Game fo tog Lv.3 (六話)
ジモラを探す為、ガーネットの時計店を出たキャリーは、オリパスとルークと別れて聞き込みを始める
マットボーイで有名な彼の尻尾は、思いのほか早く掴めた。
人々が集まる酒場で尋ねれば、すぐに教えてくれた。
「この街には王が必要だから、ここにサインしてくれって、でっけー紙を見せつけられたな」
酒場の店主は肘をつきながら話す。
彼の話にその場にいた酔っ払いたちは、笑いながら頷いた。
「ハハハ! あぁ、なんでか王様になるとか抜かしていたな! 面白そうだからサインしてやったぜ」
飲んだくれを見ながら、眉を顰める店主。
キャリーは不思議に思い、尋ねてみた。
「どうしたの?」
店主は言いづらそうに彼女に話す。
「実はな……やらかしちまったんじゃねーかって、思ってんだ。アイツを王様にするなんて正気じゃねぇ……」
「確かに」
相槌を打つキャリーに店主は笑みを浮かべる。
酔っ払いは、安心しろよ、どうせ何かのイタズラだ、と適当に宥めて、どこかに行ってしまった。しかし、店主の顔は晴れない。
顎を触りながら彼は不安を打ち開ける。
「いや、署名にはな……いつも世話になってる、占いの婆さんの名前もあったんだ……」
占いの婆さんを知らないキャリーは、どんな人か訊ねると店主は頬をかきながら教えてくれた。
「よく当たる占い師でな。かないに進められて、試してみれば、あの人のおかげで経営が順調になった。聡明なお人なんだが……あいつにサインをするなんて信じられない」
顔を曇らせる店主だが、今は目の前の店を回さなくてはと話を切り上げて、注文の品を用意しに行ってしまった。
「話してくれて、ありがとう!」
話を聞き終えたキャリーは酒場を後にする。
場所を変えても、サインを集めるジモラが目撃されていた。
「あぁ、来たぜ。それも二回もだ」
大きな鍛冶場を持つ親方が頷く。
「本当!」
「王様になるとか抜かして、サインを求めてきたが、あいつのふざけた話なんざ、聞く気もなかった。だが……」
親方は少し感心する様にため息を漏らす。
「他の奴にも署名をもらって出直してきやがったんだよ! 俺と同じぐらい頑固な鍛冶屋仲間もサインしていて、その時は目を疑ったな……」
他にも薬屋や石材場などからも貰っていたそうだが、一番多かったのは発明家たちの名前だった。
彼らは今、やっきになって次の戦争の為に武器を開発している。
鍛冶屋の親方も武器を作っていた。
ジモラは彼らに試せる環境を用意すると胸を張る。
彼のことを見直してサインを書いた。しかし、すぐに自分が愚かだったのでは、と鍛冶屋の親方はと、疑ってしまう。
話を聞き終えたキャリーは、一度、オリパスたちの元に戻る
「オリパス! 情報集めてきたよ!」
「わあ!」
キャリーは二人の目の前に飛び降りて来た。
ルークが面白いぐらい身を引いて驚いてキャリーは笑ってしまう。
「どうだった?」
微動だにせず、尋ねるオリパスに集めた情報を伝える。
「そうか……」
聞き終えたオリパスは深く頷き、自分たちが集めた情報を共有する。
「こっちはあいつの居所を掴んだ。どうやら、この先の屋上で若者を集めて話しているらしい」
娘がジモラに会いに行くと場所も言わず出て行った、と慌てる父親から話を聞いたそうだ。
「よく場所が聞けたね」
その父親に感心する。
同時にどうして分かるのか首を傾げてしまう。
ルークが頭を抱えながら答える。
「どうやら、娘に発信機と言う居場所がわかる機械を取り付けたらしい……同じ親として、心配なのは分かるが、真似したくないな」
「とにかく行ってみよう」
オリパスはすぐに歩き始めた。
キャリーも後に続く、がすぐに前に出てしまう。オリパスの歩く速度が遅いせいで。
一番後ろを歩くルークは気になる事を尋ねる。
「先程から気になっていたんだが、どうして、ジモラと言う男を探すんだ? 話を聞いていると信用のおけない男だぞ?」
