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八重する企みと囚人たち Lv.4(二十八話)

 直ぐに動いたからか、屋上に誰よりも早く辿り着くことができた。

 風が吹き荒れてアンと幸の髪が乱れる。

 真っ暗な暗闇の中、二人は急いで東へ向かう。


 ヘリに身を潜める。


(リードの指示はここまでだけど……)


 アンはチラリと辺りを見渡す。

 村の方では火事が起きていた。

 さらに刑務所全体が騒がしい。


 看守達が誰かと戦っている。


「……」


 明らかな状況に眉を顰める。


「幸ちゃん」


 アンは彼女の方を見て言う。


「私は刑務所に戻るから、ここで息を潜めていて、見つかっちゃダメだよ」


「え?」


 突然の事に幸は目を見開く。

 てっきり、共に脱獄するのだと思っていた。


「一緒に来てくれないんですか……?」


 アンは手を合わせて謝る。


「ごめんね。私には待っててくれる人がいるの。だから、逃げたくない」


 彼女は立ち上がり、元来た道を戻っていく。

 一人取り残された幸は、屋上から下を見下ろした。

 落ちたらひとたまりもない。


「ここからどうやって逃げたらいいの……」


 頭を抱えるしかない。



 

 自由を手に入れた囚人達に混じって、ゴーレムも現れてきた。

 人の形をしているが、不揃いな大きさの体。

 真っ赤な石が埋め込まれた土の塊だ。


 ルークは流石にファドン刑務所の人間でないため、殺しを避けていた。しかし、ゴーレム相手ならその心配はない。


 力いっぱいに剣を振って行った。

 一体一体、確実に仕留める。

 三階から二階、二階から一階へと降りて行く。


 途中、看守達と合流ができた。


 その度に声を掛け合い、何かあれば自ら檻にこもってでも身を守ろうと言い合う。

 三体のゴーレムが真っ直ぐ自分へ向かってくる。


 ルークは一気に薙ぎ払う。


「おらぁー!」


 倒れた囚人の下から別の囚人が現れる。

 奴の手には小さいナイフが握られていた。


(しまった!)


 不意を突かれて、やられそうになる。その時、鉄拳がルークの前を通り過ぎた。


「テゥ!」


 見ると筋骨隆々の男。


「ダイン! それにキャリーまで、何故ここにいるんだ」


「話はあと、あと、まずはコイツらをなんとかしないと」


 疑問を遮る様にキャリーは、今の状況を指差した。

 どこもかしこも混乱ばかり、手が回らない状況だ。

 ルークは少し動揺しながら頷く。


「そ、それもそうだな」


 本当は脱獄の為に近くにいたと口が裂けても言えないのだ。

 キャリーは口をキュッと結ぶ。


「ルーク、すまないんだがアンの元に行きたいんだ」


 ダインの言葉にルークは直ぐに納得した。


「あぁ、心配なんだな。だが、俺が囚人を倒す中では見ていない。大人しく牢にいるのか、それとも……」


 考え込む。

 その時、どこからか声が聞こえてきた。


「こっちです……誰か……こっちへ」


 囁き声が聞こえる。


「誰だ!」


 辺りを見渡すが、それらしい姿はない。

 チラリとキャリーの方を見る。

 声が彼女ぐらいの感じがしたのだ。だが、キャリーもキョロキョロと辺りを見渡していた。


(じゃあ、誰が……)


「あっちの方から聞こえたよ」


 キャリーは指をさす。

 その先は地下の独房へ続く階段だった。


「取り敢えず、行ってみましょう」


「お、おぉ、そうだな」


 三人は地下へ駆け込む。

 地下には襲撃を受けて倒れた看守達がいる。


「誰かいますか!」


「おい、そんなに前に出るな」


 先に進むキャリーを呼び止め用としたが、一足遅かった。


「うわぁ!」


 キャリーは何かにつまずき倒れてしまう。


「痛い!」


「あ痛いたた……あ、ごめん!」


 気がつくと自分と同じぐらいの少女の上に乗っていた。

 キャリーは慌てて離れる。


「お嬢さん、大丈夫ですか?」


 ダインが立たせようとする。しかし、彼女が立てない事がすぐに分かた。

 緑色の瞳と癖毛、眼鏡にはヒビが入っている。

 足首に滲み跡のある包帯が巻かれていた。


「お嬢さん、怪我を! ここは危険です。私が肩に担いで連れ出して差し上げましょう」


「そ、それより大変なんです!」


 彼女は声を荒げて叫んだ。


「私の協力者が今、危険な目に」


「協力者?」


 ダインは首を傾げる。


「リード! 彼女の事をご存知ですよね」


「うん、知っているよ」


「待て、待て待て待て! お前ら、少しはそいつに警戒しろ」


 ルークは鞘付きの剣を地面に這いつくばる少女に向ける。


「ここにいたんだ。ただの迷子なはずないだろ」


 警戒する彼に対して、自分は無害だと全力で彼女は主張した。

 両手を広げ、降伏の意思を見せた。


「私はローゼン。偽りの名ですが、どうか許してください。おっしゃる通り私は迷子の猫でも、子供でもないです」


 間を開けて話す。


「私はあなた達が備えていた厄災の一人です」


 ルークとダインは目を合わせた。


「ですが、どうか、どうか今だけは!」


 縋り付くローゼンと名乗った少女にルークは困惑する。

 その時、背後から足跡が聞こえてきた。

 ドタドタとけたたましく。


「リード、どこ!」


 現れたのはダインにも勝るとも劣らない筋骨隆々の肉体、手足はマルタの様に太く、ふんわりとした薄い金髪の女囚。


「アン! 無事だったのですね」


 現れた彼女の手をすかさず取って握りしめた。

 アンは驚いた表情を浮かべる。


「ダイン⁉︎ どうしてここに?」


「実は……この騒ぎで心配に、そしたら、そちらのお嬢さんを発見してしまって……と」


 噛みきれない説明をする。


「あなたがアンですか!」


 ローゼンはアンの事を知っていた。


「共有させてもらっています。ちょうど良かった。リードに今」


「リードがどうしたの?」


「彼女に危険が迫っているんです」


 嘘偽りなく、彼女は今リードに起こっている危険を正直に話すのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

ローゼンの元にアイオライト組が集まってきましたね。

話は戻りますが、ルークが看守たちと会った際、

挨拶したシーン、山登り感あっていいですね。


「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

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