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八重する企みと囚人たち Lv.4(三十話)

「嬢ちゃん、縄とか持ってるか?」


「いいえ、そう言ったものは」


 横で主人が戦っている中、鳥の子は囚人と話していた。

 本当はカニンチェンの事を見ていたいのだが、下に敷いたゲスをどうにかしなくてはならない。

 足元が揺れる。


 見るとリードが立ちあがろうとしていた。


「いい加減、どきやがれ! コラァ!」


 背中をそる彼女に、鳥の子はコテンと転がってしまう。


「このォォォォ!」


 リードはすかさず、頭をかち割に行こうとした。が彼女にあるまじき事に周囲にいた囚人達のことを忘れてしまう。


「オラ!」


 頬に強い痛みが走る。

 リードはデカい一撃を喰らって飛ばされてしまった。


「嬢ちゃん、大丈夫か?」


「はい、申し訳ありません」


「お前ら、またそいつが動き回られると手に負えねぇ。コテンパンにやっちまうぞ」


 囚人達はじわじわと距離を積める。


(クソ、逃げるか? いや、どこにだよ……俺にはもう、居場所なんてねぇんだ)


「うをぉぉ!」


 リードはがむしゃらに彼らに挑む。しかし、体格差のせいで攻撃は届かず、逆に手痛い一撃を喰らってしまう。


「げっホァ!」


「はっはは! やっぱ、タコ殴りよりもこうやって殴る方が楽しいな」


 囚人の一人が言った

 頭がくらくらとする。

 立つことすらままならない。


 リードは全身が痛むのを感じる。


「ほーらよ!」


 気づいた時には顎を殴られ、天地が反転した。

 自分が倒れたのだと、遅れて気づく。


(俺はバカだよな……)


 微かに高笑いする囚人達の声が聞こえる。


(もっと賢く生きればよかったのに……)


 リードは元々、眩しい家の生まれだ。


 物心ついた頃には、あちこちを転々として、常に食うものに困る生活だった。

 このまま、続けても埒が開かないとリードは家族を置いて一人で生きると決めた。

 その頃から人の目を盗み、物を盗んで生きて来た。


 目が他より優れていたからお手の物だ。

 それでも、小さな自分にできる事は多くない。

 強い相手に見つかれば、容赦なくコテンパンにされた。


 押さえつけられたら何もできなくなる。


(俺は弱いんだ……)


 リードがアンに出会ったのは、そのぐらいの時だ。

 村育ちのアンは、他の子供達にバカにされて、よく泣いていた。


(俺はそこで言ってやったんだ)


 気にいらねぇ、ならぶん殴れ。

 お前はすごいんだ。

 アンは嬉しそうに笑ってくれた。


(俺の言う事をなんでも聞いてくれた。だから、盗みも手伝ってくれた)


 でも、いつまでも続かなかった。


(あいつに男ができた。それもこれも俺たちを捕まえた男に恋をしたんだ。


 笑っちまうよ……


 でも……心がモヤっとする。


 敵があいつの恋人だからか?


 イチャイチャを見るのが、気持ち悪くて腹が立つからか?)


 腹が立つって、どうして?


(俺は……俺は、あいつを……あいつを手放すのが嫌なんだ。

 あの腕力が、

 そばにいてくれる友が、

 頼れる相棒が、

 いなくならないで欲しかった……

 でも、分かってる。

 分かってるんだよ!

 クソが……俺とあいつはもう違う道なんだって)


 少し前にリードは、こっそりとダインを呼び出した。

 自分にまで金を入れるな、アンを優先しろ。そうすれば、そばにいられるぞと。だけど、アンはそれを拒んだ。


 心の底で何かが膨れる気がした。


「気にいらねぇんだ。俺は……」


 ボソリと誰にでもなく。


「俺は……自分より恵まれてる奴が、俺と同じ境遇に居ようとすることが」


 アンも、幸も、二人を見ていると自分が惨めになる。

 ただの悪人とそうじゃない奴ら。

 平然と接する自分が憎たらしい。


「お前らも……お前らだ……」


 リードは体を起こす。

 まだ、手に持っていた石を放り投げた。

 反撃をもらうと思っていなかったのか、見事に囚人の一人に当たる。


「クズの群れの癖に、自分の罪に目逸らして、逃げんのか?」


「テメェ、まだ動けんのかよ」


「あぁ、そうだよ。俺は祝福されてんだ。いい奴に囲まれて、一緒に過ごして来れた。でも、そいつらの幸せを、自由を邪魔するほどクズには、なってらんねーんだよ!」


 絶体絶命な状況なのにリードは笑えてしまう。


「背も小せぇのに、器も小さくいられるかっての」


 もう、助からないと分かる。

 一矢報いたんだ。

 慈悲なんてない。

 いらない。


(アン、幸をちゃんと逃してやれよ……)


 リードは一度もしたことがない祈りを死に際にやってみた。


「悪くねぇな」


 大きな足がいくつも見える。

 頭の悪そうな囚人達が見下していた。

 その時、背後の枯れ木が動く。


「!」


 気のせいか、そう思った瞬間、近くにいた一人が断末魔と共に空へ消えた。


「わぁぁ!」


 彼らも何が起きたか分からず、狼狽える。

 次の瞬間、近くの枯れ木があり得ない動きを見せる。

 目の前にいた囚人達を細切れに切り裂いた。


「え?」


 血生臭い匂いが周囲に広がる。


「あれ? 良いとこだった。まぁいいか、もっと、はちゃめちゃで、出鱈目な狂気を楽しませてやるよ」


 枯れ木の上に一人の青年が立っていた。


「こんばんは」


 イタズラな笑みを浮かべている。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

……えぇ、一つ言わないといけないことがありますね。

はい、まだまだ、話は続きます。長すぎてすみません!

楽しくてつい書きすぎちゃいました!

決着まで、もう少しかかりますがどうか、最後までお付き合いください。


「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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