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塗りつぶす白銀の剣  Lv.4

 全身を大鎧で身を固め、背中に背負う二本のタンクから伸びる管は炎を吹き出していた。

 火だるまの様に全身に炎纏う男は、ゆっくりと近づいてきた。

 オリパスはラッパ銃を構える。しかし、ベテランの老兵シルバーに止められた。


「君のチンケな武器では傷などつかん。私がやる」


 整えられた顎髭と背筋の伸びた老人はゆっくりと前に出る。


「他の奴らはどうする気だ」


 周囲で戦っているシルバーの部下たちが心配になる。だが、彼はそこまで気にしていない様だ。


「無論、助けるが、柔な奴らを連れて来たつもりはない」


 彼はそう言って、腰に携えたレイピアを抜く。

 夕日の様に燃え上がる村の中で、シルバーのレイピアは白銀に光を放ち、周囲を照らした。

 白い粉がチリの様に舞う。


「君はゴーレムを操る本体でも探して来たらどうだ?」


 彼の言葉にオリパスはハッとする。

 経験の差が出て来たのだ。

 ゴーレムは魔法使いが作り出す人形。

 土と魔石によって作られる。


(もし、離れた場所で作っていたとして、そう遠くから、回り込んでいるなら、何らかのタイミングで気づく。だとしたら、隠れた場所で作り出し攻撃に使っているはず……)


 オリパスは推測を立て、大まかな予想を見つける。

 シルバーの助言に従うことにした。


「分かった。あんたも気をつけろよ!」


 枯れ木の山へ走り出す。



 

 離れていく青年を見ながら火ダルマは喋った。


「なんだ、あの最強のメアリー・ホルスの仲間と聞いて期待したが、そうでもなかったな」


「……」


「まぁ、バシレイア最強のジジイがいるんだ。申し分ない。あ? 何突っ立てるんだ?」


 シルバーは、目を丸くして、火ダルマを見て呟く。


「喋れたのか……」


 先程、何者かと尋ねた際は、答えてくれなかったので、てっきり喋れないと思っていた。


「まぁ、関係ない」


 シルバーは再び距離を詰め始める。


「ヒューおいおい、火が怖くねぇのか? そんなに近づくと、火傷しちまうぜ」


 両手の炎を小刻みに噴出して、相手を脅す。しかし、彼は侮っていた。

 バシレイア最強の男を。

 シルバーは呆れた眼差しと険しい殺気を浮かべながら吐き捨てる。


「火如きで恐れていては、何も守れんよ」


「あっそ、死ね!」


 火ダルマにとって絶好の間合いに入った瞬間、シルバーにありったけの炎を吹っ掛けた。


「ブホッブホッ!」


 一瞬のうちに目の前は火の海に変わる。


 シルバーは黒い影となって、炎の中へ消えていく。

 これではチリも残らない……はずだった。


 突然、白い光と共に炎は切り裂かれる。

 火ダルマの目の前には何事もなかったかの様にレイピアを構えるシルバーの姿があった。


「所詮はこの程度か」


 少し不服気味に言うと火ダルマを睨む。


「手品は終わりかね?」


 軽い挑発だった。しかし、火ダルマにとって唯一の武器、作り上げた人生とも言える技術の否定によって、怒りと恐怖に包まれる。

 彼は最大火力で再びシルバーを焼き尽くそうと試みた。


「いい加減死ねや! このクソジジイ!」


 火ダルマが、炎を吹き出すよりも先に、決着はつく。

 シルバーはわずかな、呆れたとため息をつき、白銀の光を全身に纏う。

 彼は一瞬で、光の様に火ダルマに近づいた。


 レイピアからは、無数の銀の粒が纏っており、まるで吹雪の様に溢れ出ていた。

 それは絶え間なく敵の装備を削り取っていく。

 瞬く間に通り抜けたシルバーが、レイピアを収めると同時に、火ダルマの炎を吹き出すための管に亀裂が入る。


 中から液体が溢れでてきた。

 一瞬のうちに炎に引火する。

 火ダルマは大きな爆発と共に文字通りの火だるまへ変わってしまうのだった。


 名も知らない敵を前に、シルバーは声に出さぬが、嘆いてしまう。


 彼女なら、彼女の刃なら私を楽しませてくれるのに、と昔の女に思いを馳せるのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

シルバー・ヴォルフの祝福の力は、武器に自身の力を流すことができ、無数の銀色の粒で削るように戦うこともできます。彼の剣線の輝きは戦場で最も美しいと言われるほどでした。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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