彼の質問は全くでキャリーも同感する。
いつも、人にちょっかいを出して怒らせたり、悲しませたりする。
特にガーネットには何かと嫌がらせをしていた。
ラット・ドックの頭が飛び出てくる箱をあげたり、髪を引っ張ったりするのだ。
その度に彼女が顔を真っ赤にして怒るのをヘラヘラと楽しそうに見ている。
酷い男をどうしてオリパスが頼るのか、不思議でならない。
オリパスは心底呆れた顔を浮かべ、目を逸らしながら呟く。
「他に頼れる人間がいなかったんだ……」
彼はこの街を出てった時の話を始めた。
「皆が次の戦いで沸き立つ中、もう、終わりにしようとバシレイアに向かう事を決めた俺たちの前にあいつは現れた。事情は知っている様で止める気なんて、最初からなかったと思う……ただ、その時、メアリーがあいつに託したんだ。この国を頼むって……その時のあいつの顔は今まで見たことがない様な驚いた顔で困り果てていたんだよ……だから、だから……」
結論を出そうとするオリパスだが、言葉が見つからない。
メアリーが託した。
そんな単純な理由で今、奴を探しているの。
自分でも不合理だと思っていた。だが、探し出してあいつは変わったんだと思い始めている。
本気で後を都合としてくれていると思いたい。
オリパスはそれ以上、話す事はなかった。
長い階段の先に広い屋上がある建物にたどり着く。
三人は迷わず登り始めた。すると、屋上から演説の声が聞こえてくる。
チラリと覗くとニタニタと笑いながら言う。
だらしなくズボンからシャツをはみ出し、無駄なベルトの飾りがついたコートを羽織った男が、トットさんのハンバーガー店の話を饒舌に語っていた。
あそこのハンバーガーは美味しかったな、とキャリーも同感する。しかし、すでに潰れたと聞かされて耳を疑った。
「あれがジモラだ」
後ろのルークにオリパスは教える。
「俺は思ったさぁ! 誰かが守らないと、この国はすぐに滅んでしまう。そこで君たちに自警団を担ってもらう」
両手を広げ、目の前の男女に熱く目的を話した。だが、この街にはすでに自警団が存在している。
当然、その事についても、指摘されたが、ジモラはペロリと舌を鳴らしてから答えた。
「ッチャあぁ、いるよ。いるけど……あんまり、信用ならないんだ」
「お前以上にか?」
「あぁ、できない。信じられる程、信用できない…………ん?」
様子を伺っていたオリパスがタイミングを見計らい、姿を見せる。
キャリーもその後に続いた。
振り向きながらこちらに気づく彼は目を見開き驚く。
左耳のリングが少し揺らぐ。
反対の髪を掻き上げながら、皮肉混じりに新しい客へ挨拶を送る。
「やぁ、ッチャ我が友、裏切り者のオリパスじゃないか。それにキャリー久しぶりだね。二人とも帰って来ていたのか、ッチャ、すまない、迎えに行けなくて実は……」
怪しい笑みを浮かべる。
続きを話そうとする彼の言葉を遮りキャリーが前に出る。
「ジモラ、話がある」
「……」
彼女の言葉にジモラはワクワクとした様子で、静かに耳を傾ける。
「トットさんのお店、本当に潰れたの?」
いつになく真剣な様子で、キャリーはトットさんのハンバーガー店について尋ねた。
それに対して、予想外とジモラはお腹を抱えて笑い出してしまう。
キャリーは少し恥ずかしく顔を赤くする。が、大事な事なので仕方ない。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
格付けチェックで信用できる占い師と信用できないガキ
両方いるのって、複雑で心配になりますよね。
「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、
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