八重する企みと囚人たち Lv.4(二十六話)
倒れた蝋燭はすでに消えていた。
水色の髪は赤が混じり、顔など曖昧になる。
変わらないものと言えば、ひんやりとする冷気だけだ。
ただ違うのはもう動かない事。
違和感を覚え、見回りに出た後、すぐに暴動が起きた。
急いで探すが誰にも合わず、ついに見つけたかと思うったらすでに……
「シャーフくん、どうして……」
アシュメは膝から崩れ落ちる。
看守長に就任するずっと前から一緒だったのに、まさか、彼が先に殉職するとは、夢にすら思っていなかった。
彼はいつも、険しい顔で自分を見ていた。
昔は尊敬と憧れで眩しいぐらい、目を輝かせていたのに。
今は新月様に何も写してくれない。
「寂しいじゃない……」
抑え切れない思いにうな垂れる。
カツカツ、ゾロゾロと周囲から音が漏れでる。
ずっと、この時を待っていたかの様に、息を潜めていた。
「へっ、寂しいならテメェもすぐに送ってやるよ」
囚人たちは看守から奪った武器を手に黄ばんだ笑みを浮かべる。
「……」
ブルブルと看守長は震え始めた。
まさか、看守長ともあろうお方が、囚人に怖気付くとは。
可笑しくて彼らは笑い出してしまった。
だが、それも一瞬のこと。
「フフ……クフフ……AHHHHHHHHH!」
誰よりも声高く、笑ったのは他でもない。アシュメ・ダイだった。
「シャーフ、シャーフ、あなたがいなくなったら……好き放題やり放題じゃない♡」
一番近くにいた囚人を捉え、口を奪う。
同時に命も奪った。
「んーマっ! あぁ♡ゲロ不味くて、たまんな〜い。心臓がバッゴンバッゴン。へそ下がテゥクン、テゥクン。アシュメちゃん狂っちゃう♡」
むさ苦しい、キツく締め付けたベルトを外した。
目は黒く、黄緑色の光を放つ。
「さぁ、誰からでも……全~員で私に来なさい! 相手してあげる♡」
ペロリと舌なめずりした。
瞬間、駆け巡るように背筋に悍ましい悪寒を囚人たちは感じる。
目覚めさせてはいけないものを目覚めさせてしまったのだ。
囚人たちの恐怖と覚悟の雄叫びが上がる。
彼らは一斉に色欲の悪魔へと変貌した敵を殺しに向かうのだった。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
これが百個目の話に来るか……最高だな!
「八重する企みと囚人たち Lv.4」の中で一番愉快なキャラで好きですね。
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