ヴァーミリオン・サン
「……!」
半ばからへし折れ、視界の上へゆっくり落下していく巨大な質量。
それはまるで空中に浮かぶ大樹のようだった。
現実感の喪失からか異様にゆっくり落ちて来る大樹。
どこかルネ・マグリットの絵を思わせる、幻想的な光景。
現実感がまるでない。
やった……?
やったの……か?
「ハッハーッ!! なんちゅう幼女や!! やりよったわ!!」
「すごいですすごいですすごいです!!」
「……マジ?」
「ウソでしょ!? おられちゃったの!?」
「そんな……そんなバカな……いまは、どう見ても闘度は7程度ですのに……まさか、瞬間的に「跳ね上げる」ことができる……?」
みんなの声が、俺を現実に引き戻す。
もはや力を出し尽くして、起き上がる力もないが、声はしっかり届いていた。
「そのような力、あってはならないことですわ……」
「あんた、何を考えて――」
「あの幼女だけは!!」
vvvが開いた口には、新緑の丸薬が見えていた。
「ばか! あんたころす気!?」
「絶対に殺さなくてはなりません!!」
丸薬を噛み砕いたvvvが、その甘美さに体を震わせる。
「ああ、天使の如く純粋で、愛の如く甘い……これが禁断の味……」
そしてその全身から、エネルギーが噴き出した。
「オーッホッホッホッホッホッホッ!! 力が、満ち溢れましてよ!!」
余剰エネルギーが閃光となってまき散らされる。
のみならず、周囲に陽炎が生まれるほどの熱量となって辺りを発火させ始めた。
「全てを焼き焦がす力――名付けてヴァーミリオン・サンですわ!!」
「やめてよヴァヴァヴァーーー!!」
「せめて肥料になりなさい!!」
太陽の如き光を纏い、vvvが突進してくる。
それは灼熱の完熟マンゴー。
「誰か止めて下さい!!」
「アカン! 間に合わ――」
俺に避けるすべはない。
さかさまの体を起こすどころか、もう指一本すら動かないからだ。
そんな俺に、上から声が降って来た。




