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無意味な犠牲 Lv.4

 人一人がすっぽりおさまる大きさの魔法陣。

 静かな詠唱と共に赤い魔石の目と不恰好な土の体をした人形が姿を見せる。

 ゴーレムはゆっくりと体を起こすと主人である魔法使いに首を垂れた。


「お前も村を襲え」


 ローブを着た魔法使いの言葉にゴーレムは従う。

 素早く走り出し、あっという間に村の方まで走って行った。


「結構な数を作りましたが、オットーさんまだいりますか?」


 少し不安げに彼女は首を傾げる。

 視線の先には黄色い髪に茶色いつむじ、虎の耳と尻尾を生やしたオットーが、満足げにこちらを観ていた。


「いいや、十分だ。これだけ作れば捕まった奴らも逃げれるはずだ」


 オットーは神の国バシレイアを滅ぼす為、準備をしている。

 今回の襲撃も、その一つだ。


「あの、私の他に今回の襲撃には、誰が来ているんですか?」


 魔法使いの少女は尋ねる。

 オットーは指を折って数えてから答えた。


「火炎放射器を作った男と黒髪のガキが一人だ。それぞれ、自分の目的の為に参加しただけだよ。んな事より一人でゴーレムの軍勢を作れるなんてすごいぜ」


 彼女の称賛の言葉に、頬をかきながら魔法使いの少女は笑う。


「準備をすれば、師匠の方がもっとすごいのを作りますよ」


「そうか? お前のでも十分すごいと思うぜ」


「いいえ、私のは、まだ不恰好で性能も不安定なんです」


 雑談をする彼女たちを木の影から狙う者がいた。

 ラッパ銃を構え、慎重にゴーレムを作り出した術者を狙う。


 バンっと銃声が響く。


 弾は真っ直ぐと飛んでいった。しかし、狙った場所には届かず、予期せぬものに妨げられる。

 突然の音に驚く少女の前には素手で弾を受け止めるオットーが立っていた。


 彼女は小さい鉄球を握りつぶした。

 険しい顔で未だ、姿を見せない暗殺者に怒鳴り声を上げる。


「こそこそと、隠れてるんじゃねぇ! オリパス!」


 叫び声は静寂に飲み込まれ、シーンとする。


 カサ、カサカサ、パキ!


 物音が聞こえた。


 オットーの耳がツンと立つ。

 相手の居場所が分かったのだ。

 彼女はすかさず、走り出す。


「そこだ!」


 鋭い爪を尖らせ、切り付ける。

 そこには間一髪、攻撃を交わしたオリパスがいた。


「久しぶりだな、クソ野郎!」


 憎しみに燃える眼差しをギラリと向けるオットー。

 オリパスはどうしてこうなるんだと苦難の表情を浮かべていた。

 



 一撃で魔法使いを仕留めることが、出来なかったオリパス。

 彼は急いで木の影に隠れる。


 かつての仲間、サソリの右腕虎の子オットーと対決する事になった。

 理由は分かっていた。だが、聞かずにはいられない。

 彼は木の影に身を潜めながら叫ぶ。


「なぜ、こんな事を!」


 オリパスの問いかけにオットーは指を鳴らしながら答える。


「決まってんだろ。復讐だ! メアリーの姐さんを殺した奴らに痛い目見せてやる」


「そんな物、また新たな争いを生むだけだ!」


「知った様な口を聞くな!」


 強靭な脚力から放たれるオットーの右足が、オリパスの隠れる枯れ木を打ち砕く。

 吹き飛ばされる彼は、受け身を取りながらラッパ銃を構える。


(そうだな……俺が言える立場じゃない……)


 この争いを起こしたきっかけは自分にあるとオリパスは自覚する。

 彼女がメアリーの復讐の為に動く。

 その原因を作ったのは自分だ。


 仲間を裏切り、メアリー・ホルスをバシレイアに引き渡した。

 有無を言わさず、ファイアナド騎士団を解体する。

 納得して手を引く方が珍しい。


(だが……俺も、譲れないんだ。あいつの選んだ道を守る為に!)


 オリパスは狙いを定めようとする。しかし、身軽なオットーを捉えるのは、至難の業だった。

 気づいた時には、目の前に鋭い瞳孔を向けるオットーの姿が見える。


「おせぇ」


 彼女はラッパ銃を薙ぎ払う。

 衝撃で部品が粉々に壊れてしまった。

 オリパスは争うことも出来ずに薙ぎ倒される。


「ッ……」


 分かっていた。

 彼女との圧倒的実力差など、初めから知っていた。

 彼女には祝福の力がある。


 戦いのセンスもある。

 獣の様に勇ましい度胸もある。

 対してオリパスには僅かな知恵しかないのだ。


 力勝負などできない。

 何もできないオリパスは、カッコ悪く泣くことしかできなかった。


「ちくしょ……」


「お前のせいだ」


 オットーは、爪を掻き立てる。


「お前が裏切るからメアリーの姐さんは……」


 オットーの声が震え始めた。

 彼女の目は怒りに満ちている。


「アンタのせいで!」


 トドメを刺そうとするオットーに、オリパスは手も足も出せなかった。

 代わりに麓の村を襲うゴーレムの動きを止めさせる。


 バン!


 腰に携えた、もう一丁のラッパ銃を素早く抜き、引き金を引いた。

 守る者がいなくなった魔法使いの少女は、避ける事ができず、お腹に弾が当たる。

 全身の力が一瞬で抜けていった。


「……お、おい!」


 一瞬、何が起きたか分からなく、唖然とするオットー。

 しばらくして、仲間が撃たれてしまったと気づく。少女の元へ駆け寄る。

 敵であるオリパスのことすら忘れるほどだった。


「おい、しっかりしろ! おい!」


「……」


 少女は自分が死ぬかもと思い、怖くてプルプルと震えていた。

 オットーは急いで彼女を抱えあげる。

 オリパスにはトドメを刺さず、その場を立ち去るのだった。



 

(クッソ、どう言うことだ? あいつの銃は壊したはずだ!)


 オットーは理解に苦しむ。

 オリパスの銃は二丁しかない。しかも、再び撃つのに、非常に時間がかかるラッパ銃だ。

 奇襲に失敗した彼に残されたのは一丁のラッパ銃のみ。


 それも、オットーが壊したのだ。

 なのに、どうして、収められていたラッパ銃で撃てたのか、分からなかった。

 撃ち終えたはずの方から弾が出たのか?


(まさか……)


 オットーは一つの予感を覚える。

 本来ならあり得ない事だ。だが、戦った相手を知っているからこそ、分かってしまう事がある。


(あいつは最初から負ける気だった?)


 オットーに向けたラッパ銃はブラフ。

 腰にしまっていた二丁目が本命だ。

 オットーは弱さを自覚するオリパスと、彼に出し抜かれた事で歯痒くなる。しかし、今は撃たれた仲間を助けるのが先だ。

 



 オットーは黙って、その場を立ち去っていく。

 間一髪、命拾いしたオリパス。


 顔を覆い、現状を嘆いていた。

 燃え上がる村、復讐にとらわれた仲間。

 この事件のせいで、バシレイアは正式な宣戦布告が可能になる。


(無駄になった……)


 メアリーの、彼女の犠牲と選択が、この時、全てが無へと消えて行くのを思い知らされた。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

オリパスの戦闘力は下から数えた方が早いですね。

当然、キャリーより強いとしても、神の国バシレイアの兵士たちより弱いです。

所詮は、のら上がりの人間ですからね。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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