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ガーネットは許さない Lv.1(七話)

 あの夜以来、紅い靴は履いていない。

 結局、メアリーは帰ってこなかった。


 一年後、彼女の死が新聞で知らされたのを今でも覚えている。

 もう、自分は生きていちゃいけないんじゃないか、と思うほどだった。


 散らかる店の中で、丁寧にしまった紅い靴を見ながらガーネットは思う。


(あの子はもう知ってた……でも、人質に、メアリーお姉ちゃんを死なせる原因だった事は知らなかったみたい)


 綺麗な金髪に黄色い瞳の少女、キャリーの顔が浮かぶ。

 彼女は平気な顔で現れた。


 ガーネットにはそれが堪らなくウザかった。


 例え、何にも知らなくても、ガーネットは許さない。

 あの子のせいで、メアリーは死んだのだから。


(違う、キャリーだけのせいじゃない。私が、私が捕まったのが始まりなんだ!)


 首を振って否定する。しかし、全てを悟った様なキャリーの寂しそうな顔が頭をよぎる。

 あの瞬間、ガーネットは抱えていた怒りの矛先を見つけてしまったのだ。


 あの子をめちゃくちゃにしてやりたい。


 同じ絶望を味合わせてやる。


 彼女の困り、後悔した顔を見てやりたいと思のだ。


 予想通り、お笑いだった。しかし、すぐに自分の惨めさに気付いてしまう。


 親友と呼んでくれた彼女の方が、メアリーを失った事に深く傷付いているとしていた。しかし、ガーネットは、彼女にまた苦しい思いをさせてしまう。


 最悪だ、最低だ。


 彼女に申し訳ない。


「……」


 ガーネットは工具を取り出す。

 部屋の隅にあった材木を集める。


 人質なんて、知らなかった。


 知らないうちにされていたんだ。


(あの子ならきっとありえる……)


 騙されやすい友人なのだから。


 ガチャっと扉が開く。

 真剣な表情でキャリーが戻ってきた。


 ガーネットはすぐにキャリーのやりたい事がわかる。

 口を開きかける彼女より先に言ってやった。


「謝らないで」


 謝る必要がないのだから。

 謝るのは自分の方だ。

 先を封じられたキャリー。それでも、彼女は決めた事をする。


「ごめんねガーネット! あたし、気づかなくって」


 遠い場所に呼びかける様に叫ぶ。

 馬鹿正直に真っ直ぐと。


 それが嫌なんだよ!


 ガーネットは手にした工具を叩きつける。


「私に謝ったってどうしようもないでしょ!」


 頭にきて振り返る。

 そこには綺麗な金髪に黄色い瞳を真っ直ぐと向けるキャリーが泣きかけていた。

 震える声で再び謝る。


「あたしがバシレイアにいたのに、メア姉を助けられなかった……ごめんな……」


 ごめんなさい、彼女が言い終わろうとしていた。

 ガーネットは慌てて首を振る。


(違う、違う、違う! あなたが謝る必要なんてない!)


 なぜ、辛い人に謝らせているの?


 親友を苦しめているの?


 ガーネットは自分がさせている事が許せなかった。


 体が震える。


 手にした道具がこぼれ落ちた。


「謝んないでよ! あなたが悪いんじゃない」


 お願いだから言う事を聞いて!


 ガーネットは強く願う。

 これ以上、苦しめないで欲しかった。

 彼女の言葉にキャリーは止まる。


「私は期待してたんだよ。キャリーがバシレイアに行く時、メアリーお姉ちゃんを連れ戻してくれるって……でも、結局、何にも変わんなかった」


 わがままじゃない、これは懺悔だ。


「目の前で殺されるとこを見たあなたに比べれば、私なんて……私なんて」


 胸が苦しくなる。

 涙がこぼれ落ちてきた。


「私なんて、あなたを責める資格なんてないのよ! 卑怯な私に謝らないで!」


 グチュグチュに鼻水が出てくる。

 拭いても拭いても、鼻水も涙も溢れて止まらなかった。


 嫌って、嫌って、こんな自分を許さないで!


 力強く彼女を睨んだ。

 離れてほしかった。


 キャリーはそんな彼女にゆっくりと歩み寄る。

 彼女には嫌うなんて選択肢はない。だって、この街一番の時計店を一人で切り盛りできて、可愛い服を沢山教えてくれる親友なのだから。


 キャリーは悔しさと申し訳なさで胸がいっぱいだった。


「ごめんね、ごめんね」


 泣きながら謝ってしまう。


「だから、謝らないでよ……」


 文句を言いながらもガーネットは、近づくキャリーを抱きしめる。

 本当にもう、責めたくないのだ。

 この子は悪くないのだから。


 溢れる涙は止まらない。

 抱き合う二人はわんわんと泣き続ける。



(あーやっぱり、こうなった!)


 二人の様子を扉越しから見ていたパトロは頭を抱えていた。

 女の子の慰め方など知らない。


(僕が行っても、どうにも出来ない….よし、仕方ない。助っ人を呼んでこよう)


 自分のネガティブ差を理解しているパトロは静かにその場を去るのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

笑顔で帰って来たあの子が憎い、何も知らずにいた彼女が憎い。

でも、一番は知ってて責任を押し付けようとする自分が憎いガーネットは、

許せない物ばかりだった。

キャリーは、何も知らない、それでも、自分の無力さだけが申し訳なかったのだ。

真っ直ぐすぎる彼女にガーネットはほだされてしまうった。

次回「ガーネットは許さない Lv.1」最終話。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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