八重する企みと囚人たち Lv.4(三十三話)
文字道理、夜空の中、抗いようのない死へと近づく恐怖を味あわなくては、いけなかった。
これ程、歯痒い悔しさはない。
ルークには才能も、恵まれた地位もない。
ただの酒場生まれの子供だった。
祝福の力も、魔法を操ることもできない彼は今、状況を打開できる手が欲しいと願ってしまう。
こんな、こんな……
「何もできずに死ぬなんてぇぇぇ! クソォぉぉ!」
悔しくって、叫び続けた。
まだ、娘の立ち姿も見られてないのに、地面に叩きつけられる運命なんて、認められない。
でも、彼には何もできないのだ。
遠くまで飛ばされて、地面までの距離があとわずかな時、雷鳴が駆け巡る様に一人の少女が駆けつける。
「見つけた!」
キャリーだ。
彼の悲痛な叫びを頼りに、真っ暗な夜空から場所を見つけることが出来た。
キャリーは急いでどう助けるか考える。
このまま、抱えられる程、自分は力持ちじゃないと分かるからだ。
キャリーはルークが落ちる場所から離れる。そして、走り出した。
「間に合えぇ!」
地面に衝突する瞬間、横から弾かれる。
ルークは地面に激突する速さと同じぐらいに真横に飛ばされた。
「グハッ」
何が起こったか理解できない。
ただ、今は真っ暗な暗闇と枯れ木が聳え立つのが見える。
死んでもその場から動けないのかと思ったが、腕に感覚はあった。
全身が痛いわけじゃない。
「……」
ぼんやりとしていると視界の端からキャリーが顔を覗かせる。
「大丈夫? 生きてる?」
彼女の言葉でまだ、自分は生きているのか、と実感した。
「……あぁ、なんとかな」
「よかった」
キャリーはホッと胸を撫で下ろす。だがすぐにあわあわと慌て始めた。
「あぁ、でも、デザスターがまだ。でも、あたし」
キャリーが言いたい事はなんとなく分かる。
戦う術がない。
そう言いたいのだと思った。
でも、なんとかしたいと彼女は立ち上がり進もうとする。
ルークはキャリーの手を取る。
「少し……待ってくれ」
落ちる感覚を味わいすぎてしばらくは起き上がれそうになかった。
息を整え、彼女に伝える。
これはキャリーたがら出来る事だと付け足して。
地面に這いつくばり、逃げようとする同族。
デザスターは急いで先回りした。
「逃がさないよ」
見下ろすだけでもニヤケが止まらない。でも、もっと笑える話ができそうだ。
「お前、本当に馬鹿だよね。どうして、人間と手を組むんだか?」
彼らにはその必要がないのだ。
「俺たちなら支配して利用できるじゃん。わざわざ、足の筋まで切って報復してさ。頑張ったね」
彼女の足首を見ていった。
ろくに動かせないから這いつくばっているのだと。
「私は……あなた達と違う……」
「同じだよ。出鱈目にデザインされて、作られたもの同士。俺たちは人間も同族もみーんなグチャグチャにするんだ」
少女の言葉を否定するデザスター。それでも耳を貸さず、彼女は言いたいことを言う。
「私は人間と仲良くなりたい。普通に生きたいの……だから、嘘はつきたくないし、相手を殺したくない」
少女は拳を握りしめる。
ジッと様子を見ていたデザスターは変な話だと思い始めた。
思い始めると笑いが込み上げてくる。
「ククッ……ふふ……Hahhhhhh! バッカじゃないの? 出来るわけねぇじゃん。正直すぎて笑える」
思わず彼は吹き出してしまった。
一度笑い出すと止まらないほどに、少女の言葉が無理だと思ったのだ。
「ねぇ、知らないの? この世界じゃ正直者は馬鹿を見るんだぜ」
嘲る彼の言葉を聞いて、少女の拳は緩む。
彼の言葉が確かだと思った。
「えぇ、本当ね……」
彼女はゆっくりと顔を上げる。
嗚咽して泣きじゃくった顔ではなく。邪悪に微笑む狂気に満ちた笑みだった。
「まんまと、引っかかって見下げる馬鹿を見れるなんてね」
