある気がした。


「それと時の花だね。あいよ」


『運命の魔女』パメラは両手いっぱいに塞がっているガーネットに手渡そうとした。

 ガーネットは慌てて叫ぶ。


「あぁ、待って! 誰か手伝って」


 助けを求める声にキャリーはすぐに駆けつける。

 キャリーは魔物の皮と竜の血が入った瓶を受け取った。


「さてと、あとは魔法石だね。チャロット小ないのをこの袋に入れといておくれや」


 パメラは立っていた弟子のチャロットに袋を手渡した。

 チャロットは返事をして、二階へと上がっていく。


「あの子の方がいい物を持ってるんだよ」


 誇らしげに少女の背を見ていたパメラは、こちらに目を向けて話を始めた。


「さてと、これで全部かね」


 ガーネットに問う。


 問われた彼女はチラリと目線をヴァイスに向ける。

 ヴァイスはお茶を飲みかけていたが、すぐに視線を感じてカップを置いた。

 何かを差しって立ち上がる。


 ガーネットは頷きパメラに頼む。


「もう一つ、お願いがあるの」


 彼女の言葉にまるで知っていたかの様に不敵な笑みを浮かべる。


「構わないよ。でも、私にもお茶を飲ませておくれ」


 そう言って背後に椅子を出した老婆は深々と座り、一休みするのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

『運命の魔女』はなかなかにSな性格してますね。

下手したら弟子の命が危うくなるかもしれないのに……まあ、例え、オリパスがチャロットの悪行を知っても咎めはしないと思います。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


よろしければ、X(Twitter)のフォローもお願いします。

https://x.com/28ghost_ran?s=11&t=0zYVJ9IP2x3p0qzo4fVtcQ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