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Game fo tog Lv.3(七話)

「フハハハハ! そうなんだよ。あそこは潰れちまったんだ、隣の発明家共にね」


 腹を抱えながらトットさんのハンバーガー店の事を話すジモラにキャリーはうな垂れる。

 美味しいご飯がなくなったのがショックだった。

 そんな事知らないオリパスがため息を吐いてからジモラに尋ねる。


「いろんな人からサインをもらって王様になろうとしているな? 何を企んでいる」


 彼の質問にマットボーイのジモラは不敵に笑う。


「人聞きの悪い言い方だな。ッチャこれじゃあ、俺が悪役みたいじゃないか。俺はただ、ッチャ王様の権力を利用して自警団を作って国をよくしようとしているんだぜ」


 自信満々に答える彼にオリパスは一言付け加える。


「王様の指示で作ったのなら、自警団とは言わないぞ」


「あぁ、細かいことは気にするなって」


 手を払いながら話題を逸らす。


「それより裏切り者のお前がなんの様なんだ?」


 嘲る様に睨む彼にオリパスは平然とした様子で答える。


「離れている間の街の様子を聞きたい」


 彼の回答にジモラは拍手をしながら笑う。

 聞くほどのことではないからだ。


「何も変わらず、復讐の為だ、未来の為だ、理由をつけてぶっ飛んだ兵器をへーきで作っているぜ! おっと待てよ、今のは面白いこと言えたな……」


「くだらない冗談を聞きにきたわけじゃない」


 眉を顰めるオリパス。


「俺が知りたいのは、この街の今と戦争を企てている奴が誰かだ」


 彼の言葉にジモラは一瞬、豆鉄砲を喰らった様に固まる。しかし、吹き出してしまう。

 笑いながら答えた。


「ウヒャヒャヒャ、なんだ、それならそうと言ってくれよ。だが、似たようなもんだ。答えはこの国全員……おっと、ッチャ後ろのお前らは関係なかったな。訂正しよう。ッチャほとんどの人間が企んでいる。それもそうさ、我らが英雄メアリー・ホルスは殺されたんだからな。みんな躍起になっているぞ!」


 ジモラは付け足すように続けて話す。


「主軸となっているのはサイと仲のいい医師。お前のところのサソリの外骨格マット・ドール、サソリの右腕オットーの辺りが活気に動いているな」


 マトとオットーが動いているのは、なんとなく予想ができた。


「やはり、あの二人か……」


 オリパスはボソリと呟く。


(メアリーの事を尊敬していた、オットーとサイはもちろん復讐だ。マトに関しては、恐らく上に立つ者の役割なのだろう……)


 オリパスはぼんやりと状況を把握する。


 この街を離れたのは、間違いだったのかもしれない。


 この場に残っていれば、もう少しマシになっていたのでは、と考えてしまった。しかし、願っても変わらない。


 オリパスは次に何をするか、思考を切り替える。


(あの二人と戦うとなると勝機は低い……マトさんだけでも話を通せないだろうか……?)


 ぼんやりと次の事を考えながら、その場を立ち去ろうとした。その時、寂しそうにジモラが呼び止める。


「おーい、オリパスく〜ん? もう、どこかに行っちゃうのかい」


 オリパスは振り返り、頷く。


「あぁ、お前に構っている暇はやはりないと分かったからな」


 彼の言葉にジモラは呆れて首を振る。そして、懐からあるものを取り出す。


「ッチャ、これが何か分かるかい?」


 ひらひらと見せびらかす紙には、何百人もの名前が書かれている。


「それは……」


「そう、署名さ。誰が王様なのか、決める為の。集めるのに苦労したんだぞ」


 ジモラはゆっくりとオリパスに近づきながら、この署名書の価値を説く。


「ここには"この巻物を持つ者がこの国の王である"と書いたんだ。それに同意した者たちがここに名前を連ねている。つまり、俺が王様なのさ」


「嘘くさい!」


 キャリーは咄嗟に叫ぶ。

 つい言ってしまったのだ。

 ジト目の女性が頷いて言う。


「でも、彼が勝手に始めたことよ。誰も信じちゃいないわ」


 ジモラは嬉しそうに振り返り、この署名の痺れる様な力を話す。


「ムフフ、だが、残念な事に世の中は面白くてね。嘘でも、出鱈目でも、多ければ真実に変わるのさ。ここには占いの婆さんや頑固な親方もサインしている。その意味が分かるか? 俺を認めたって事さ」


 胸を張る彼に彼女は馬鹿馬鹿しいと呆れてしまう。


「そんなわけないでしょ? 貴方が勝手に始めた事」


「そうかもね、そうだとも! 一方的な称号なんて意味なんてない。だからこそ、王としての役目で技術者を導く義務がある、と書いたのさ」


 彼らの欲望を満たせば、価値を持つのだ。と誇らしげ言う。

 オリパスは少し黙り込んでから、ジモラに尋ねた。


「その価値は分かった。だが、どうして俺にその話をする?」


「そんなの! 親切心さ。譲ってあげようと思ってな」


 ジモラは食い入る様に答える。


「俺は自由気ままに、ッチャッチャ、血気盛んなこの国を見ていたい。王様? ッチャ、冗談じゃない。予定やトラブルをどうにかする為にがんじがらめになるなんてごめんだね。お前の方が向いていると思うだろ?」


 笑みを浮かべてジモラはオリパスを見つめる。

 まだ、不服な顔を浮かべる彼にもう一つ付け加える。


「それにお前はこれから昔の仲間と戦う、だろ? その為になんとかしなくちゃいけない、違うか?」


 首を傾げ、問いかけるジモラの顔は歪んだ笑みで満ちていた。

 だが、彼の言う通り、戦う準備をどうにかしなくちゃいけない。


 その為には多くの技術者を味方につけるか、開発を止めさせなくちゃいけない。


 ジモラが持つ署名書には彼らの名前がある。


 これを元に彼らを止めて、手を貸して貰えば大きな力へと変わるのだ。

 しばらく考えたオリパスは、真っ直ぐな視線でジモラを見つめる。


「そう見つめるなって、照れちまうよ」


 肩を狭めて、くねらせながら、不敵な笑みを浮かべる。

 一切照れた様子を見せない彼にオリパスは頼み込む。


「その署名を俺に渡してくれ」


 手を差し出した。



 

 愉快な事に心躍らせて、笑いが漏れる。

 こうすれば、きっとサイは困るだろう。

 差し出された手に署名書を渡そうとした。しかし、これでは物足りない。


 そんな気がした。


 順調すぎるのだ。


 愉快さは困難の中に混沌として生まれる。


 腹を満たすにはもっと欲しい。


 そう思ったジモラの手はするりとオリパスの手を通り過ぎた。


 彼は身を捩り、歩き出す。


「足りない……」


「は?」


「このまま、渡すのは面白くない」


 睨む様に真剣な顔で言う。


 簡単に譲ってしまうとせっかくの苦労が水の泡だ。

 もう少し痺れる味を出したい。


 ジモラはジッと目の前の者たちを見つめる。そして、今までずっと端で突っ立っていたキャリーを見つけ、ニヤリと笑った。


(そうだ! こうすれば、面白くなるぞ)


 悪巧みを企てるジモラの背後で静かに、彼の持つ著名書を狙う影いる。

 彼は静かに合図を出すタイミングを見計らっていた。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

スリルを求めるトリックスターキャラっていいですよね。

害悪だけど……


「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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