Game fo tog Lv.3(十二話)
日は沈み、日中鳴り響いていた、カナドコを叩く音がしない。
静かな夜だった。
ゴロゴロとキャタピラが動く音だけが暗い夜の世界に響いている。
そんな中、月明かりも届かない街の地下にある入り口で、一人の男がランプ一つの明かりで作業をしていた。
古くなった巻き取り機を取り替えていたのだ。
「こんなに暗いなか。別に今日しなくてもいいだろ?」
静かな場所に声が響く。
見ると昼間の背の低い老人テトが階段を下りてやってきた。
手には大きめのワインボトルを抱え、もう片方の手にグラスを持っている。
どうやら、すでに飲んでおり、顔を赤く染めていた。
男はチラリと様子を見た後、すぐに手を動かすのを再開した。
「直している時に人が来たら、損だからな。今のうちにやっているんだ。——よ!」
最後の仕上げに強く叩いてしっかり固定できているか確認した。
「ちょうど終わったみたいだな。どうだ、一緒に飲まないか?」
テトのお誘いに男は笑みを浮かべる。
「いいのか? その酒高そうだけど」
「ヘーキヘーキ、どうせ、俺の金じゃねぇから」
男は工具箱から自分用のコップを取り出した。
テトは彼のコップを受け取ると気前よくなみなみとよそる。そして、自分のグラスに再び注いだ。
二人は高く腕を上げて乾杯する。
「巻き取り機の修理に」
「うまい酒に」
二人は高い酒を飲み水の様にぐびぐびと飲み干す。
初めて飲む高級なお酒を口にする男は舌を舐める。
感謝を伝えようと老人の方を見るとゾッと背筋が凍り付くような寒気が走った。
男は一瞬で固まる。
その様子に老人はおかしそうに笑いながら叫んだ。
「急にどうしたんだ? 安心しろ。この酒は俺の金じゃないから後で金を払えなんて言わないさ! ハッハッハーやっぱ、人の金で飲む酒は美味いな!」
「誰の金で買ったのかしら? その大量のワインは?」
氷の様に冷たく響く声が背後から聞こえる。しかし、テトは特に気にせずに答えた。
それが誰かも知らずに。
「そりゃー最速の少女キャリー・ピジュンから借りた金さ! あいつは荷物運びだけで、一生食っていけるだけの金を持っているんだ。少しくらい勝手に使ったてバチは当たらない。お前さんも飲んでみるか?」
などと言いながらテトは振り返る。
次の瞬間、全身から血の気が引いていく。
そこにはミルクティー色の髪を後ろで束ね、ロングコートを見にまとった美しい女性が凍りそうなほど冷たいニヒルな笑みで見下ろしていた。
彼女は優しく、もう一度尋ねる。
「誰の金で買ったのかしら? その大量のワインは?」
「レサトさん……えっと、これはだな……」
言い訳を話そうとした老人はガタガタと奥歯を震わせる。
次の瞬間、街の入り口からゾッとする様な叫び声が静かな夜に響き渡った。
テトはあまりの恐怖に気を失ってしまったのだ。
突然、現れたレサトに、男も殺されるのではと身構えてしまう。
ふと、手に持っていたコップの中にまだ、残るお酒を見つける。
慌てて頭を下げて返上した。
「飲んでしまってすみません!」
ブルブルと震えて今にも倒れそうだ。しかし、レサトは特に興味を示さず、テトが持っていた大きなワインボトルを拾い上げる。
彼女はボトルの口についていたほんの僅かなワインの水滴を指で拾い上げた。
ペロリと舐める。
「……」
何も語らなにレサトに男は怯えてしまう。
やがて、彼女は満足したのか、ボトルを持ったまま立ち上がる。
「酒盛り中に邪魔したわね。入っている分はあげるわ。大事に飲みなさい」
言い終わるとスッと音も立てずに闇の中へ消えていってしまった。
美しく綺麗な声色に、見惚れてしまうような顔立ちに男は、幽霊だったのでは、と思い始める。
どちらにしても恐ろしく思った男は、残りのワインを飲み干そうと思った。しかし、残りはこれだけと分かると一気に飲むのは勿体無いと止まってしまう。
不意に足場が大きくグラつく。
いつもは予想できた揺れも、今の男は突然のことに思い、驚いてしまう。
その時、持っていたコップが手から滑り落ちてしまった。
「あっ!」
カランコロンと音を立てて、夜闇の荒野に落っこちる。
せっかくいただいた高い酒がなくなり、男は膝を突いてガックリと項垂れしまう。
こうなる事ならもっと味わえば良かったとすこぶる後悔するのだった。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
エピローグ的な話ですね。
テトはキャリーから通行料様にお金を借りていました。
久しぶりの街にのども乾いていて、付いたとたん酒場に行っちゃたんですよ。
門番のお兄さんも幸運が舞い降りたと思ったら一気になくして、災難でしたね。
キャリー・ピジュンの冒険「Game fo tog Lv.3」を最後まで読んで下さり、
ありがとうございます。
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来月は息抜きに現実に行きたかったので別の話を投稿します。
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