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八重する企みと囚人たち Lv.4(三十八話)

 昼頃、ファドン刑務所での騒動が収まり、キャリーは依頼の方の荷物を運び切った。

 武器の他に食料がある為、運ばない理由はない。

 そもそも、依頼だから運ぶ。


 額の汗を拭い取っていると、ダインとアンが小屋から出てくるのを見つける。

 二人して顔を赤くそめていた。


「?」


 どうしたのだろうと首を傾げているとルークがやって来る。


「キャリー、アシュメが呼んでる。て、すげー嫌そうな顔」


 名前を聞いただけで、眉間に皺を寄せて睨みつける。

 出来ることなら、もう会いたくないと思っていた。ただ、残念な事にルークは大事な話だから我慢しろと言うのだ。


「それとダイン。お前にも後で話があるそうだ」


「私にも?」


 首を傾げるダインにルークも肩をすくめた。

 事情は知らないらしい。



 

 キャリーはルークと共に看守長室に入る。

 いつでも逃げれる様に、扉は開きっぱにしといた。さらにルークの影に隠れる。


「もー小鳥ちゃん警戒しすぎ。可愛んだから♡」


 マゼンタピンクの髪に、黄緑色の瞳、キッチリと白い線が入った制服用の黒いコートを着込むアシュメは微笑ましそうにキャリーを見つめる。


「あんたも、いい加減こりてくれ……」


 前と後ろの睨み合いの間で板挟みになるルークだった。


「そうね。とっとと話を終わらせちゃいましょう。まず、幸ちゃんとカニンチェンくん、他数名の脱獄に関しては、小鳥ちゃんは手を貸してないのよね」


 こくりと頷く。


「まぁ、私の仕事を邪魔したのは許せないけど、それを帳消しにできるほど貴方たちは頑張ったわ。はい、これをシルバー様に渡せば、きっと協力してくれるはずよ」


 一枚の手紙を差し出す。


 キャリーはルークに取りに行かせようとしたがびくとも動いてくれなかった。

 渋々と自分で取りに行く。

 手紙を受け取る瞬間、アシュメは身を乗り出しキャリーの手を掴む。


「!」


「悪いことしたらいつでもいらっしゃい。ちゃ~んと面倒見てあげるわ♡」


 彼女はそっと手を離し、別れとして手を振む。


「元気でね。小鳥ちゃん」


 からかわれた気がしたキャリーは、アシュメを睨みつける。

 舌を出して、ベーと言ってからすぐにルークの後ろに隠れた。


 愛らしいと思った看守長は笑い出してしまう。


 キャリーたちは手早く、終わらせることが出来た。

 帰り道、ダインやアン、リードに会うことは出来なかった。


 それでも先を急がねばならない。


 麓の村に着くとキャリーは目を見開く。

 ここには何もなかったかの様に一面が焼け野原に変わっていた。

 涙を流す者や痛みに苦しむ者、上の刑務所と同じ様な状況だった。


「昨日、こっちでも襲撃があったんだ」


 ルークは苦々しく語る。


「上も、下も、てんやわんやで、こっちの方はシルバー様に任せっきりだったんだ。不甲斐ない……」


「……」


「待ってくれ!」


 オリパスの声が聞こえる。

 見るとオリパスとシルバーが向かい合い、口論をしていた。


「もう、我慢できん。今すぐ兵を集めて戦う準備をさせてもうよ」


「頼む! もう少しだけでいい。待ってくれ!」


「君はすでに失敗しているだろ? これでは、みすみす見逃せと言っているものだ」


 二人の会話から何があったか、想像が出来ない。

 話しかけ様にも隙がなかった。

 黙って立ち尽くしているとレサトがキャリーに気づく。


「キャリー、戻ったの?」


「うん。レサ姉、何があったの?」


 この燃え尽きた村を見渡しながら尋ねる。

 レサトは頭を抱えながら答えた。


「オットーが、ゴーレムを率いて襲撃をして来たの……」


 嘘だと思った。

 そんな事をオットーがするはずがない。でも、レサトの言葉が嘘を言うとも信じられない。


「今、あのジジイが宣戦布告と捉えて戦う準備をしようとしているのをオリパスが、止めようとしているのだけれど……」


 キャリーはオリパスの方を見る。


 必死に止めようとするが、ああだ、こうだ、とたぶらかされて上手くいっていなかった。

 手紙を握りしめ、ゆっくりと彼らの方に歩み寄る。

 少女が近づいて来た事にシルバーは気づく。


「なんだね?」


「……」


 キャリーは黙って見上げる。

 シルバーは眉を顰め、煩わしそうにしていた。

 深呼吸を行い、キャリーは口を開く。


「オリパスに力を貸して」


 彼女の言葉にシルバーは首を傾げた。


「なぜ私が、この男ごときに力を貸さねばならない」


「あたしはお前の依頼を成し遂げた」


 キャリーはアシュメから貰った手紙を差し出す。

 シルバーは何か言いたげだが、先に受け取って中身を見る。


 そこには荷物が全て届けられた報告と厄災討伐に大きく貢献した為、代わりに恩を返して欲しい、と言う内容だった。


 手紙を見るシルバーの手が震える。しかし、すぐに収まり手紙を懐に仕舞い込んだ。


「分かった。貴様らに手をかそう」


 彼は呟くと向きを変え、自分の部下に指示を出す。


「すぐに出発の用意をしろ!」


 シルバーはゆっくりと歩き出した。

 説得に苦戦していたオリパスが口を開けて驚く。


「キャリーお前……」


 キャリーは一瞬、胸が熱く苦しくなる。

 うまくいか、不安だった。

 アシュメを殴ったことで、何か言われるんじゃないかと焦った。

 すぐに顔を上げて振り向く。


 彼にしっかりと見える様にピースサインを見せる。

 綺麗な金髪に、黄色い瞳をしたキャリーは、誇らしげに笑顔を見せるのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

キャリーたちアイオライト組の戦いはこれで終わりました。しかし、この物語はもうしばらく続きます。

読者の皆様は、是非、最後までお付き合いいただけると幸いです。

「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、高評価をよろしくお願いします。


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