少女は隠し持っていたあるモノを取り出しデザスターに向ける。
技術の街で急速に開発が進められている武器。
銃を隠し持っていたのだ。
丸い玉と火薬を詰め込み、使う道具。
以前は弾が出る周りが広がって、取り回しが悪かったと聞くが、少女が手に入れたものは、そこが改善されて、懐から出しやすいものになっていた。
彼女はすかさず、引き金を引く。
ハンマーが降りて、その先に詰められた火薬を叩きつけた。
ビクンと目覚めるように跳ね上がり火花が散る。
連鎖する様にして銃内部の火薬に火がつき、爆発と共に熱く燃える弾が、弾き飛ばされた。
デザスターが、何かに勘づく、その前に全ての動作は終了する。
一瞬で彼の視界を奪った。
「あぁぁ!」
理解できず、目を抑える。
赤い血が涙の様に溢れていた。
「この雑魚がぁ!」
彼はすかさず、支配下にある枯れ木を、自分の元に寄せる。そして、目の前の少女を貫こうとした。
「させません!」
お終いだと思ったローゼンはゆっくりと目を見開く。
目の前には無数の枯れ木に刺されたダインが立っていた。
「ダインさん! どうして……」
彼の懐が赤くにじむ。だが、ダインはうろたえない。
「ご安心を……」
呟くとダインは力を込める。
筋肉を肥大化させた。
「マッスル!」
掛け声と共に刺さった枯れ木を全てへし折るのだった。
先程まで枯れ木の人形と戦っていた彼がどうして、ここに。
彼女の疑問に答える様に親指を立てる。
「女性がピンチな時に駆けつけるのは、紳士……いいえ、男として当然ですから」
彼の大きな背中が頼もしく見える。
「なら、これならどうだ」
デザスターは枯れ木を複雑に動かし、えぐり殺そうと考えた。
「させない!」
頭に強い衝撃が走る。
いつの間にか、背後に回り込んだアンが、彼に二度目の一撃を与える。
「ムグッ!」
地面に叩きつけられた。
アンはすかさず、リードの方を見る。
彼女の指示のおかげで見つからず裏に回り込めたのだ。
「ローゼン、こっだ!」
リードは急いで駆け寄り、ローゼンを抱え上げて城壁の方へ逃げた。
こっちの方が岩場が多く攻撃が届きづらいからだ。
「ふざけんなよ……」
デザスターは頭を押さえながら立ち上がる。
「テメェら、雑魚が調子乗ってんじゃねぇ!」
地面に埋まっていた枯れ木の根すら操り、周囲をはちゃめちゃにする。
「これでは近づけない」
自由自在に動く枯れ木。
無数に出てきた木の根。
これらを掻い潜り、彼を倒すのは不可能だと思った。
背後から見るリードも同様に思う。
(俺なら見えるんだが……あいつらには)
不意に気になることが浮かぶ。
ローゼンの方を見て尋ねた。
「おい、ローゼン。テメーの祝福の力って言って良いのか? まぁいいや、能力ってなんだよ」
デザスターの方を指差しながら聞く。
「さっき、同族とか言ってたよな。あいつみたいに何かあんだろ?」
ローゼンは嫌々ながら頷く。
「は、はい、私にも出鱈目な共有の力が……」
「出鱈目な共有? 詳しく聞かせろ」
リードはローゼンが隠していた能力を話させる。
話を聞き終えて彼女はニヤリと微笑んだ。
目の前で暴れ散らかすガキを倒す方法を浮かんだからだ。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
正直者が馬鹿を見る……世の中文字通りになったらいいですよね。
本来は「正直者が損をする」ですが、
バカにしてくる馬鹿を見る的な意味に変わればいいなと思って。このシーンが生まれました。
「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、
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